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東京都

  • 子供の社会参画の機会創出
  • 誰一人取り残されないようサポート

掲載日:2023年1月18日

特定非営利活動法人リトルワンズ

産官学連携によるシングルママ・パパへのサポートを通して、社会全体で子供たちの未来を守る

特定非営利活動法人リトルワンズは、「企業」や「行政」など様々なステークホルダーを繋ぐコーディネーターとしての役割を担い、ひとり親世帯を中心に住まい・生活支援の取組を行っています。子供たちの未来を守る“小さな一歩”を積み重ねることの大切さについて、代表の小山訓久(こやまくにひさ)さんにお話を伺いました。

代表 小山 訓久さん

ひとり親世帯への住まい・生活支援の課題を解決するために立ち上がる

―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。

代表 小山訓久さん(以下:小山):母子・父子世帯や子育て世帯の住まいと生活の支援を行っています。具体的には、空き家や民間住宅を活用した住まい支援と、ママ同士の交流会の開催、親子向けのイベントや就労、教育に関する相談会の実施等、生活支援を行っております。
住まい支援に関しては、東京都等の自治体と連携して行うケース、民間と連携して行うケースの2つを実施しています。生活支援関しては、東京都内で取り組んだ母子・父子・子育て世帯の生活の支援のノウハウを活かして、近年は沖縄県での母子家庭の就労支援にも取り組んでいます。

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。

小山:住まいの支援についてのきっかけは、空き家対策に関する国の事業に携わっていたことです。制度や整備等のハード面については十分に課題が検討されていたものの、母子家庭や子育て世帯の住まい支援の視点等のソフト面の課題検討が不足していることに気づき、そうした課題の解決・改善を提案し、実施して今に至ります。
当時は高齢者や障がい者の方を対象とした住まい支援は進んでいましたが、母子家庭や子育て世帯等の視点を取り入れた住まい支援はまだまだ進んでいませんでした。「空き家」という建物だけでなく、産官学、地域のリソースを組み合わせて支援の体制を作りました。住まいは屋根と壁ではありません。子供の成長と安全を守り、“子供たちの未来をつくる”ことに繋がります。国の事業をきっかけに、現在では東京都の居住支援事業として継続しています。

国連ハビタット本部にて日本の住まい支援をスピーチした時の様子
生活支援の一環でバレンタインイベントを開催した時の様子

企業の強み「スピード&効率」、行政の強み「長期的&広範性」の掛け合わせ

―国の事業を支援する中で、現在実施している取組が形作られたのですね!そうして生まれた住まい支援・生活支援の取組には、どのような特徴やアピールポイントがありますか。

小山:私たちの取組の強みは、企業や行政と連携することで、企業の強みである「意思決定から実行までのスピード感」と、行政の強みである「政策・手当面からの長期的かつ丁寧な支援」の両方を掛け合わせることができる点です。我々が企業や行政といった組織の間に立つことで、適切な組織との連携提案など、事業を円滑に実施するために必要な体制を迅速に整えることが可能です。
また、取組の企画・検討時に、実際に育児中の人の声を取り入れている点も特徴です。オンライン/オフラインでイベントを開催し、参加者との対話を通じて丁寧にニーズをくみ取ることで、一方的な支援ではなく、本当にニーズに合致した支援の提供ができるように取り組んでいます。例えば、杉並区では、「おやこカフェ」の事業を通じて子育て中のお母さんが集まる場、キャリアを考える場を提供しており、そこで得たニーズを基に新たな事業の企画などに役立てています。

―取組を実施していくか検討する中で、大切にしていたこと、重視したことは何かありますでしょうか。

小山:3点重視していることがあります。1つは、支援を実行する際のスピード感です。子供は日々成長していくため、子供の成長やその時の家庭状況に合わせたスピード感のあるサポートが必要になります。
2つ目はフレキシビリティです。時代によって支援のニーズも変わっていくため、それに合わせて、私たち自身も柔軟に支援の枠組みや内容を変化させていくことが大切と考えています。
3つ目はコラボレーションです。行政や企業、子育て中のお母さんなど、様々なサポーターと連携して事業をつくりあげることを重視しています。それぞれの強みを活かし、足りないところを補い合うことで、シナジー効果を生み出しています。

周りのサポートに支えられながら、現場のニーズに合致した事業を育ててきた

―様々なサポーターとの対話とコラボレーションで現在の事業が形作られたのですね。取組を始めるまで、もしくは始めてから、どんなハードルや苦労にぶつかることがありましたか。それらにぶつかった際、どのようにして乗り越えたのでしょうか。

小山:まず、委託事業においては、現場ならではの視点や意見を事業に反映させることが大変でした。具体例を挙げると、子育て支援住宅の基準に合致した住宅をつくる委託事業で、当初の基準だけでは赤ちゃんに対応した住宅としては不十分な点がありましたが、行政の担当者と共に「赤ちゃんの場合、壁は防音で床はカーペット素材が望ましい」といった必要項目の洗い出しを行うなど、赤ちゃんを育てる上で最適な住宅の基準作りの支援を行いました。
また、法人を立ち上げた頃は積極的に協働のお声がけをしていたものの、0からパートナー企業様との接点をつくることが難しかったです。事業の実績が増え、社会的な信用がある程度確立するまで3年ほどかかりましたが、そこに至るまでは、子育てや福祉業界、ビジネス業界の先輩方にノウハウを教えていただきながら、少しずつカタチにしていきました。先輩から教わり、実践し、仲間や母子家庭と子供たちのおかげで、今の土台をつくることができたと感じます。

“小さな一歩”の積み重ねが世界に広まり国際的な賞を受賞

―実際に取組に参加した親子から、どのような感想や意見が寄せられておりますか。

小山:「おやこカフェ」やSNSを介したオンラインでの支援の場をつくったことから、参加した保護者から「家の外にも味方がいることを実感し、孤独感が解消された」といったお言葉をいただいています。子育て世帯からは、「子育てをしている世帯間で互いに相談し、学び合うピアカウンセリングのような場ができたことに助けられた」というお言葉もいただきました。また、東京都のひとり親家庭を応援する情報サイト「シングルママ・シングルパパ暮らし応援ナビTokyo」で民間団体の取組として紹介していただいたものがありますので、よろしければそちらもご覧いただけたらと思います。(シングルママ・パパのサポート団体 NPO法人リトルワンズ:代表小山さん|コラム|シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビTokyo

おやこカフェの参加者が談話している様子

―取組を実施する前後で、世の中の反応に変化を感じたことはありますか。

小山:住まい支援を実施する以前は、ひとり親世帯に配慮した家をつくるという発想はとても少なかったです。でも、今は私たちと行政の取組を通してその気運が高まってきたように思います。国の事業で作成した家づくりのマニュアルを通じて、「ひとり親世帯の空き家の見つけ方」や「ひとり親世帯の支援方法」などをまとめたノウハウを全国に提供できました。取組や事業のシェアやマニュアル化は、日本のNPOがもっと力を入れて取り組むべき課題だと感じており、次の世代のNPOに技術と想いを伝えるのもNPOの役割だと考えています。
また、地域の居場所である「おやこカフェ」の運営ノウハウに関することも、本の作成によって、全国に伝わりました。現在は中国、フィリピン、タイやシンガポールなど東南アジア圏から、子育て世帯向けの地域の居場所作りを教えてほしいと依頼が来ています。飲食だけのカフェとは違い、「子育て相談・キャリア相談ができるカフェ」は地域に必要な居場所であると確信しています。
加えて、これまで実施してきた母子・父子世帯や子育て世帯の住まいと生活の支援が評価され、国連ハビタットに協力する国際的な賞「ワールドハビタットアワード」を受賞しました。東京都の取組を見るために国連から視察が来たり、海外に日本の住まい支援・生活支援を伝えられたことは、とてもうれしいことです。

ワールドハビタットアワード最優秀賞トロフィーを授与される様子

持続可能な支援体制をつくるため、未来の担い手を育てたい

―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。

小山:今後は、後進育成に力を注ぎます。支援は技術だけでは機械的になってしまい、一方で想いばかりが強くても、成果を生み出しません。また、PRにのみ注力して評判を高めたり、収益を優先してしまうと、肝心の支援から離れてしまいます。企業や行政に寄付金・補助金のみを求めるのではなく、ともに事業を行うパートナーとして、連携していくべきです。その上で大切にすべき視座や事業の進め方のノウハウを後進に伝えることは、私たちリトルワンズの最後の仕事だと思います。未来の担い手がより多く、よりたくましくなるようサポートし、社会としての持続可能な支援体制の構築につなげていきたいです。

一人で悩まずに、同じ悩みを抱える仲間と繋がってほしい

―最後に、世の中のご家族や、他の企業・団体のみなさまへのメッセージをお願いいたします。

小山:今、子育てに悩んでいらっしゃる方へ、「自分の住んでいる地域や近所にも、味方になってくれる方は必ずいます」とお伝えしたいです。一人で悩まず、支援の場を探して、同じ悩みを抱える仲間と積極的に繋がっていただけたらと思います。そのための支援を、身近な行政、支援団体、東京都、そして私たちもサポートします。ぜひお声がけください。
企業・団体のみなさまに対しては、「企業、行政、NPOが単独で社会課題を解決する時代は終わりました。複雑な社会問題を抱えるこれからの時代は、多様なプレイヤーが連携し、一緒に課題に向き合っていくことが課題解決に向けた唯一の手段と信じます。手を取り合っていきましょうLet Us Cling Together!」

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

行政や企業が単独では解決が難しい社会課題に対し、それぞれの主体の強みを掛け合わせた連携体制を整えることで課題解決を目指す特定非営利活動法人リトルワンズの取組は、社会的使命に基づき市民が主体となって社会貢献をするNPO法人としての特性が十二分に発揮されたロールモデルの1つです。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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