フォローひとつの業務を複数の社員が担える「マルチタスク」制度育業に専念する社員の業務をカバー業務A業務C担当業務D担当フォロー業務B社員経営層まで社員の声が垣根なく届く社風男性社員が自ら育業を希望するという行動を後押し経営層「人を大切にする」働き方の推進は、ダイバーシティ経営企業100選(経済産業省)や、ワーク・ライフ・バランス アイディア賞(新宿区)などの評価につながっている27100に近い環境をつくってあげるべきですし、ライフを60にしたいならそれに合わせた働き方を相談して決めていければいいのです。実際にワークをいったんゼロにして、10年間育業に専念した後、正社員として戻ってくれた女性社員も過去にいました。それぞれの価値観やライフステージに応じたバランスがあり、それに企業は最大限の配慮を持って対応すべきということです。 見方を変えれば、育業は企業のあり方をアップデートする千載一遇のチャンスです。育業を推進していくことは、リソースに乏しい中小企業にとってはとくに難しいことです。短期的には傷を負うことにもなることでしょう。しかし当社の事例のように、これまで会社が醸成してきた理念や制度を活かしつつ、反省と改善を繰り返していけば、社員それぞれの価値観に合わせた理想の働き方をより一層実現することが可能です。それが、会社と社員の幸せとなり、長い成長と繁栄につながっていくものだと私は信じています。中小企業ならではの柔軟さとスピーディな意思決定力で、今後も育業をはじめ、時代に応じた人事制度の見直しに取り組んでいく所存です。課題解決のポイント柔軟な働き方を追求した組織風土が、育業を後押しする覚悟を持った方針で、サステナブルな企業へ 当社の理念として、社員の家族も私たち会社の一員であるという意識が定着しています。社員の子どもが会社に遊びに来てくれることもよくあります。6ヵ月の育業中も、育業当事者から子どもたちの写真や動画を共有してもらい、みんなでこの山場を乗り越えていこうという一体感が生まれました。 とはいえやはり、経営上のリスクは無視できなかったのも事実です。これまで2人の男性社員が6ヵ月の育業を経験しましたが、反省点も多いわけです。本来の業務のほうが忙しくなってしまい、割り当てられた業務までこなすことができなくなって事業が失速してしまう、というケースもあり、業績への悪影響は免れませんでした。 育業当事者にもリスクはありました。育業に専念している間も会社は変化を続けていきます。場合によっては育業から戻ってきた社員が迷子のような状態になり、効率的な業務を行うことに支障をきたす恐れがあります。 この点は反省を踏まえての改善が必要です。たとえば6ヵ月育業のうち最後の1ヵ月間は手当を出して、会社の現状を把握してもらい、最新の情報を集めたり参考書を読んでもらう、といった復職のための準備期間を設けるといった対策が必要かと考えています。「人を大切にする」を念頭に置いた経営だからこその、6ヵ月育業の決断でした。数字を優先する企業だったら、決して認められることはなかったはずです。しかし、会社の数字を犠牲にしても、個人のライフ・ワーク・バランスを尊重するべきと覚悟を決めることが、これからの経営には大事となるのではないかと感じています。 それぞれの価値観に応じた采配を振るうべきであって、それは何もワーク50でライフ50のちょうど中間でなくてもいいわけです。仕事に専念したい社員がいればワーク
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