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反抗期の子どもに、どう接したらいいかわかりません

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    こどもの反抗期に頭を悩ませる親は少なくありません。心配するあまり、ついつい干渉しすぎてしまい、余計にこどもとの関係をこじらせることも。「尾木ママ」の愛称で親しまれる教育評論家の尾木直樹さんに、反抗期のこどもへの接し方についてお話をお伺いしました。

    教育評論家 尾木直樹 さんの考え方

    尾木直樹さん

    話し合うのではなく、こどもの声を聴く

    ―親を「最悪だ」と遠ざけ、話し合うことができない反抗期のこどもには、どう接していくべきでしょうか。

    これから自立をしていこうとする成長過程にあるこどもに対して、“話し合い”を求めること自体が、思春期のこどもの気持ちに寄り添えていないんですね。「親から話し合おうとか言われたんだけど、まじ最悪!」なんて、こどもたちに言われているかもしれませんよ。

    反抗期のこどもとの関わり方で気を付けることは、ふたつあるんです。

    まずは、こどもの声を“聴く”こと。そして、こどもを一個の人間として人格を“認める”こと。大人だからといって上から目線で接するのではなく、こどもをひとりの人間として認めて対等に関わっていくことが大事なんですよ。

    ―具体的にはどういった声掛けや姿勢が、大切なのでしょうか。

    キーワードは、「あなたはどう思う?」です。

    この時期は進路や将来に関することなど、決めなければならないことがたくさん出てきますが、何をするにおいても、親が勝手に決めたりせずに「あなたはどう思うの?」とこどもの考えや意見を聴いてみてください。

    自己決定を促すような言葉がけと、この“聴く”姿勢を続けていけば、こどもの心に元気がみなぎりエンパワーメントされます。

    もちろん、いけないことは「いけない」とはっきり示すことも大事ですが、その場合も一方的な押し付けは禁物です。

    ルールにこどもは納得しているか

    家庭で決めたルールをこどもが破り、親子で口論になることもありますよね。

    スマホの使い方や門限などのルールを破ってしまうというのはよくあることです。でも、そのことに対して親子で口論になるのは、やはり何らかの行き違いがあるからですよね。こどもと保護者の間で、しっかりとルールについての合意ができていなかったんだろうと思います。

    決まりごとを作る際には、合意形成が必要です。近年は校則なども、こどもの意見を取り入れた主体的な内容へと変わってきています。

    社会全体がそういう方向に動いているのに、親が勝手にルールを決めて冷蔵庫にペタッと紙を貼って、「これがうちの10の決まりよ」などというやり方ではこどもは反発するだけですよ。

    しっかりとルールについてお互いが納得して合意すること。そして「ルールはいつでも変えられるものである」ということ自体もルールの中に組み込んでおくといいですね。

    尾木直樹さん

    こどもの意見を尊重した仕組み作りを

    ―こどもとの合意が必要なのですね。

    こどもに関わることはすべて、まずこどもに相談し、意見を聴いてみましょう。そして、物事の決定にはこどもの意見が十分に考慮され、尊重されなければなりません。

    これは今年(2023年)4月に施行されたばかりの「こども基本法」 にも明確に書かれています。それに倣って 、各自治体でも「こども条例」が次々と定められているんです。全国のこのような動きに先駆けて、東京都では2021年に「東京都こども基本条例」が制定されています。

    今そうやって、こどもの意見を尊重しようと社会全体が舵を切っているところ。保護者のみなさんも一度、インターネットで「こども基本法」や「こども条例」を検索して、読んでみていただけるといいなと思います。

    そして、ぜひご家庭でもこどもの意見を尊重しながら、こどもも納得できる形で一緒に「わが家のルール」を決めてみてください。

    尾木直樹さん

    誰にでも訪れる、心と身体の成熟期間

    ―反抗期に悩む保護者がいる一方で、「うちの子には反抗期がないので心配だ」という保護者もいます。

    家の壁を殴って穴をあけたり、汚い言葉で親を罵ったりというような暴力的な反抗期は、近年減ってきていると感じます。それと同時に「反抗期がないのは自立できていない証拠では」という保護者の不安をよく耳にするようになりました。

    反抗期がないという場合、主に2つの理由が考えられます。ひとつは親があまりにも過干渉だったり高圧的だったりして、反抗させないタイプ。もうひとつは、親がこどもの意見や自己決定をものすごく大事にしていて、ぶつかり合う必要がないというタイプ。

    前者はどこかで爆発する危険がありますから、こどもに指示命令ばかりしていないか、こどもの話や意見をちゃんと聴いているか、今一度こどもとの関係性を見つめ直してみましょう。

    小学校高学年頃から「第二次性徴」が始まり、身体的な変化があらわれます。男の子だったら声変わりして髭が生えたり、女の子なら生理がきて胸が膨らんだり。こういった身体的な変化が起こってくると、こどもは心身ともに不安定になります。

    自分はどこから生まれてきて、これからどうなるのか。なぜ自分はこの世に存在しているのだろうか。身体の変化とともに、自意識が芽生え、少しずつ精神的な自立へと進みだし、心も成熟していきます。これが、思春期というものですね。

    思春期は、程度や期間の差はあれど、みんながいつか迎えるものです。

    目立った反抗期がなくても、心と身体の変化と共に思春期がやってきて、いつかは自立し親離れをしていくもの。こどもの成長発達を段階的に、そして大らかに捉えると迷いや不安は少なくなると思いますよ。

    こどもが自立に向けて親離れをしていく思春期には、親の方も少しずつ子離れが出来るようにしていきましょう。

    尾木直樹さん

    「いつでもまずは“あなたはどう思う?” 覚えておきたい言葉だにゃ〜」

    ブランキャット
    尾木直樹

    答えてくれた人

    教育評論家
    尾木直樹さん

    教育評論家・法政大学名誉教授。中学教師・高校教師・大学教員として計44年間、教壇に立つ。現在は数々の情報・教養・バラエティ番組に出演し、「尾木ママ」の愛称で親しまれている。「子育てと教育は愛とロマン」が信条

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