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こどもとの関わり

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こどもの要求にどこまで応えればいいですか?

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    こどものわがままや際限のない要求に頭を悩ませる保護者は多いもの。つい頭ごなしに怒ったり、感情的になったりすることもあります。親子が共に成長できる関係を築く方法を、「尾木ママ」の愛称で子育て世代から支持されている教育評論家の尾木直樹さんに聞きました。

    教育評論家 尾木直樹 さんの考え方

    尾木直樹

    「聞く」ではなく「聴く」ことを心掛けて

    ―わがままですぐに怒るこどもに困っている保護者の声を耳にします。

    わがままにも色々な種類があります。

    発達障害やパニック障害に由来するタイプもあるので、学校の先生や保育士さんから勧められた時は、早めに専門家へ相談に行きましょう。

    朝の着替えで「この服は嫌だ」などと言う場合は、感覚過敏の可能性も考えられます。服がピタッと肌にくっつくのを嫌がったり、ふわっとしたものが好きだったり。

    単純にわがままばかりではないから、困ったら専門家に相談してみましょう。

    こういった特別な傾向がなくて、一般的にこどもがわがままをやたらと言う場合、その理由の多くは、「親に受け止めて欲しいから」なんです。

    例えば、親が話を聞いているのに「ママ聞いてよ!」と言ってくるのは、親が十分に心で受け止めていないから。こどもから「先生に褒められたよ」と言われた時に、何かをやりながら「あ、そう。よかったね」などと流していませんか?

    こどもはそれが嫌なのです。

    「ちゃんときく」なら、単に耳で「聞く」のではなく、共感し理解しようと耳を傾ける「聴く」の方で。心で受け止めることがすごく大切です。

    尾木直樹

    ―それでも、わがままが続く時には、どのように対処すればいいでしょうか?

    「どうしたの?」と理由を聴いてあげてほしいと思います。そうすると、こどもは「だって、ママはちっとも聴いてくれないんだもん」とか、「いつもちょっとずれたことで褒めるんだもん」などと、理由を言ってくれます。その理由を受け止めて「それは嫌だったね」と共感的に聴いてあげるのがポイントです。

    小学校の低学年だったら、親もきちんとしゃがんで、こどもと同じ目の高さになって聴いてあげることもすごく大事です。

    そうしていると、「聴いてくれて嬉しい」と思う気持ちがこどもの心に湧いてきます。そこで「でも、いつまでもわがままを言っていたら恥ずかしいよね」などと助言してあげると、こどもは心に元気が出てきて、自分で改善するようになっていきます。

    助言して、できたら褒めるというサイクルができてくると、こどもはぐんぐん成長しますし、親子関係も良くなると思いますね。

    転ばぬ先の杖より、こどもの「自己決定」を促す

    尾木直樹

    ―うまくいかないことがあると、こどもが親のせいにしてしまい、困惑してしまいます。

    親が決めたことに対しては、親のせいにしても当然だと思います。 

    例えば、我が子が「今日は、この新しい靴を履いて保育園に行きたい」と言ってきたケースで考えてみましょう。

    親が「今日は午後から雨らしいから、泥だらけにならないように長靴を履いてきなさい」と言ったので、こどもがその通りにした。でも天気はよくて、保育園で自由に遊べず残念な思いをした、なんてこともあるでしょう。

    この例のようなことが起こりますので、やはり、一番大切なことはこどもの自己決定です。自分で決めていく。そうすると、親のせいにすることなく、自ずと自己責任感が育ってくるのです。

    例えば、こどもが自分の主張通り、新しい靴を履いて、うまい具合に晴れて自分の思い通りになったら、「私の決めた通りだったでしょ。 今日、みんなから可愛いねって褒められたよ」と、納得でき、自己肯定感が高まります。

    逆に雨が降って、せっかくの新しい靴が泥だらけになったとしても、「だって、自分で決めたんだからしょうがない」と結果を受け入れる気持ちになりやすく、自己責任の感情が育ちます。

    ―ある程度、自分で決められるような年齢のこどもに、親ができることはありますか?

    こどもに情報を与えてあげることは良いことです。特に中学生ぐらいになれば、進路を考える必要がある時期に入ってきますので、親からこどもへ、進路に関する情報をいろいろと提供してあげてほしいと思います。

    でも、最後に決めていくのはこどもです。進学先も含めて、こどもによる自己決定を大事にしてあげてくださいね。

    過剰な要求にはこどもとの話し合いも必要

    尾木直樹

    ―こどもが求めるものが高機能なゲーム機器など、親の想像を超える場合も。

    要求されたことに何でも応えていくと、際限がなくなる恐れがあります。どんどんと無制限に与えるのではなく、そこは親がきちんと制限をつけていく必要があると思います。

    こどもに目標を持たせ、「これが達成できたらにしようか」という提案の仕方もいいですね。

    特に注意してほしいのは、ゲームに依存していたり、SNSを無制限に使ったりしていないか、ということ。スマートフォンが急速に広がって、犯罪に巻き込まれたり、ゲームやSNSに関係するいじめが起きたりするようになり、世界中で大問題になっています。そこは十分に気を付けなければなりません。

    そして、こどもの要求に対して、機械的に「ダメ!」と言うだけではうまくいきません。親子で話し合って一緒に考え、決めていけるような、子育て。総合的な力が必要です。

    今はまだ早いと思うなら「高校生になってからにしない?」というように、色々な条件を付けることで、こどももそれが励みになるような、そういうコミュニケーションができると良いのではないでしょうか。

    「こどものわがままと軽く流さずに、しっかりと向き合ってあげたいにゃ〜」

    ブランキャット
    尾木直樹

    答えてくれた人

    教育評論家
    尾木直樹さん

    教育評論家・法政大学名誉教授。中学教師・高校教師・大学教員として計44年間、教壇に立つ。現在は数々の情報・教養・バラエティ番組に出演し、「尾木ママ」の愛称で親しまれている。「子育てと教育は愛とロマン」が信条

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