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キャリアと子育ての両立で悩んでいます

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    元プロテニスプレイヤーの杉山愛さん(47)は、34歳で現役を引退後、テニス女子日本代表監督、テレビのコメンテーターなどで活躍。40歳と46歳で出産しつつ、「キャリアもこどもも」の二兎を追いかけています。どうすれば無理なく歩みを続けて行けるのか、社会はどう応援していけばよいのか。お話を伺いました。

    テニス女子日本代表監督、元プロテニス選手 杉山愛 さんの考え方

    杉山愛さん

    自分の人生を俯瞰して見つめ直す「今やりたいこと」

    ―杉山さんは2009年の引退直後は、その先の人生設計をどのように考えていましたか?

    引退時は半年ぐらいゆっくりする中で、新たに自分の好きなことに出会えれば良いと思っていました。直後のインタビューで、「次なる夢は何ですか?」と聞かれることが苦痛でした。

    そこでまず行きたいところ、食べたいものから、より大きな夢も含め100本くらいの「ウィッシュリスト」を書き出してみました。その過程で、今後10年間は仕事よりも念願だった結婚や出産といったプライベートの夢の実現を優先し、その中で第二の天職を見つけて行こうと決めました。

    ―女性が「キャリアもこどもも」と考えた時、大切にすべきことがあれば教えて下さい。

    女性の場合、結婚や出産といったライフステージで生活が激変することが多いです。その点も考慮して、自分がやりたいことを明確にする。その上で、キャリアと人生を俯瞰して見ることで、今何をすべきかのプライオリティを判断していくのはどうでしょうか。

    杉山流 こどもの夢と悩みへの向き合い方

    ―息子さんは現在7歳と聞いていますが、将来の夢などは口にしていますか?

    興味が非常に多様だったのですが、3ヶ月ほど前から突然テニスにスイッチが入り始めました。以前は週2日だったのが、突然「週6日やる」と言い出し、驚きました。私からは「週6日は大変だから、週4、5日でどう?」との提案をして、今も継続中です。

    本人は「プロテニス選手になりたい」とも口にしているようです。私個人は率直に嬉しいのですが、もしかしたら母親と過ごす時間がもっと欲しいのかもしれない。なので、真に受けず、変化の意味を慎重に観察中です。

    ―親の中には、学校の部活動がうまくいってなく、浮かない表情のこどもと接する方もいます。杉山さんだったら、どうしますか?

    自分がアスリートだったから言えることは、そうした時は問題の根っこが競技的なものだけではなく、人間関係など複雑な可能性もあります。親まで心配そうな表情を見せてしまうよりは、あえて明るく振舞った方が本人はほっとするのではないでしょうか?

    こどもといえども、自分で悩みの答えを見つける力はある程度あるはずです。下手にアドバイスするよりも、向こうから話してくることがあれば、その話を聞くだけでこどもは心が軽やかになるだろうと思いますね。

    杉山愛さん

    一人で抱え込まずに時には周囲に手助けを

    ―これまでキャリアと家庭の両立で悩まれた際に大切だと感じたことはありますか?

    最近では育児に積極的に取り組む「イクメン」も当然の風潮になりつつあります。他方、実際に妊娠・出産するのは女性で、キャリアの一時停止を余儀なくされます。再度、活躍できる女性を増やすためには、男性側によるサポートの重要性は以前よりも増しているのではないでしょうか。

    実際、私は夫の気遣いに救われることがあります。私の追い詰められた状況はよくわかるようで、そうしたときに「少し気晴らししてくれば」と提案して、予約までしてくれます。本当に感謝しています。

    また、自らのパートナー以外で身近に頼れる人を持つことも欠かせません。私の場合、近所に住む義母のサポートなしに、現在のキャリアはあり得なかったと常日頃感じています。今年からテニス女子日本代表の監督に就任する件も、家族会議で「義母が元気な今ならば」と決めました。

    さらに私の場合、頼れる人としてママ友も重要な存在です。急な仕事で息子の習い事に送迎できなくなっても、「ごめん。今日一緒に連れて行ってくれる?」とお願いしたりもします。

    真面目な人はすべて自分で抱え込むかもしれませんが、その時々に応じて公的支援、身内、友人などの協力を得る。その意味で「社会全体でこどもを育てる」という雰囲気があれば、子育て中の女性も気持ちが楽になるだろう、と考えています。

    杉山愛さん

    物の見方を変えるだけでポジティブシンキングに

    ―キャリアと子育ての両立のために、ほかに必要と思うことがあれば教えてください。

    日本代表の監督に就任する(2023年からの女子国別対抗戦、ビリー・ジーン・キング杯の日本代表監督に就任)と、かなり長期間、こどもと離れ離れになります。一時、情緒不安定になりましたが、「家族にとって成長の時期」と見方を変えました。事柄は同じでも自分の見方を変えるだけで、心理的負担は軽減されるものです。

    私の好きな言葉は、「Everything happens for a reason(全ての事柄は理由があって起きている)」です。上手くいかない時ほど端的に理由を突き詰めず、「これは自分へのどのようなメッセージなのだろう?」と見方を変えて考えてみる。すると、意外と答えが見つかることが多いものです。

    「社会全体でこどもを育てる環境が必要なんだにゃぁ。『育業』をもっと広めていきたいね!」

    ブランキャット
    杉山愛

    答えてくれた人

    テニス女子日本代表監督・元プロテニス選手
    杉山愛さん

    テニス女子日本代表監督、テレビのコメンテーターやテニス指導者として活躍しながら、40歳と46歳で出産を経験。 自然体で「キャリアもこどもも」を実践する姿に同世代を中心に高い支持を集めている。

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