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また言いすぎてしまい自己嫌悪…どこまでがしつけか分かりません

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    こどもの叱り方は周囲に相談しづらく、自分のしつけはやり過ぎかも?と悩む保護者も少なくありません。こどもへのしつけ方やどう叱ったらいいのか、親子に関する発達心理学が専門の大日向雅美さんにポイントを聞きました。

    恵泉女学園大学 学長 大日向雅美 さんの考え方

    大日向雅美

    自己嫌悪は振り返る力があるということ

    自分たちのしつけが行き過ぎでは?と悩む保護者がいます。

    しつけの語源は、「しつけ糸」から来ています。しつけ糸は和服を縫う時に大きな縫い目で、布を押さえるために使われていました。ただ押さえるだけでなく、後で抜くことを前提としていて、ざっくりと目安を決めておくものです。

    これを、こどものしつけに当てはめると「基本的なところだけ親が決めて、こどもが自立したら抜いていく」と言うことになります。熱心にしつけるあまり、ミシンのようにびっちりと縫い込んでしまうと、糸が全然抜けなくなってしまいますよね。

    しつけの究極の目的はこどもの自律と自立です。しつけをやり過ぎると、自主的、自律的な意欲を持てなくなります。ひとつ間違えると、一見、素直な良い子に育っているようでも、生きる力を奪ってしまうこともあるので注意が必要です。

    叱った後、自己嫌悪に陥ってしまいます。

    こどもは言うことを聞かないものです。
    「こんなに一生懸命やっているのに、どうして言うことを聞いてくれないの?」と、親自身が追い詰められて、時に手をあげてしまった経験のある方もいらっしゃるかもしれません。

    こどもが言うことを聞かないから、分からせてあげたと言い訳してはいけません。大切なことは、正当化しないことです。

    私は、自己嫌悪は悪いことだけでなく、必要な面もあると思います。自己嫌悪とは、自分を振り返って「なんてことをしたのだろう」と振り返る力があるということですから。

    ですから、自己嫌悪を持つことに自己嫌悪を持たないで。むしろ、私は振り返ることができているんだ、と思ってほしいです。

    大日向雅美

    こどもへの上手なしつけや叱り方のポイントを教えてください。

    子育てで大事なことは、親がこどもに何を与えるかじゃなくて、奪わないことです。
    発達のためとか、将来を考えて与えてあげたいという親心も大切かと思いますが、こどもが伸びやかに育つように、こどもが本来やりたいことを奪わないようにしたいものですね。

    そして、育児に完璧を求めないことも大切です。今、「きちんと、早く、間違いなく」と言われ続けて育ってきた人たちが、親世代になっています。
    ちょっとしたことが許せなくなり、こどもに対してだけではなく、親自身が”自分はダメな親”という烙印を押されるんじゃないかと不安になってくるんですよ。

    こどもの発達はトータルに見てあげてほしい。色々と得意不得意もあって当たり前なのです。楽しそうに過ごしている所を見て、こどもの育つ力を信じてあげてほしいですね。 

    先生は我が子の育児で上手くいかなかった経験はありますか?

    もちろんですよ。私は幼い頃から色々と不得手なことがたくさんありましたから、子育てだって、決して立派になんてできませんでしたよ。

    ただ、それでも大丈夫、こどもの育つ力を信じればいいとずっと思ってきました。私が赤ちゃんを産んだ翌日の話ですが、新生児室に赤ちゃんがずらっと並んで寝ているのを見た時に、ひとりひとりがとても個性的だったんです。 生まれて数時間なのに、それぞれがこんなに個性を持っている、なんてすごいの。私の力なんてかなわないなと思いました。
    それで、自分が専門としていた発達心理の知識もすっと消えて、ある意味、すごく助かりました。

    イライラの見える化で原因を探る

    大日向雅美

    日々、忙しい生活で、こどもに対してイライラしてしまう場面もあります。

    こどもを愛することや子育てを大切だと思うことと、イライラすることは全く別物です。こどもは相手が疲れていてもお構いなしに、夜中でも泣きますし、ひっくり返っても泣きますね。 親の時間はすっかり奪われていくのです。イライラして、当たり前かもしれませんね。

    ですから、その怒りは自然なものなので、まずはイライラを発散してもいいと自分に認めてあげてください。ただ、いつもイライラばかりしていれば楽しくないし、こどもにも望ましいことではありません。

    では、イライラを減らすためには、どうしたらいいでしょうか?

    イライラの見える化をしましょう。1日の流れの中で「どこで、いつ、どういう時に、私はイライラするのか」ということをノートに書き出していきます。
    ざっくりと、朝起きてここで怒った、 その時にこどもは何をして、周りの人は何をしていた。このように書き出してみると、イライラのピークや原因が分かります。すると、事前にイライラの原因を避けられるようになります。

    他にも、自分が怒っている声をスマホで録音したり、鏡を置いて怒った顔を見たりして、イライラしている時の自分を見つめることができます。「こんな顔で怒ったら、こどもは怖いだけで、伝わるものも伝わらないな」と気付くこともあると思います。

    イライラの見える化で原因を探して、その時の自分を見つめて、少しずつ微調整していけばいいのではないでしょうか。

    気持ちにゆとりのある保護者のほうが、こどもへ通訳する

    大日向雅美

    こどもへの注意の仕方にパートナー間で温度差があり、戸惑っている方もいます。

    全てが夫婦で一致していると、かえってこどもは息苦しくなることもあります。ママは怒っても、パパはいいよ、と言ってくれるとか。そういう隙間もあっていいんです。

    ただ、ポイントがあって。夫婦の間で共通の”これだけは許さない。それをこどもがしたら怒ること”を、2~3個でいいので決めておいて、それを守らなかった時はビシッと言いましょう。

    こどもを怒る時も、ゆとりのあるほうが、「ママ、ヒステリックだね」などとパートナーを非難するのではなく、「ママは、怒っているけど、君のことを思ってくれている。きっと分かってくれるよ」などと、こどもに怒っている親の気持ちを良い方向で通訳できるといいですね。

    「イライラの見える化、早速やってみたいにゃ〜」

    ブランキャット
    大日向雅美

    答えてくれた人

    恵泉女学園大学 学長
    大日向雅美さん

    女子大の学長の傍ら、子育て家族支援のNPO活動にも携わるなど、現代の育児を積極的にサポート。育児書や子育て番組を通して、優しい語り口調で母親に寄り添う姿勢が人気を集める。

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