子育て世代のお悩み相談

こどもとの関わり

相談者イメージ

こどもの悩みにどこまでどのように接すればよいですか?

    アイキャッチ

    「不登校」「引きこもり」「反抗期」…成長するにつれ、親はこどもとどのように接すればいいか悩みは尽きません。複雑な気持ちを抱えるこどもにどう接し、その悩みにどのように向き合えばいいのか?家族関係・親子関係の発達心理学を専門とする恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんに、自身の体験も含めてお話を聞きました。

    恵泉女学園大学 学長 大日向雅美 さんの考え方

    大日向雅美

    決して背を向けずにこどもと向き合う

    ―こどもの不登校や引きこもりに悩む親子が増えています

    不登校や引きこもりのこどもを抱える親の苦しみは、壮絶なものだと思います。
    そのうえで綺麗事と言われることは承知の上で、お話したいことがあります。

    不登校はかつて「登校拒否」と呼ばれ、教師も親もこどもが学校にどうやったら戻れるかに注力していましたが、現在の法律(教育機会確保法※)では、こどもが学校を休むことや、学校以外の学びの場の大切さも認めています。

    生きづらさを感じるこどもたちに、大人への階段を一気にまっすぐに登らなくても、踊り場で休んで良いと、国がこどもの発達観や教育観を変更したのです。

    この点を親も周囲の人々も知識として知っていて欲しいです。

    こどもは決して道を外れたのではないと理解した上で向き合うことで、こどもの心理的負担が軽減されます。

    ―こどもの悩みに親ができることがありますか?

    こどもの不登校の理由は、勉強がわからない、いじめ、先生との不仲、あるいは家庭内の問題などが、複雑に絡み合っていることがほとんどです。

    そしてこどもは、「学校に行けない」、「親をがっかりさせている」という二重の悩みを抱えています。

    こどもだけ、親だけでは容易に解決できないことが多いのが現実です。

    その意味ではさまざまな相談機関と接しながら、少しでも相性の良い窓口を見つけ出し、相談に乗ってもらうことが望ましいと言えるでしょう。

    また、フリースクールや同じ悩みを分かち合える親の会なども大きな力になります。

    ―思春期のこどもの対応が分かりません。

    思春期のこどもは、何かにつけ親に反発したり、奇想天外な行動をしていると見えますが、実は自分探しで一番苦しんでいる時期です。

    その時に、分かった振りをする親のことを嘘っぽいと感じたり、こどもの行動を間違いと決めつける親に対して、こどもは心を閉ざすと言われています。

    そうした親は、結果として、こどもに背を向けているのと同じようなものです。

    この時期の親は、心を裸にして向き合う覚悟が必要です。

    こどもの行動が意味不明ならば、「なぜ?」と尋ねればいいし、「ウザい」と言われても心配ならば心配であるとはっきり言えばいいのです。

    この時期は正面から向き合って、時にはつかみ合うようなことになるのも必要な時期です。

    ※義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律

    大日向さんの実体験・反抗期の娘と私

    大日向雅美

    ―こどもの反抗期にどう対処しましたか?

    私も長女の反抗期には右往左往しました。今思えばみっともない失敗もたくさんしました。

    ある朝、娘が家を飛び出してしまい、夫と手分けして探し回りました。この時、娘は隠れて私たちの様子をうかがっていたらしいです。

    あとで本人から「定期もお財布も置いて出ているのに遠くに行くわけないでしょ」と言われました。冷静に考えればそうですよね。
    当時の私は娘が消えてしまうのではないかと思うほど取り乱しました。

    そんな娘が反抗期が終わりかけた頃に留学したのですが、娘から「私はあなたの全てを知っている。それでも愛している」と英語で(照れ隠しと思いますが)書かれたカードが届きました。(娘にとって、私たち親が血相を変えて探す姿が嬉しかったのかもしれません。)

    このメッセージはあの壮絶なやり取りからは考えられない、最高のプレゼントでした。

    悩めるこどもへの親の処方箋 傾聴ファースト

    大日向雅美

    ―こどものトラブルに親はどこまで関わるべきですか?

    こどものたわいもない喧嘩ならば、安易に介入するとかえって事態をこじらせるので控えるべきだと考えます。

    本人がケンカをしたことを報告してきた、あるいは様子がいつもと違うと感じた場合は、まず傾聴に徹して欲しいですね。

    どちらかが一方的に悪いというスタンスでなく、また解決策を提示するのでもなく、気持ちに寄り添うことが基本です。

    しかし、いじめのような一方的に理不尽な目にあっている場合は、相手とその親、先生と毅然と向き合う覚悟と勇気が必要です。

    事態が改善するとは限らないことも念頭に置くことが重要です。

    それでも、こどもはこの時の親の向き合い方を見て、真剣にサポートしてくれていると感じると、強い自信が持てるようになることがあります。

    こどもの声に耳を傾けるために、できるだけ夕食を一緒に摂るなどの心がけは必要です。

    食事の様子でこどもの変化が分かることもありますから。

    ―友だちとの関係にも悩みが尽きません。

    よく童謡で「友達100人できるかな?」と歌ったりしますが、友達は人数じゃないですよね。

    その意味では友達は絶対に必要とか、たくさんいる方が良い等の「友達幻想」は捨てたいものですね。

    また、友達との距離感もこどもそれぞれです。いつも一緒にいるだけが友達とはかぎりません。うちの子は友達に対してどんな距離感を好むのか、にも注意を払ってみると良いでしょう。

    親の立場からは、こどもが好む人との距離感というものに注意を払うことが必要です。

    ―対こどもではない悩みの場合はどうしたらいいですか?

    学校での人間関係の悩みが、対先生だった場合はさらに悩ましいかもしれません。

    その場合、保護者同士で正確に情報を交換し、もし他のこどもも困っているような場合は、皆で力をあわせて学校と話し合う等の対処も必要でしょう。

    それでもうまくいかないことや、自分の子だけ適応できないこともあるかと思いますが、こどもの居場所は、学校だけにあるわけではないということも、改めて心にとどめておきたいと思います。

    「こどもの悩みや気持ちに寄り添う、それが大事だよね。」

    ブランキャット
    大日向雅美

    答えてくれた人

    恵泉女学園大学 学長
    大日向雅美さん

    女子大の学長の傍ら、子育て家族支援のNPO活動にも携わるなど、現代の育児を積極的にサポート。育児書や子育て番組を通して、優しい語り口調で母親に寄り添う姿勢が人気を集める。

    相談窓口

    つらい気持ちをかかえていたら、
    のぞいてみてください。
    相談にのってくれるよ。

    どんなお悩み相談を読む?

    ブランキャット

    こどもとの関わり(11)

    生活・仕事(8)

    夫婦(3)