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東京都

  • 子供の成長応援

掲載日:2023年3月8日

鹿島建設株式会社

建設現場での体験と探究教材を通じて、学ぶ楽しさを伝え、子供たちの生きる力を育む

鹿島建設株式会社では、社会貢献活動の一環として、様々な次世代教育に取り組んでいます。中でも、小・中学生向けの現場見学会「鹿島サマースクール」と、高校生向け探究教材「100年を創造するチカラ」は、鹿島建設の強みを活かした独創的な取組です。この2つの取組について、広報室 社外広報・CSRグループの町田裕さんと伊藤括司さんにお話を伺いました。

広報室 社外広報・CSRグループの次世代教育担当者。左端が町田裕さん、右端が伊藤括司さん

「建設業の魅力を伝えたい」という思いから生まれた次世代教育支援

―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。

広報室 社外広報・CSRグループ 伊藤括司さん(以下:伊藤):子供たちが参加しやすい夏休み期間を利用し、小・中学生を主な対象とした全国一斉の現場見学会「鹿島サマースクール」を、2017年から開催しています。会場となるのは本物の建設現場です。大小含めて500ヵ所以上の現場の中から、ダムやトンネル、鉄道や超高層ビルなど、見応えのある建設現場に子供たちを招き、工事の迫力、職人さんの働く姿、体験イベントを通じて、建設が暮らしと密接につながっていることや、建設という仕事の面白さを体感してもらおうという取組です。

「鹿島サマースクール」でバックホウの操縦体験をする子供の様子

広報室 社外広報・CSRグループ 町田裕さん(以下:町田):高校生を対象とした次世代教育支援として、「100年を創造するチカラ」という探究教材の無償提供も行っています。こちらは、課題解決スキルやコミュニケーションスキルを養い、生きる力を育むことを目的とした取組です。
プログラムの内容は、当社が手がけた建設プロジェクトを題材に、まちづくり・伝統継承・自然との共生・世界遺産の4つのテーマから、生徒のみなさんが自分なりの答えを探究するというものです。具体的には、「まちづくり=女川の復興まちづくり」「伝統継承=東京駅丸の内駅舎保存・復原」「自然との共生=羽田空港D滑走路」「世界遺産=姫路城大天守保存修理」となります。現在は、高校で必修科目となった「総合的な探究の時間」にご活用いただいています。

「100年を創造するチカラ」のプログラム専用サイト

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。

伊藤:鹿島サマースクールを実施した背景には、社会貢献活動の拡充と、将来の担い手づくりという2つの要素があります。当社ではかねてより、「社業の発展を通じて社会に貢献する」という経営理念に基づき、様々な社会貢献活動に取り組んできました。全国各地に現場を持つゼネコンにとって、地域社会とのつながりは大切です。以前から子供向けの活動は行っていましたが、各事業所が独自で実施している状況でしたので、広報室が中心となり、全社一斉で実施でき、ノウハウ共有ができる仕組みづくりを進めています。
また、建設業界全体が直面している「若者離れ」という課題へのアプローチの一つとして、子供たちに興味を持ってもらうきっかけになればとも考えています。現在、職人さんたちの高齢化が進んでおり、このままいくと近い将来、建設物という社会資本の整備をする人材が不足してしまう恐れがあります。課題解決に向けて建設現場の就労環境改善など全社的な取組が進められていますが、広報室としても、次世代の担い手確保に向けた取組を社会貢献活動の上でも実践しようということになり、実現に至りました。

町田:高校生向け教材は、鹿島サマースクールで見つかった課題を解決する過程で生まれたアイデアです。当初サマースクールでは小・中学生に加え、高校生の参加も期待していましたが、いざ蓋を開けてみると高校生の集まりが芳しくありませんでした。確かに、夏休みに高校生に来てもらうのは難しい部分があります。それであれば、「学校の授業の中で行えることはないだろうか」という考え方にシフトしたのが、教材開発のきっかけです。
2019年にブレインストーミングを行い、2022年に探究の授業が全国の高校で必修となる点に着目しました。既存の教材分野ではなく、これから始まる新しい科目であれば、良い教材を作れば普及する可能性が高いのではないかと考え開発に乗り出しました。外部の教育コンサルタントのサポートを受けながら、まずはフィジビリティスタディ(実行可能性の検証)に半年かけました。その後、アクティブラーニングに熱心な高校にも検証授業等で協力いいただいた末に探究教材が完成し、2020年度から教材の無償提供をスタートしました。

「鹿島サマースクール」で測量を体験する子供たち

建設会社の強みを最大限に活かし、より楽しい・深い学びを提供したい

―取組としての特徴やアピールポイントはどのような点ですか。

伊藤:鹿島サマースクールは、「本物の建設現場を見に行こう」というテーマを掲げ、きちんと学びにつながる動線を整えています。建設現場を見学する前に、建設物の役割や建設業が人々の暮らしとどのようにつながっているかについて、現場担当者がコミュニケーションを取りながら、アニメーション動画も交えてわかりやすく伝えています。
そして最大の特徴は、リアリティのある体験イベントです。工事で実際に行う作業や使用する重機を活かし、各現場でオリジナリティのある体験イベントを企画しています。これまでに、測量体験、左官体験、鉄筋の組立体験、ショベルカーの操縦体験、高所作業車の乗車体験、モザイクタイル張り体験など様々な体験イベントを実施してきました。子供たちの熱心に取り組む姿や楽しそうな笑顔を見ると、我々企画者側もやりがいを感じます。

町田:高校生向け探究教材「100年を創造するチカラ」が他の教材と最も異なる点は、映像を豊富に用いている点です。鹿島では、映像制作を手がけるグループ会社により、工事記録を映像アーカイブとしてストックしています。こうした記録財産を活用することで、より深い学びを実現するとともに、個別端末でも見返せるプログラムにしたことで、文部科学省が進める「GIGAスクール構想」にもマッチしました。
もうひとつのアピールポイントとして、ティーチャーズガイドを付帯している点が挙げられます。いい教材を作っても、先生方に「すぐに使える教材」と認識してもらえなければ導入は難しいと考えました。教員のハードワークが問題となる昨今、我々の教材が先生方の働き方の改善にもつながれば大変うれしく思います。

「100年を創造するチカラ」を活用してワークをする高校生の様子

―具体的にどんな取組を実施していくか検討する中で、大切にしていたこと、重視したことは何かありますか。

伊藤:会場となる建設現場の担当者にも、鹿島サマースクールを開催する意義を理解してもらった上で協力してもらうことが重要です。ガイドラインをつくるのは広報室ですが、実際に取組を行うのは現場の人たちです。工事発注者にもご理解をいただき、見学会当日は見学ルートで工事を一時的に止めるといった調整も必要です。安全通路の確保やトイレの増設、熱中症対策として冷却タオルやかき氷の用意など、一般の方を迎えるための準備は多岐にわたります。時間と手間をかけて行う意味は何なのかを丁寧に説明し、意思共有を図ることで、子供たちに本当に良い体験をしてもらえる環境を整えることができると思います。

町田:高校生向け教材については、探究は一人ひとりが答えのない問いに向き合う作業ですから、どのように探究を進めればよいのかわからないと悩まれる生徒さんも少なくありません。開発時にはこの点も考慮し、情報収集、整理・分析、結果をまとめて発表するといった、探究のプロセスを示すことも重視しました。
また、教材を提供するにあたり重視したのは、展開性と普及性です。現場見学会である鹿島サマースクールは、現場の数、参加者の数に限度があります。しかし、既にある授業に採用できる高校生向け教材には、この部分の障壁がありません。そのため、充実した教材をパッケージで提供することで、できれば年間1万人超の生徒さんに使って頂きたい、というのが当初の狙いでした。提供を始めた2020年度は3,000名程度でしたが、2022年度は探究の授業が必修になったことも追い風となり、1万1,200名の生徒さんにご利用いただいています。

「鹿島サマースクール」で左官作業を体験する子供たち

子供たちの笑顔が、モチベーションやクオリティの向上につながる

―実際に取組に参加した子供から、どのような感想や意見が寄せられていますか。

伊藤:参加した子供たちからよくいただく感想は、「とにかく迫力がすごかった!」「建設にこんなにたくさんの人が関わっていることにびっくりした!」といった驚きの声です。「夏休みの自由研究の題材になって良かった」といった感想もあります。
また、建設業というと、「きつい・きたない・危険」の3Kのイメージが先行されてしまうことがありますが、「想像と違い工事現場って整頓されていてキレイ」「女性の方も活躍していてカッコよかった!」などの感想も寄せられています。建設業界として「給与・休暇・希望」の新3Kの普及を目指しているところですので、子供たちに明るいイメージを持っていただけたことは、とてもうれしく思います。

町田:高校生向けの教材では「障害を乗り越えて目的を達成する方法を学べた」「様々な世代の目線から見ることが大事だとわかった」など、我々の思いが届いた感想をいただきます。
弊社の強みは建設現場のリアルな映像を持っていることです。現在の高校生はYouTubeなど映像を使った情報収集が得意ですので、映像を使った学びは高校生に適しているのかなと感じます。「インフラで人の生活を支える仕事がしたい」「設計をやりたい」など、ご自身の将来に向き合うきっかけにもなっているようで、うれしい限りです。

「100年を創造するチカラ」を活用した授業を受ける高校生の様子

―取組を実施する前と後で、本取組に対する社内の反応に変化はありましたか。

伊藤:鹿島サマースクールは前述したように、現場にお願いすることがたくさんあります。そのため、取組を始めた当初は、消極的だった社員や現場の方々も少なからずいました。しかし、実際にイベントを開催し、参加した子供たちの笑顔や建設作業の体験に真剣に取り組む姿を見てからは、「やってよかった」「次はこうしよう」といったような前向きな姿勢に変わってきました。
こうした変化が、特徴のある体験イベントの企画・実施につながり、事故やトラブルのない安全なイベントの実現につながっていると感じています。

町田:高校生向け教材は、社内のリソースのみに頼った運用ではないため、取組前後で社内の反応にそれほど大きな変化はありません。ただ、経済産業省の「第12回キャリア教育アワード」において、「100 年を創造するチカラ」が大賞を受賞したことにより、社内における次世代教育支援の重要性の認知は高まったと感じています。

建設業の“今”を発信し、社会の変化に応じてアップデートする

―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。

伊藤:鹿島サマースクールは全国各地での体験型イベントという点を重視してきましたが、コロナ禍を経験し、今後は「オンラインイベント」や、感染症対策の管理をしやすい会社施設を利用した「拠点型イベント」も検討する必要があると感じています。
また、当社ではICTを活用したロボット技術の開発も行っており、現場への導入を推し進めている最中です。タイミングが合えば、ロボットやAIを活用した自動化建設機械が活躍する工事の見学を企画したり、WEBサイトなどのコンテンツを活用したりしながら、建設現場がどんどん進化していることも伝えていきたいです。建設業の今を発信していくことも、我々の使命だと考えています。

町田:高校生向け教材に関しては、当初の目標である「年間利用者数1万人超」という規模で、教育の機会が失われないように安定して継続していくのが理想だと考えています。大きな改良というよりは、マイナーチェンジによって、社会の変化に応じたアップデートを行っていきたいと思います。

建設業の面白さ、探究することの楽しさを、より多くの子供に届けたい

―最後に、子供たちや保護者、先生に向けたメッセージをお願いいたします。

伊藤:子供たちには、「建設業の面白さ、カッコよさ、深さを感じてほしい」と思っています。建設業の魅力を伝える術として、現場見学や映像活用を選んだのは、私たち自身もそこに建設業の魅力を感じているからです。鹿島サマースクールは親子で参加される方も多いので、ぜひご家族そろって足を運んでみてください。

町田:高校の「総合的な探究の時間」で導入できる教材をお探しの先生がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけいただければと思います。高校生の皆さまの課題解決スキルや、コミュニケーションスキルの向上にお役立ちできたら幸いです。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

建設現場を体感できる「鹿島サマースクール」や探究教材「100年を創造するチカラ」を通して、子供たちに学びの楽しさや探究することの面白さを伝え、子供たちの豊かな未来の実現に貢献する鹿島建設株式会社の取組は、建設会社としての特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

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