掲載日:2023年2月24日
FC東京
スポーツを通じて子供たちの未来の「意志」を育む!プロサッカーチームが展開する豊富な人材を活かした体育プログラム
FC東京では、プロサッカー選手やプロコーチといった豊富な人材を活かして、スポーツ・運動を通じた子供たちの笑顔をつくる「FC東京スマイルキャラバン」という取組を行っています。本取組について、FC東京 元プロサッカー選手で現在クラブコミュニケーターを務める石川直宏さん、普及部コーチの鯨井健太さんにお話を伺いました。
スポーツを通じた多様な遊びや学びを提供するプログラムを展開
―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。
FC東京 鯨井健太さん(以下、鯨井):FC東京では、東京都に所在する学校を中心に、「体つくり運動」を通してもっと楽しく「多様な動き」や「遊び」を経験してもらうため、「夢や目標の大切さ」や「努力や仲間の価値」「失敗・挫折との向き合い方」などを伝えるための「FC東京スマイルキャラバン(以下、スマイルキャラバン)」という取組を展開しています。スマイルキャラバンには、対象と実施内容が異なる4つの取組があります。
一つ目は、小学校低学年を対象として配布している体育教材「あおあかドリル」を活用した、FC東京の普及部スタッフによる「体つくり運動」の授業の提供です。小学校中・高学年で習う体育の動きや技能習得の基礎となる基本的な動きとして、「体のバランスを取る動き」「体を移動する動き」「用具を操作する動き」「力試しの動き」の4つの動きを学ぶプログラムです。
二つ目は、小学校に赴くFC東京のプロコーチによるサッカーの出前授業です。授業に参加する子供たちは、必ずしもサッカーが好きだったり、得意だったりする子ばかりではありません。そのため、本授業では、まずはサッカーを好きになってもらうことを目的としています。参加する子供たち全員に楽しんでもらえるよう、はじめはボールを持って叩いてみたり、バウンドさせてみたりする中でボールに親しみを持ってもらい、徐々にパスやドリブルの体験に進んでいくというプログラムになっています。
三つ目は、FC東京で働くプロサッカー選手、プロのコーチである普及部や広報部、トレーナーや栄養アドバイザー等、社会人から「仕事」の話を聞くことで、子供に「働くこと」について考える機会を提供するキャリア教育の提供です。FC 東京を一つの事例として、プロスポーツを取り巻く環境や、いろんな人が関わってみんなで仕事をしていることを伝え、「働くこと」や仕事の繋がりについて考えるプログラムです。
FC東京 元プロサッカー選手 石川直宏さん(以下、石川):四つ目は、元プロサッカー選手の経験を子供に伝えることを通して、子供の未来の「意志」を育むことを目的とした「あおあか夢授業」の取組です。この授業では、プロサッカー界で闘ってきた経験を基に、子供たちに夢の持ち方やチャンスの掴み方、困難や挫折を経験した際の考え方などを、手を伸ばせば触れられる距離で伝えていきます。そして、子供たちにも自分事として考えてもらい、「自分だったらどうするか?」を発表してもらうというプログラムです。
―スマイルキャラバンで、子供たちの笑顔づくりや夢をつくるきっかけを提供されているのですね!こうした子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。
鯨井:はじめは自治体と連携して、子供の笑顔をつくる場や子供に楽しんでもらう機会を提供できないかという話がFC東京内で挙がったことがきっかけです。その中で、スマイルキャラバンの前身である「キャラバン隊」というものを立ち上げ、府中市や調布市、小平市、江東区等で子供向けの体育授業を展開していました。
その後、自治体や学校のニーズに合わせて先に述べた4つの取組がそれぞれに立ち上がったのですが、昨年に「FC東京スマイルキャラバン」としてパッケージ化し、取組を一つにまとめて提案させていただきました。現在では、子供たちによりよい体験や興味を引き出す授業を提供したいと考える学校や教育委員会の方々に、「4つの取組のうち、どれがやりたいですか?」とメニューとして考えてもらうことで、今までより取組を選んでもらいやすくしています。
石川:Jリーグや各クラブにおいて「地域や社会との連携をより強くしていこう」という流れがあり、その中でFC東京としても「地域や子供たちのつながりを深くしていきたい」という想いを持って取組を始めました。FC東京には、プロサッカー選手も普及部のプロコーチも、営業や広報、運営や社会連携等、幅広い分野のスペシャリストが揃っています。そうした豊富な人材を活かして何かできないか、と検討を深め、現在の取組に至っています。
プロ選手やプロコーチといった豊富な人材との双方向コミュニケーションで子供や地域とつながる
―取組としての強みやアピールポイントはどのような点にありますか。
石川:プロとしてスポーツをしてきた人やプロのコーチたちが相手や仕事に向き合う姿勢、チャンスや困難に対する考え方をすぐ手が届く距離で子供たちに伝えられることが強みだと思います。「あおあか夢授業」には、子供たちだけでなく保護者の皆様にも参加いただくことがあるのですが、顔の見える距離でコミュニケーションする中で、人と人とのお付き合いができることも魅力の一つだと思います。
鯨井:「あおあか夢授業」では、子供たちに寄り添った講話をし、子供が出してくれた意見を尊重することを大切にしています。一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションを行う中で、子供たちが笑顔になり、保護者の皆様や地域とのつながりが生まれていると感じています。子供だけでなく、一緒に授業を考える先生方にも楽しんでもらい、その先生方から次のご縁をもらったりと、新たなつながりが生まれていることも取組の魅力だと思っています。
―取組を始めるまで、もしくは始めてから、どんなハードルや苦労にぶつかりましたか。それらにぶつかった際、どのようにして乗り越えたのでしょうか。
鯨井:自治体との連携を広げていく上で、FC東京の関わりが少ないエリアで新しく取組を展開する際に、まだまだFC東京の取組を知ってもらえていないために話を進めることが難しいことがありました。今後、さらに対外的な周知を強化して、多くの方にFC東京の取組を知ってもらい、より広く取組を展開できるようにしていきたいと考えています。
石川:「あおあか夢授業」については、サッカーをやっている子供には話がスムーズに入っていくものの、サッカーの経験がない子供には伝わらない部分があるという点は難しかったです。そうしたときには、サッカーという切り口だけではなく、「自分は他の選手に比べて体が小さくて大変だった」「自分が得意だったプレーが相手に防がれてしまった」と、子供たちに通じる話題で投げかけることで、子供たちが話を理解してくれて、手を挙げて発言してくれることにもつながりました。一番の課題は、子供たちのそうした話を聞く姿勢に感化されて、もっと話したいと思ってしまって時間が足りなくなることですね!
―実際に取組に参加した子供から、どのような感想や意見が寄せられていますか。
鯨井:サッカーが元から好きだった子供からは、「サッカーがもっと楽しくなった」という感想が届いています。また、サッカーや運動が好きというわけではなかった子供からも、「授業を通じて、サッカーや運動が少し好きになりました」「今まで受けた体育の授業の中で一番楽しかったです」という感想をもらっています。学校の先生からは、「授業をした後から、前よりクラスの雰囲気に活気が出ました」という声もいただきました。授業をした子供と次会ったときに「この前、サッカーの応援をしに味の素スタジアムに行ったんだよ!」という話をしてくれたこともあって、それは本当に嬉しかったですね。
石川:私が嬉しかった子供たちからの感想は、「できないことは悪いことじゃないと分かりました。自分にできることを一つ一つコツコツと続けていこうと思います」という感想ですね。また、授業後の感想文にぎっしりと書いてくれているのを見ると、伝わったんだな、自分事として捉えてくれたのだなと感じ、もっと子供たちとつながっていきたいという気持ちになります。
―そうした感想をもらえると、本当に嬉しい気持ちになりますね!取組を実施する前と後で、社内のスタッフに変化はありましたか。
鯨井:取組に参加しているスタッフたちは、子供たちが体を動かしたりFC東京に触れることで、サッカーやスタジアム、クラブに愛着を持ってくれる過程を見ることができて、やりがいにつながっていると思います。普及部としては、この取組を通じて子供たちに「スポーツが好きになる」「サッカーがうまくなる」だけでなく「人間として成長してもらう」ことを大事にしてくれるよう願っています。それをスタッフにも呼び掛けており、実際にスタッフから子供に熱を持って話すと、子供たちも熱を持って「こうしたい、こうなりたい」と返してくれるという実感が得られており、やりがいにつながっているようです。スマイルキャラバンの取組を通して、「技術的な向上も大事だけど、子供たちに人として向き合うことや、十人十色のアプローチをすることが大事だ」という意識が社内に根付いてきていると感じています。
さらに多くの子供たち、学校の先生方に取組を届け、スポーツを通した子供の笑顔づくりに貢献したい
―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。
鯨井:現在のスマイルキャラバンをさらに多くの都内自治体に展開していきたいです。コロナ禍前は取組を年間150回程実施し、1万人に届けることができましたが、コロナ禍に入って落ち込んでしまいました。現在は状況も少し落ち着いてきたので、より多くの子供たちの笑顔づくりに貢献できるよう、前のめりになって取組を発信し、より多くのエリア、たくさんの子供たちに取組を展開していきたいです。
―現在実施中の取組のほかに、新たに実施を企画している取組等があれば教えていただけますか。
鯨井:スマイルキャラバンは子供たちを対象に展開していますが、これからは学校の先生方への研修にも力を入れていきたいと考えています。現在、すでに学校の先生方だけでなく教育委員会の方々も交えて、体育授業の実施方法やノウハウ、考え方をお伝えする機会を提供しています。この機会を通じてプロコーチのノウハウを伝え、先生方から子供たちに継続的によりよい体育授業が提供できる土壌をつくれたらいいなと考えています。今後は部活動の民間委託などもあり、より専門的な指導ができるFC東京へのニーズは高まると思いますし、先生方とFC東京とのつながりができて、そのつながりが次のつながりを呼んで、より取組が広がるようにしていきたいと考えています。
子供たちに「相手を尊重すること、その中で自分を知ること」の大切さを学んでもらえるよう、取組を続けていく
―最後に、子供たちや、ほかの企業・団体のみなさまへのメッセージをお願いいたします。
石川:スマイルキャラバン、特に「あおあか夢授業」のベースとして大切にしており、子供たちにも大切にしてもらいたいことは、「相手を尊重すること、その中で自分を知ること」です。子供たちには、スポーツを通じて相手をリスペクトする姿勢を学んでほしいですし、スポーツを通して自分自身のオンリーワンの姿を見つけて成長してほしいと思います。将来、「FC東京の取組に参加したことがきっかけとなって、人生がより鮮やかなものになった」と思ってもらえるように、私たちも引き続き頑張っていきます。
鯨井:企業・団体の皆様には、「ぜひFC東京をうまく活用してください」とお伝えしたいです。サッカーやスポーツを通じて子供の笑顔や楽しい時間をつくるという想いに共感していただける企業・団体の皆様とぜひ何かやりたいと考えています。0から1をつくることは大変ですが、一緒に手を取り合えばそこを乗り越えてやっていけると思います。協働できることがあれば、ぜひよろしくお願いします!
―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!
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