掲載日:2025年1月16日
NPO法人アーティストグループmusia
子供から大人まで音楽のありのままを楽しめる機会を提供し、子育ての孤立をなくしたい
多様な音楽の体験と音楽を活用したコミュニケーションの機会を提供している特定非営利活動法人アーティストグループmusia。音楽を通じて、子供の発見や成長を促すだけではなく、孤立した子育てを行う状況にある親子の子育て環境を改善し 、参加者同士の交流に繋げています。この取組や子供たちに与える音楽の影響などについて、代表の大井祥子さんにお話を伺いました。

子供参加型の音楽会を通して親子揃って笑顔になれる
―現在実施している子供たちに向けた取組内容について詳しく教えてください。
特定非営利活動法人アーティストグループmusia代表 大井祥子さん(以下大井):musiaでは定期的に子供参加型の様々な音楽会を開催しています。絵本を読み聞かせながらクラシック音楽を楽しんでもらう「おはなし音楽会」をはじめ、0歳からの参加型 クラシックコンサート、楽器を作って一緒に演奏するワークショップなど、多くの人が音楽に触れられる機会を提供しています。
―子供が直接音楽に触れられる音楽会を開催されているんですね。具体的な音楽会の内容について教えてください。
大井:実際に子供に参加してもらえる音楽会の形は、主に3つあります。1つ目はクラシックと現代音楽を日常的に楽しむ「アートな?音楽会」です。ヨーロッパでは、手を叩いているうちにだんだん音楽になっていくという路上パフォーマンスがあります。それをヒントに、周りの人とコミュニケーションを取りながら音楽を完成させていくイベントです。その場で生まれた新しい音楽をアートとして楽しんでいただいております。
2つ目は、「音脳リトミック」をテーマにコミュニケーションを重視した音楽会です。まだ言葉が発せない赤ちゃんと音楽での触れ合いを通し、赤ちゃんが何を感じているのかをお母さん、お父さんに考えていただきます。子供から大人まで創造力を育てられる機会の提供を行っています。
そして、3つ目は英語の絵本とクラシック音楽を融合した「おはなし音楽会」です。絵本の物語に合わせた音や音楽を奏でます。躍動感を演出しながら読み聞かせをしているので、難しいと思われがちなクラシック音楽でも子供たちも楽しんでくれるんです。

―読み聞かせ用の絵本は大井さんの手作りなんですね。
大井:外国の古い絵本を私が翻訳して作成しています。日本語で訳しつつ、動物の鳴き声や効果音などは英語のままにすることで、いつもとは違う音を知って楽しんでもらえる人気な音楽会の1つです。
―音楽会と聞くとクラシックコンサートを想像して、静かにしなきゃいけないイメージがあります。実際の音楽会における子供たちの反応はいかがですか?
大井:私たちの音楽会では「静かにしなさい」とは一切言わないです。音楽を聴いて感情が動いたら「わぁ!」と素直に声を出してもいいし、うろうろしていても、寝っ転がっていても大丈夫です。ただし、「一生懸命に聴いている人の気持ちを考えましょう」ということは伝えるようにはしています。そうすることで、子供たちは素直に音楽を楽しんでくれるんです。また、耳で聴くだけではなく、音の振動に反応する子供もいて、赤ちゃんがほふく前進でステージに近寄って興味深そうに眺めていたりすることもありますね。私たちは、そんな音楽のありのままを楽しんでいただける機会を提供しています。

音楽を通して、子供の新たな発見と子育てにおける親の心をサポート
―音楽が子供たちに与える効果について、どのように感じていますか?
大井:子供の新しい音、表現、感情、視点などの発見に影響を与えられていると思っています。中でもクラシックは、“難しそう”“お堅い”というようなイメージがある人が多く、聴く機会は大人でも少ないので、子供ならなおさらないでしょう。だからこそ、クラシックを聴いてもらい、身近に感じてもらうことで新たな発見に繋げています。子供の影響についてお話ししましたが、子供以外にも、音楽は保護者の方にとっても良い効果があるんです。
―そうなんですね。実際に保護者にどんな良い効果 があるんですか?
大井:子育てをしていると、家にいる時間が長くなることで次第に赤ちゃんと自分の2人きりが多いことから、孤独感でいっぱいになってしまうことがあります。そんな時、音楽会でコミュニケーションを取りながら、音に触れ、歌を歌い、手を叩けば、一瞬でも孤独感から解放されるでしょう。私たちがやっているのはそういう場づくりでもあるんです。

―活動する中で大切にしていることを教えてください。
大井:音楽というのは多国籍なので外国の方でも楽しんでもらえますし、性別も関係なく、 どんな方でも楽しめるのが特徴と言えます。ですので、 子供から大人まで多くの人に向けて、音楽文化を伝えることを大切に、その空間を共有して音楽に触れる体験をしていただきたいと思っています。

みんなが集まることで幸せなアートを生み出していきたい
―今後の展望やビジョンを教えてください。
大井:1人でも多くの人に、音楽そのものの価値を感じていただけたらいいなと思います。音楽という表現を通し、発見や学びを届けていきたいです。だからこそ、今後は多くの人に音楽に触れていただける機会をもっと増やしていきたいと思っています。例えば、地域の皆さんが音楽を通じて交流したり、地域と演奏家を結びつけたりすることで、暮らしや子育て環境を文化的にも豊かにする。また、街の音そのものを音楽の素材として取り入れた「サウンドアート」のプログラムで、自分の住む街や故郷の魅力を再発見していただけるような取組など、街づくりにも音楽を活用できるよう積極的に活動していきたいです。みんなで面白いものを作って、みんなで幸せになれたらいいですね。
―こどもスマイルムーブメントに期待していることがあれば教えてください。
大井:こどもスマイルムーブメントのWebサイトを通じて、より多くの方に、どのような団体なのか知っていただく機会になっていると思います。音楽会についても載せているので、私たち団体を通じて音楽に触れるきっかけになってくれると嬉しいです。
―最後に、子供たちへのメッセージをお願いします。
大井:音楽は感じ方が人それぞれです。自分が感じたその音楽について素直に好き、嫌いと感情を出してもいいですし、何となく体を動かしてみたり、うとうとしてしまったり。それで良いと思います。そんな音楽だからこそ、何か発見や気づきがあるはずです。また、国籍も年齢も性別も関係ないので、子供だけでなく、お母さんやお父さん、おばあちゃん、おじいちゃんも、みんなで一緒に音楽を楽しみましょう。私たちはそんな誰もが楽しめる音楽会を提供しています。来てくれることが私たち演奏家の支えにもなりますので、ぜひ音楽会にいつでも遊びに来てください!
―ありがとうございました!
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