掲載日:2022年3月1日
日都産業株式会社
「工場見学」も「校庭遊具の設置」も、全ては子供たちの想いに応えるために
日都産業はブランコや滑り台をはじめとした様々な公園遊具を作っているメーカーです。社員一丸となってのぞむ「工場見学」は、子供たちにとってまたとない体験でありながら、社員のモチベーションアップにも繋がる取組です。また、アドバイザーとして子供たちと一緒に実現させた「校庭遊具の設置」では、参加者全てにとってのかけがえのない体験となりました。そんな日都産業の取組に対する想いを羽村工場の工場長 永尾重光さん、技術部の小林原生さんに伺ってきました。
子供たちと社員の双方に意義のある工場見学を実践しています
―工場の社会科見学の受け入れを始めたのは、どのようなきっかけからですか。
羽村工場 永尾重光 工場長(以下、永尾):14年前、羽村市内にある小学校の先生から問い合わせがありました。3年生の社会科見学ができる場所を探し歩いていたところ、工場の中庭に設置してある遊具を見かけてお声がけいただきました。遊具製造は子供が身近に感じられる製造業のひとつなので、子供たちに社会を支えるモノづくりの魅力を感じてもらおうと、工場見学の受け入れを決めました
―工場見学はどのようなプログラムになっているのでしょうか。
永尾:「デザイン・設計」「購買」「製造」「検査」の各部署を、製作工程の順に見学します。なるべく見て、聞いて、触れることで、よりリアルな体験として記憶に残るよう工夫しています。例えば、「購買」の部署では、遊具に使っている部品を子供たちに実際に触れてもらいながら、どこにどう組み合わせるかをクイズ形式で学びます。
―初めは手探りで始めたとのことですが、受け入れ当初と現在を比べて、何か変わったことはありますか。
永尾:当初は、担当者が一緒に回りながらすべての工程を説明していましたが、途中から各部署で実際に作業している社員が説明する形にしました。実際のユーザーである子供たちに、自分の仕事を直接丁寧に説明することで、社員が仕事に誇りを持てると思ったからです。
―作業を邪魔しないように見学するのではなく、工場全体で受け入れているのですね。
永尾:はい、ウェルカム状態です。年々、社員の説明にも熱がこもるようになり、遊具のユーザーである子供たちに対して、「この子供たちがより安全に楽しめる遊具を届けたい」というような、より強い責任感が生まれているように感じます。当日は安全面からも半日ほど稼働を止め、注意が行き届くようグループごとに数人の社員が同行します。子供たちからの質問に答えたり、控えめな子供を作業がよりよく見える位置に誘導したりしています。
―見学中の子供たちの反応はいかがですか。
永尾:子供たちは興味津々で、例えば太い鉄パイプを切ったり、潰したり、曲げたり、くっつけたりすると、まるで手品を見たように歓声が上がります。一方、説明スタッフ側も、自分たちの毎日の作業にリアクションがあると、自信と責任感を持って安全な製品を作ろうという意識が呼び起こされます。これは、私たちにとっても良い体験になっている証拠です。
―リモート工場見学も実施しているとのことですが、リモートだからこその工夫などはありますか。
永尾:訪問見学のように部品などには触れられない分、現場では危険で見せられない作業も映像で流せます。逆に、リモートの感想から、訪問見学を改良した例もあります。見続けると目が痛くなる溶接の見学は、黄色いスクリーン越しでしたが、リモートで流した作業者視点の映像が好評だったので、訪問見学でもそれをモニターで流しています。
―子供たちも大満足の社会科見学ですね。
永尾:小学3年生の時に工場見学をした数年後、中学校の職場体験でもう一度当社に来てくれた時は、とても嬉しく感じました。また、「ケガをして嫌いだった遊具が好きになれた」「将来、日都産業で働きたい」といったお礼の手紙をいただき、とても励みになります。昨今はコロナ禍で受け入れ企業が減っていますが、学びの機会、体験の機会を子供たちに提供するため、これからもオファーがあれば断らずに受け入れていくつもりです。
校庭遊具の設置実現は、まさに子供たちが主役となった活動でした
―子供たちが考えた遊具の製造・設置を行ったことがあるそうですね。取組の実施に至ったきっかけを教えていただけますか。
技術部 小林原生さん(以下、小林):ある小学校の3年生のクラスで「総合」の授業中に、新しい遊具を作りたいというテーマが持ち上がり、弊社に問い合わせがありました。当時は完成など全く想像できませんでしたが、素直に応援したい、また自分たちも貴重な体験になると思い、協力を決めました。ゲームで遊ぶ子供が増える中、もっと遊具で体を動かしてほしいと常々考えているので、全力で応援しました。
―いくつもハードルがありそうな大きなプロジェクトですね。もともと子供たちから声の上がった取組で、子供たちにも主体性が求められたのではないでしょうか。
小林:予算、敷地の確保、関係各所の合意がないと成しえない、大変難しい取組でした。まずは、子供たちの不安要素に答える場としてリモート工場見学を実施し、その後は弊社が遊具のプロとしてアドバイスする形で進めました。もちろん先生のサポートは不可欠ですが、遊具の構成からデザイン、スケジュールづくりまで、基本的には全て子供たちが中心です。デザイン部、営業部、企画部、記録部、調査部など、本物の企業さながらに役割を分担し、実現に向けて精力的に活動しました。
―具体的には、どのように進められたのですか。
小林:まずは、全校アンケートを実施して集めた要望から実現可能な遊具をシミュレーションし、何度も議論を重ねた末に「ロッククライミングとできるだけ長いチューブスライダーの滑り台が付いた遊具」に決めました。その後は、弊社が作ったデザイン画をもとに、学校のキャラクターのイラストを増やしたいなど、子供たちの多様な意見を取り入れて修正していきました。同時に、ふるさと納税の仕組みを使って応援してくれた方へ、子供たちの手でたくさんの返礼品を折り紙などで作りました。
―子供たちには、乗り越えるべき試練も多かったのではないですか。
小林:子供たちが最も苦労したのは、意見をまとめるところです。学校の遊具は全校生徒が使うものなので、見守る側の先生の意見も含め、多くの人の意見を集約しなければなりません。先ほどお伝えした全校生徒のアンケート結果が出たときには、意見が大きく割れてしまい、一緒に話し合うために授業に同席したこともありました。
―具体的には、どのような課題があってどのように解決したのですか
小林:ロープウェイと滑り台のどちらを付けるかというもので、それぞれの遊具のメリットとデメリットを話しながら、滑り台にまとまりました。決め手になったのは、みんなで一緒に遊びたい、力が弱くて使えない子がいるとダメということでした。そこにたどり着くまで、子供たちも本当に大変だったと思います。
―今後もこういう話があったら積極的に取り組む予定はありますか。
小林:今回、子供たちの遊びへの熱意、遊具が好きなことを肌で感じ、とても励みになりました。もし子供たちの未来のためにつながることであれば、今後もぜひ積極的に協力したいと思っています。
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