掲載日:2023年1月25日
株式会社ジャパン・アーツ
「0歳児を連れて参加OK」親子で参加できるクラシックコンサートを通じ、幼い子供が芸術にふれる機会を創出
株式会社ジャパン・アーツでは、0歳児とその保護者が参加できるクラシックコンサート「Japan Arts BABY 0歳児とおでかけ応援プロジェクト」を開催しています。保護者に対して音楽による癒しの場を提供するとともに、子供たちの音楽への興味や感性を育むこの取組について、株式会社ジャパン・アーツ 代表取締役社長の二瓶純一さんとネクスト事業部 次長の長森朋さんにお話を伺いました。
0歳児を連れていても参加できるクラシックコンサートを開催
―子供向けの取組について、具体的な内容をお伺いさせてください。
株式会社ジャパン・アーツ 長森朋さん(以下、長森):「Japan Arts BABY ~0歳児とおでかけ応援プロジェクト」という、0歳児のお子さまと保護者の方にご参加いただけるコンサートを展開しています。
出産、子育ての時期はなかなかコンサートやライブなどの音楽イベントに出かけることは難しく、そもそも乳幼児を連れて入場可能なコンサートは非常に限られています。そのため、「コンサートやライブが好きだったが、子育ての時期に音楽から離れてしまった」という方も少なくありません。そうした方が参加でき、忙しい子育ての時期に少しでも癒しの場を提供できるようなコンサートが開催できないかと考え、この取組を開始しました。
お子さまにも、0歳児の頃から本格的なアーティストの生演奏に触れていただくことで、自然と音楽に興味を持ち、芸術的感性を育む一助になればと考えています。
―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。
株式会社ジャパン・アーツ 二瓶純一さん(以下、二瓶):大きな背景として、クラシック音楽業界における聴衆年齢層の高齢化という問題が挙げられます。日本も含め世界的にクラシック音楽の主な聴衆層は平均70歳代という状況で、若い世代、特に子供たちの聴衆を開拓するプログラムを展開することが長年の課題となっています。そのため「幼い子供たち、さらにはその保護者の世代にもクラシックを聴いてもらえるコンサート企画はないだろうか」という検討を、業界全体で続けておりました。
そうした中で、世界的ヴァイオリニストのヒラリー・ハーン氏が公演で来日された際に「自分の子育て経験から、赤ちゃんも聴けるコンサートができないか考えている」と相談を受けました。そこで、普段の格式ばった公演ではなく、コンサートホールのロビーを使い、リラックスして赤ちゃんと保護者の方にご参加いただけるコンサートを実験的に開催しました。
その結果、参加者の皆さまからご好評頂き、この公演をパイロットプランとし、取組の主旨に賛同いただけるミュージシャンに参加をお願いすることで、「Japan Arts BABY 0歳児とおでかけ応援プロジェクト」としてスタートすることになりました。
周りの観客も同じ子供連れだから、安心してコンサートに参加できる
―取組としての特徴やアピールポイントとしてどのような点が挙げられますか。
長森:本企画の主旨そのものになりますが、0歳児のお子さま連れでも、安心してコンサートにご参加いただけることです。
小さなお子さまがいらっしゃると、「子供が泣いて周りに迷惑をかけたらどうしよう」「子供が集中して聴いていられるだろうか」といった不安により参加できない方も多いと思います。しかし、本企画はそもそも0歳児のお子さまと保護者の方を対象としていますので、気を遣われる必要はありません。
スタッフはもちろん、アーティストからも「お子さまが泣いてしまっても、声が出てしまっても大丈夫ですよ。リラックスして聴いてくださいね」と呼びかけてもらっています。お客様も寛容に接してくださる方ばかりですので、安心してご参加いただければと思います。
―子供が泣き出しても大丈夫というのは、非常に安心感がありますね。
長森:30分間と通常のコンサートより短いプログラムになっていることもあり、これまで騒がしいコンサートになったことは一度もありません。
私たちも驚いたのですが、演奏が始まると、0歳児のお子さまでも集中して聴いていたり、安心した表情で眠っていたり、静かにされることがほとんどです。
参加された保護者の方からも、「こんなに子供が集中してくれるとは思いませんでした」「うちの子はこんな風に音楽を聴くんだ、という発見がありました」といったご感想をいただいております。
―具体的な取組内容を検討する上で、大切にされたことや、重視されたことはありますか。
二瓶:一流のアーティストによる素晴らしい演奏をライブで届けることです。音楽を聴く手段はCDやオンライン配信などもありますが、やはり生のアコースティック楽器をその場で演奏し、空気を震わせるからこそ、聴覚や視覚だけでなく肌で感じられる迫力と感動があると思います。
忙しい子育て中の保護者においては、家で聴けるCDやオンライン配信の方がアクセスしやすいかもしれませんが、私たちは生演奏の感動にこだわり、そこでしか味わえない音楽を届けたいと考えています。
また、人間の音楽的感性は脳生理学的にみても幼少期にふれた音楽によって形作られてしまうとも言われています。子供の感性や興味、好奇心を育むという意味でも、幼い時期にできるだけ生のコンサートに接する機会を提供していきたいです。
取組開始直後にコロナ禍が始まり、1年半にわたり開催を自粛
―取組を始めるまで、もしくは始めてから、どういったハードルや苦労がありましたか。また、それをどのように乗り越えたのでしょうか。
長森:一番のハードルとなったのはコロナ禍です。本取組は2020年にスタートし、1月に1回目、2月に2回目のコンサートを開催しましたが、その時期から本格的に新型コロナウイルスの流行が拡大したため、3回目以降は自粛せざるを得ませんでした。
0歳児のお子さまにご参加いただくことを取組の主旨としている以上、通常のコンサート以上に感染対策には気を付けなくてはなりません。そのため、感染状況を踏まえながら、できる限り慎重に再開のタイミングを検討してまいりました。その結果、2021年11月にようやく3回目として再開し、以降は継続的に開催ができています。今後も感染状況を注視しながら、慎重に判断を続けていきたいと考えています。
社員もアーティストも音楽が持つ社会的意義と向き合うことができた
―実際に取組に参加した保護者の方から、どのような感想や意見が寄せられておりますか。
長森:コンサート後のオンラインアンケートでいただいたご感想・ご意見をいくつかご紹介させていただきます。
「ずっと音楽が好きでしたが、出産後は子育てがありコンサートに行くことが難しい状況でした。子供を預けずに聴きにこられる場があって嬉しいです」
「子供が30分も音楽を静かに聴いてくれるのが新鮮でした」
「子供の表情が音楽に集中していて、普段とは違う顔が見られました」
このように、喜びの感想だけでなく、お子さまへの新たな発見に驚かれたという感想も多くいただいております。これを励みに、今後も頑張って取組を続けていきたいです。
―取組の実施前後で、本取組に対する社内の反応に変化はありましたか。
長森:実施後、子育て中の社員やお孫さんが生まれた社員などから、取組の内容に対して積極的にアドバイスをもらうようになりました。こういったやり取りを通して、社員の家庭の顔を知ることができ、社員同士のコミュニケーションが深まったように思います。
また、本取組は0歳児と若い保護者の方がメインの聴衆年齢層のため、我々コンサートスタッフにとっても新鮮な経験になっていると思います。もちろん普段の厳粛なコンサートも素晴らしい雰囲気なのですが、若い親子が集まりリラックスして開催されるコンサートも、また別の素敵な雰囲気があります。そこから新たな刺激を受けることで、社員たちのモチベーションもさらに高まっていきました。
二瓶:本取組を継続することで、弊社社員だけでなく、コンサートに出演してくれるアーティストたちにも、「音楽を通じ、社会的課題と向き合う」という意識変化があったと感じています。 スタート時期がコロナ禍と重なったこともあり、アーティストたちが「今、世の中に対して音楽は何ができるのか」という命題と向き合いながら、参加してくれたと感じています。困難な社会情勢下にあっても、未来を担う子供たちや彼らを育てる若い親世代に向けて、自分たちのできる形で貢献していこうと考え、本取組に参加してくれたことは、大きな意義があったと思います。
今後は1歳以上の未就学児とその保護者に向けたコンサートも企画したい
―今後の展望やビジョンをお伺いできますか。また、現在実施中の取組のほかに、新たに実施を企画している取組等があれば教えていただけますか。
長森:「Japan Arts BABY 0歳児とおでかけ応援プロジェクト」と並行して、未就学児とその保護者を対象にした「Japan Arts KIDS」も計画中です。
現状、未就学児が入場可能なコンサートは非常に数が限られています。5~6歳までの間は感性や興味も急激に育っていく時期ですので、この数年間に音楽にふれる機会が限られるのは非常に残念なことだと思います。
一流アーティストたちが所属し、世界中から演奏家を招聘するジャパン・アーツならではのプロジェクトとして、より広く深いクラシック音楽の世界を子供たちと保護者の方に提供することができます。そうした強みを活かしながら、ジャパン・アーツだからこそできる子供向けの定期的なコンサートイベントを開催したいと考えています。
具体的な開催時期は未定ですが、コロナの感染状況などを踏まえ、「Japan Arts BABY 0歳児とおでかけ応援プロジェクト」から発展する形で、「Japan Arts KIDS」も開催していきたいです。
音楽事務所の強みを活かし子供たちに音楽の素晴らしさを伝えたい
―最後に、子供たちや、ほかの企業・団体のみなさまへのメッセージをお願いいたします。
長森:子供たちには、「子供たちが自分の好きなものとして、音楽に親しんでもらえるように、そしてまた音楽の楽しさを伝えられるように頑張ります。 “クラシックって難しいのかな”という先入観は捨てて、感じるままに聞いてみてください。音楽を好きになって、大人になっても聴き続けてもらえれば嬉しいです。」とお伝えしたいです。
二瓶:企業・団体のみなさまには、「ジャパン・アーツの強みは、世界の第一線で活躍するアーティストを招聘し、本物の演奏をお届けできることです。子供たちに限らず、幅広い年代の方々に音楽による感動と癒しを届けたいと考えていますので、共感いただける企業・団体様と是非協業できればと思います。呼んでいただければ日本全国どこでも伺いますので、ご相談ください。」とお伝えしたいです。
―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!
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