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東京都

  • 子供の成長応援

掲載日:2025年1月17日

剣舞会エッジー志伝流ー

日本の伝統文化を通じて礼儀・作法や志を学び、「強さ」と「弱さ」を知る

サムライ文化(刀、扇子)を通して、「思いやりのあるコミュニケーション」「自分と極限まで向き合う克己心」を培うプロジェクトを実施している「剣舞会エッジー志伝流ー」。同団体の活動について、代表の志伝飛龍さんと女流刀使いで和文化コンテンツコーディネーターの川北まゆさんにお話を伺いました。

左:川北まゆさん 右:志伝飛龍さん

モットーは「千年先まで志を伝える」

―こどもスマイルムーブメントに参画したきっかけを教えてください。

女流刀使い兼和文化コンテンツコーディネーター 川北まゆさん(以下、川北):私たちは、「千年先まで志を伝える」ことをモットーに活動しており、子供たちにもサムライ文化を伝えていきたいと思っています。どうすれば私たちの活動を知ってもらえるかなと模索していたときに、こどもスマイルムーブメントを見つけました。どれだけ志があっても、我々個人の力だけでは限界があります。東京都さんという大きな母体がこういう取組をやってくださるのが非常にありがたいことだなと思い、参画しました。

―「剣舞会エッジー志伝流ー」は、どのような活動をされていますか?

代表 志伝飛龍さん(以下、志伝):私たちは、殺陣(たて)や舞踊をはじめ、獅子舞・忍者・試斬実演などの演舞を行うクリエイティブグループです。日本や海外のイベント、フェスなどで日本の伝統文化を新しい形で発信しています。

クリエイティブグループ「剣舞会エッジー志伝流ー」

―日本の伝統文化を通じて学べることはどのようなことがありますか?

志伝:はい。例えば私たちが取り組んでいる殺陣は、相手がいないと成立しません。そのため、相手との距離感や調和、何より思いやりが非常に大切です。セリフなども基本的にないので、お互いの呼吸を合わせることでコミュニケーションを取る必要があります。こういう思いやりやコミュニケーションの取り方は、社会に出てから様々な人と関係性を構築するときにも役立つと思っています。

―現在実施している、子供たちに向けた取組について教えてください。

志伝:取組のひとつとして、武士道に基づいた礼法・作法を中心に、「自分と向き合う集中力」「相手と向き合うコミュニケーション能力」を体感して学ぶ「子供剣舞教室」を開催しています。最初は木刀ではなくスポンジの刀などで経験をしてもらい、「これ以上近づいたら危ないよ」「もし相手が近づいてきたら、自分から下がるようにしよう」などと教えています。最近は映画やアニメなどの影響もあってか、興味を持って見学に来てくれる子供も多いですね。

「最初から刀を使うわけではなく、まずは相手との向き合い方からゆっくり学びます」

川北:「サムライジュニア育成講座」という取組も行っています。こちらは、イベントなどでお客さんに披露するための殺陣や舞踊の立ち回り方などを学ぶ講座です。「剣舞教室」と並行して参加してくれている方が多いですね。

―演舞はどのような場で行われているのですか?

志伝:自分たちで自主公演をすることもあれば、地域の方々からお声がけいただいて祭りやイベントに参加して披露することもあります。

剣舞教室の発表会での様子

―子供たちや保護者の方々からはどういう反応や感想がありますか?

志伝:稽古をしている姿を見た保護者の方からは、「あんなに明るくて大きな声を出すなんて。家では見たことない姿で驚きました」というお声をいただくことが多いです。また、友達とは遊ばない、公園などにも行かないという子が一度体験をしてみたら、前のめりになってみんなと一緒に稽古をするようになる、なんてこともあります。最初は「ヤダヤダ!」と言っていたのにどんどんハマっていく姿を見ると、私も嬉しくなりますね。

川北:保護者の方からは礼儀・作法などを教えてくれるのも助かるというお話を聞くこともあります。例えば刃の向け方。相手に対して敵意がないよという意味で、柄(持ち手)は自分から遠いところに置くんだよ、刃を相手に向けるのは失礼になるんだよということを教えています。

―そういう礼儀・作法は、例えばハサミの刃を相手に向けないなど、日常生活でも活かせる部分が多々ありそうです。

川北:そうですね。日本舞踊の扇子の持ち方とお箸の持ち方も、そのひとつです。この二つは、上げ下げの仕方が同じなんです。このように、日常生活に密接に関わる学びがたくさんあると思います。

「指先をそろえる、姿勢を正す、など細かい所作に活きてくる部分が多くあります」

―子供たちに向けた活動のなかで、大切にされていることを教えてください。

川北:たくさんありますが、「誰かのせいにしない」を伝えることを大切にしています。私が稽古を始めたばかりの頃、代表から「ステージの上で誰かの刀で自分が怪我をしたとしても、それは自分のせいだと思いなさい」と言われたことがあって。最初は「いやいや、そんな訳ないでしょ」と思っていましたが、やっていくなかで、そういう考え方でないと怪我をする、相手に怪我をさせてしまうと分かったんです。例えば、相手が近いなと思ったら自分が遠ざかるとか、相手の力が強いなと思ったら自分の力を抜くとか。譲れない部分は譲ってはいけませんが、自分が変わることで危険や衝突を回避できることもあります。柔軟に対応するということを伝えていますね。

―今のお話は、「空気を読む」ということに通じる気がしました。

川北:そうだと思います。これも、思いやりのひとつですよね。例えば、文章をひとつ書くときにも、何も考えずに書くのか、それともどういう書き方なら読み手に伝わるのかを考えるかで、相手の印象も大きく変わってくると思うんですよ。活動を通じて、思いやりを持つことの大切さを伝えられたらと思っています。

志伝:ここ最近での気づきなのですが、「弱さを知る」ということが大事だと思っています。活動を始めてから約10年間、体を鍛えて、強い心を持ってどんなことにも対応しなきゃいけないという心構えでやってきました。でも強さだけでは、人と衝突しても謝れない自分が出てきてしまうんですよね。単純に「弱くならないとダメ」ということではなく、弱い自分を隣に置いておかないと、何かあったときに相手に対して思いやりを持って返せないんです。

小学校での殺陣体験の様子

―稽古で技術が身について強くなっていくなかで、自信もついてくると思います。ただ、そんなときに強い心だけ持っていたら、相手への思いやりが薄れてしまう可能性がある、と?

志伝:そうだと僕は思っています。これは門下生たち、そして小さい子たちとの出会いで気づきました。「弱さを知る」ということをこれから大切にしていきたいですし、また、子供たちにそれをどう伝えていくのかというのが課題のひとつでもありますね。

地域の町おこしに貢献したい

―今後の展望を教えてください。

志伝:町おこしなどの企画にご協力できればと思っています。自分たちの町で新しい何かに取り組みたい、何かを発信していきたいという方々の力になって、子供たちとも交流したいですね。最近、地元の祭りがなくなっちゃったなんていう声を聞くことがあるんです。僕たちも日本の伝統文化・芸能を伝える活動をしていますので、そういう伝統などを伝承することに関わっていきたいですね。

―他企業・団体とのコラボレーションのご意向がありましたら教えてください。

川北:私たち個人の力では限界があります。だからこそ、こどもスマイルムーブメントに参画されている企業・団体さんと色々なコラボレーションをして、日本の伝統文化や志を伝えていけたらいいなと思っています。

―最後に、子供たちへのメッセージをお願いいたします。

川北:私たちは「千年先まで志を伝える」ことをモットーに活動していますが、自分たちが生きた証がどういう形で次に繋がっていくのか、それは分かりません。それでも、自分たちが歴史を紡いでいく、自分たちも歴史の1ページであるということを知ってもらいたいなと思っています。その考え方を意識するうえで役に立つのが、脈々と受け継がれてきた武士道や志。活動を通じて、それを伝えるお手伝いができればなと思っています。

志伝:僕は「未来に向けて羽ばたこう」とメッセージを送りたいです。色々な国に訪れて実感していますが、日本の伝統文化は世界から賞賛される誇らしいものです。若いうちから日本の伝統文化に触れることで、多くの国の方々と繋がりや交流が生まれて未来が開けるかもしれません。私たちの活動がその手助けになれば、とても嬉しいですね!

―ありがとうございました!

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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