掲載日:2022年3月1日
藤田観光株式会社
親の仕事を体験することで、親の目線から“社会”を学ぶ
2022年2月26日、東京都文京区でホテル椿山荘東京を運営している藤田観光が、ホテルのフロント業務の体験学習を行いました。今回、体験学習に挑戦したのは、同社のマーケティング部門と営業企画部門の社員の子供たち。当日の様子と、本取組の意義などを紹介します。
スタッフに見守られながら、フロントの業務を体験
藤田観光は親と子供が同じ時間を共有することの大切さを重視しており、ホテル椿山荘東京において社員の子供たちを対象にしたパン作り体験教室や、テーブルマナー教室など様々なイベントを企画しています。今回紹介するフロント体験学習は、そのうちの1つとして開催されました。
今回のフロント体験学習に参加したのはコンドリ捺愛さん、コンドリ大治くん、工藤遥翔くん、工藤響揮くんの4名。藤田観光に勤めるお母さん(コンドリ亜矢子さん、工藤愛美さん)と一緒です。子供たちがホテルのフロント業務を体験するのは、今回が初めてです。
「頑張るぞ!」と意気込みを見せてくれる子や、
「うまくできるかな?」と緊張気味の子もいました。
子供たちはフロントマネージャーの田中さんから、ホテルのフロントという仕事について説明を受けました。ホテルの立派な椅子に座った子供たちは、田中さんの話に聴き入っていました。
「ホテルでお泊り以外にできることって知ってますか」
と質問する田中さんに対して、子供たちは
「ご飯を食べられる!」「温泉に入れる!」「パソコンができる」「お勉強ができる」
など、お母さんの職場ということもあって子供たちはどんどん答えてくれます。
「今日はチェックインのお仕事を皆さんにしてもらおうと思います。お客さんは、皆さんのお母さんです」
田中さんからフロント業務の説明を受けた後、子供たちが利用客役、田中さんがフロント役として、子供たちに1人ずつ、フロント業務を丁寧にレクチャーしていきます。
本番を迎え実際にフロントに立った子供たちは、フロント業務体験をスムーズにこなしていきます。多少緊張しつつも堂々と体験していました。
「子供たちを“子供扱い”しない」
子供たちはホテルの業務に非常に興味を持った様子で、その後の質問コーナーでは、
「フロントのパソコンは、何に使うんですか?」
「ホテルの部屋は、いくつあるんですか?」
など、多くの質問が飛び交っていました。
「この仕事で、一番楽しいことは何ですか?」
という子供からの質問に対して、田中さんは
「お客様とお話しすることと、お客様がホテルから帰るときに、『楽しかったよ』と言ってくれることです」
お母さんが携わっているホテルの仕事がどのようなものか、少しずつ理解していったようです。
フロント業務体験を終えて、田中さんは、
「子供たちを“子供扱い”しない、ということを心掛けました。できるだけ大人と同じ言葉を使って、大人と同じように接する方が、子供たちが誇らしく感じているように思います。そんな様子を見られて、私も楽しかったです」
と語ってくれました
職業体験で子供の新たな一面を発見
コンドリ捺愛さんと大治くんは、今日のフロント体験について
「上手にやろうと思って緊張したけど、お母さんたちをお客さんにして体験してみたのが面白かった」
「みんなとお話しするのが楽しかった」
などの感想を語ってくれました。自分のお母さんが、ホテル椿山荘東京で働いていることについて、かっこいいと思う?と聞かれると捺愛さんは「思う」と短く答えつつ、ちょっと誇らしげな笑顔をみせてくれました。
お母様のコンドリ亜矢子さんからは、
「捺愛は、もっと控えめに体験するのかなと思っていましたが、しっかり大きい声も出せてお仕事ができていました。自分らしさを発揮できていたのかなと思います」
「フロントのお仕事は初めての体験だったはずですが、緊張しながらも一生懸命頑張って取り組んでいるんだなと感じました」
と、普段あまり見ない我が子の姿をしっかりと受け止めていました。
工藤遙翔くんと響揮くんは
「すごく緊張したけど、すごく楽しかった」
「文字を書いたり説明したり、カードを渡すのが楽しかった」
と話してくれました。
お母様の愛美さんは、
「職場体験でとても良い思い出作りを毎年させてもらっています。仕事という概念と、働くというイメージは、子供にとっては中々掴みにくいものかと思います。ですが、このような体験を通じて、仕事についての大まかな印象を掴んでもらえたのかなと思いました」
と語ってくれました。
親子の時間を育める体験を提供したい
働く親と子の関係性に注目した取組を進めるホテル椿山荘東京の過去、現在、未来の活動について、マーケティング担当の眞田あゆみさんに伺いました。
今回の体験イベントを企画運営する際に最も大事にしているコンセプトはどのようなものなのでしょうか。
「ホテル椿山荘東京は、“親子・三世代”というキーワードのもと、様々な体験イベントを行っております。企画立案に対し最も重視していることが祖父母、親、子が時間を共有できる内容かどうか、というところです。もう一つはホテルが関わっている食、自然、文化、というものを活用できる内容であるかどうか、という部分です。
今回のフロント業務体験も含めて、ホテル業務全般の体験企画を取り入れています。加えて社員の子供が参加するというのも面白い点だと考えています」
「ホテルには様々なプロフェッショナルな業務がありますので、お父さんお母さんの職場がどのような所なのかを体験することは、子供にとっても貴重な経験だと考えています。これまでベッドメイキングや、テーブルマナー、そしてパン作りといった業務を体験として提供してきましたが、毎年プログラムを少しずつ変えて、毎年参加しても楽しめるようにしています。その中で今回は、自分のお母さんが勤めているホテルってこういうところなんだ、という意味で、ホテルの顔ともいえるフロント体験を企画致しました」
このように、藤田観光はホテルに集まるたくさんの仕事を題材に業務体験を提供する他、ホテル内に豊かに残る自然を生かして蛍の放流式も開催しています。眞田さんに体験時の印象的なエピソードを教えてもらいました。
「蛍の生態を学んでいただいた後、紙コップに入った蛍の幼虫をお配りし、幼虫を沢に放流していただきました。子供たちからは『ダンゴムシみたい!』といった大人にとっては驚くような感想が聞けて、我々としても刺激的な体験でした」
子供にとって蛍体験はとっても興味深いものだったようですが、このように子供たちと触れ合ってみた中で、その言動などから、どのようなことが得られたのでしょうか。
「庭園には砂利石が敷いてあるのですが、その中で、みんなが色の違う石を見つける遊びを考えていました。やることが決められているよりも創意工夫の余地を残しておいた方が自分から楽しんでくれるんだな、と気付かされました。
今後体験イベントを企画するにあたって、どのような体験イベントを開催するかだけでなく、どこまでを設定通りに進めるべきなのか、反対にどこで自由してもらう余地を残すべきかといった、メリハリをつけて考える必要がありますね。」
自然体験ではもう一つ、植樹祭も行っています。その内容についても眞田さんに聞いてみました。
「植樹祭は、私たちホテル側と未来を担う子供たちが自然について考え、分かち合える機会を、という想いで始めた取組です。参加希望のお子様には自然についての作文を書いていただき、その中から選考させていただきました。
選ばれた皆様には梅と桜の苗木を植樹する体験をしていただいたほか、ワークショップでは、ご家庭でも育てられるよう苔玉作りをしました」
親子の意見を取り入れる文化
また、藤田観光が親子の意見を取り入れられる環境下にあることも、注目すべき点です。組織の様子について教えていただきました。
「私どもの部署は、人数が20人弱おります。そして従業員の約半分は、子育て中のお父さんやお母さんです。そのため、様々な企画を考えるときは、親としての意見も多く取り入れています。毎回イベントを実施した後は振り返りを行っておりますので、子供たちから頂いたアンケートの内容を踏まえて、イベントの内容も、受け答えのコミュニケーションが生まれるような問いかけを設けたり、どこの部分を実際に体験してもらうかなどを改善し、ブラッシュアップしております」
部署の半数が子育て世代ということですが、従業員家族への体験活動を通常業務と並行して行なうにあたってプラスに働いている面がありそうですね。
「お子さんが実際に職場に来てくれることで、私達従業員には、『こんなに可愛いお子さんたちを育てているんだ。応援しよう』という気持ちが生まれます。実際にお子さんに会える機会があるというのは、本当に嬉しいことです。親だけではなく、他の従業員も一緒になって子供を育てているという感情が生まれると考えています」
最後に、今度の展望や抱負を眞田さんにお伺いしました。
「今後は、SDGsについて考えるような「子供フォーラム」というイベントを計画中です。まだ企画段階ではありますが、過去に実施したイベントへ寄せられたお子様からの意見も、多く反映させていきたいと考えております」
記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。
紹介した企業・団体
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藤田観光株式会社
- 住所
- 東京都 文京区関口 2-10-8