本文へ移動

東京都

  • 柔軟な働き方促進

掲載日:2022年3月1日

株式会社エグゼクティブ

就業中に子供に「おかえり」が言える。完全テレワーク制度を実現

株式会社エグゼクティブ(以下、エグゼクティブ)は、法人専門の営業アウトソーシングサービスを展開している会社です。同社は2017年に、「NLPT宣言=働くのに場所も時間も関係なし!」という表明をしました。(NLPT=Our company has No Limitations on the location of workPlace and working Time)
子育て、介護、病気、居住地など、様々な理由で、能力もあり、働く意欲もあるにも関わらず、働く機会を逸している方が大勢いることから、何か事情があっても、働きたい人が自由に働ける環境をつくりたいと思い、始まった取組です。代表の内山隆さんを始め、子育てをしている社員の方の声も交えて、その全容を見ていきましょう。

「親子の会話が弾むようになりました」

竹倉真衣さん(左上)、川崎朗子さん(右上)、廣石綾子さん(中央下)

エグゼクティブでは「NLPT宣言」をベースに、6つの制度が運用されています。
完全テレワークの実施は、この宣言に基づいて実行された改革の中の一つです。
全国から勤務可能、決まった出勤日は無く、出勤義務もありません。実際に子育てをしている、広報の竹倉真衣さん、営業担当の川崎朗子さん、同じく営業担当の廣石綾子さんの3名にお集まりいただき、完全テレワーク制度について伺ってみました。

―完全テレワーク以前は、育児と仕事の両立はどうだったのでしょうか。

広報 竹倉真衣さん(以下、竹倉):私はひとり親として、小学1年生の娘と2人で暮らしています。完全テレワーク制度が導入される前は、子育ての時間に追われる生活をしていました。そうなると、娘とのコミュニケーションがどうしても雑なものになっていましたね。
例えば、保育園に通っている当時は毎日の自転車での送り迎えが大変で、出勤前も退勤後もとにかく焦っている感じで、あっという間に時間が過ぎていく毎日でした。娘が私の言うことに耳を傾けなくなった時期もありました。

営業 川崎朗子さん(以下、川崎):私は中学1年生の娘と実家の近所に暮らしていて、夫は単身赴任中です。完全テレワーク導入前は、子育てがかなり慌ただしかったですね。会社から帰宅する時間は、いつも19時くらいでした。娘は当時小学生でしたから、21時半には就寝させていました。そうすると、19時から21時半までの2時間半の間に、お風呂に一緒に入って、宿題を一緒に済ませたり、本当に時間がなかったです。
夕食は私の父母がいる実家で済ませていましたから、平日は娘と一緒に夕食をとる機会はほとんどありませんでしたね。

―完全テレワーク制度を導入した後はどう変化しましたか。

竹倉:完全テレワーク制度導入後は、通勤時間がなくなったことで、時間に余裕が出来たこともあり、子供のペースに合わせて保育園の登園ができるようになりました。
また、娘が小学生になった今は、学校から帰宅した時に「おかえり!」と声をかけることができます。その「おかえり」の一言で娘も「あ!ママは今、話しても大丈夫なんだ!」と理解して、嬉しそうに話してくれます。
親子のコミュニケーションの質が上がったなというのは感じていますね。

川崎:今は18時に自宅で仕事を終えたら、すぐに夕食を作れるようになりました。以前は慌ただしく入っていたお風呂もゆっくりと入れる時間をとれるようになりました。
また、中学生になった娘が通う中学校は給食のない学校なのですが、毎朝お弁当を作る時間も余裕があります。時間に余裕ができたので、娘との会話も、中学生特有の人間関係の悩みなどの深い話もできるようになりました。

―廣石さんは完全テレワーク化してから入社したとのことですが。

営業 廣石綾子さん(以下、廣石):はい。私がエグゼクティブに入社したのは、完全テレワーク制度を導入してからでした。前職は外勤の営業をしていて、保育園に子供を預けて外勤先に行って、退勤したらまた保育園に行って子供を迎えに行くという1日の流れがあり、かなりハードでした。
5歳の娘と3歳の息子がいるのですが、息子は先天性の疾患を持っています。そのため、営業先にいるときも常に“保育園から何か緊急の連絡が来るかもしれない”という心配があって疲弊していました。

―完全テレワーク制度を導入しているエグゼクティブに入社してどう変化しましたか。

廣石:完全テレワークでありがたいなと思うことの一つが、昼休みの1時間です。その時間に夕飯の支度をすることもできるようになりました。また今は週に4日勤務しているのですが、息子の持つ疾患を知ってほしいという活動もしているので、平日1日をその活動に当てられるのも嬉しいです。

「会社にある暗黙の了解、もうやめませんか?」

内山隆 代表

完全テレワーク制度も含めた同社の6つの制度とNLPT宣言について、前述の3名に加えて内山隆代表にご参加いただき、詳細を語っていただきました。

―まず、NLPT宣言をした理由と、その概要について教えてください。

内山隆 代表(以下、内山):世間には、月~金で9時〜18時まで働かなきゃいけないという決まりみたいなものってあるじゃないですか。こうした一般的な労働時間のイメージ、暗黙の了解みたいなものは、やめたほうがいいと私は思っています。例えば、会社には出社の15分前から来なきゃいけないとか、満員電車に乗らなきゃいけないとか。しかし、はっきり言ってそれは社会にとって必須じゃないですよね。私は働き方という価値観を変えていきたいと思っています。そのためには、まず身近なところから変えていくために、この宣言をするに至りました。

―NLPT宣言とは、どういうものですか。

内山:NLPT宣言は、一言でいうと『働くのに場所も時間も関係ないだろう』ということです。これを元にして、当社は6つの制度を作りました。そのなかで育児に関連する制度の1つ目は、フリー正社員制度というものです。これは、週3日勤務でも時短でも、雇用形態は全員正社員にしています。仕事内容は一緒だし、給与や賞与の水準も同じということです。2つ目は、プロジェクトリーダー制度です。当社には、そもそも部長や課長という階層がないんですよ。新入社員が入社3ヶ月後とかにいきなりプロジェクトリーダーになったりします。これは、能力が身についたら課長になるというのではなくて、立場を与えたら自動的に課長水準のスキルが身につくであろうという考え方に基づいたものです。

―社員の皆様に直接聞いてみたいと思います。残業や休日出勤などはありますか。

竹倉:全くと言っていいほどないですね。

川崎:基本的にありません。残業がある日は珍しいです。

内山:当社は、残業は悪だと思っていますからね。残業ゼロの会社にしようって、いつも言っていますよ。

―様々な制度があるんですね。

内山:はい。そして最も育児に関連しているのが、完全テレワーク制度ですね。出勤の義務は全くなく、全員自宅で働いています。特にこの制度は、子育て中の社員にとって、育児の負担を軽減するものにもなっています。

テレワーク導入の課題は、『採用・教育・コミュニケーション』

―完全テレワーク制度を導入するにあたって、苦労したことはなんでしょうか。

内山:課題点は大きく分けて、採用、教育、コミュニケーションの3つです。まず採用面接は当然オンラインで行いますが、その場合、応募者の実際のスキルを図ることは難しいです。では何を工夫したかと言うと、最初から私たちの会社のことを包み隠さずお話するのです。例えば、去年はこんな理由で何人が辞めちゃいましたとか。そうすると、不思議なことに、相手も包み隠さず自分を出してくれるんです。人間って面白いですよね。

―完全テレワークの場合、今後直接会うこともない可能性があるという中で、それをするのはすごいですね。

内山:教育に関しては、例えばある社員が課題を抱えていたりすると、社内で働いていれば誰かしら様子に気付いて声掛けできます。しかしオンラインだとまず気付けない。なので、採用時の面接の段階で、『困ったことがあったら、とにかく何でも聞いて』としつこく伝えることにしています。当たり前のことかもしれませんが、大事なポイントだと考えています。

―テレワークを導入している他の企業にとって、非常に参考になりますね。

内山:本当にそう思います。コミュニケーションに関しては、会社の文化として作っていくべきだと考えています。例えば、私がふとしたときに社内チャットに雑談として、流行っているアニメについての話題を振るというようなことをしています。そうすると、皆『社長が雑談しているから、私達もしていいんだ』と安心して自分たちもやり始めるようになります。

―代表自らが動くというのが肝ですね。

内山:そう思っています。

テレワークには、社員の意識の統一化が大切

―貴社では以前、テレワークをする社員と出勤する社員がいらっしゃったようですね。

内山:はい、でもそれは課題を生むだけになっていました。一言で言えば、オフィスと自宅の、どちらに主体を置くかというのが大きな問題でした。つまり、オフィスに来る人が多い中、家で働いている社員もいるという状態なのか、それとも、家で働く社員が多い中、会社に出社する人もいるという状態なのかということですね。

例えば会議などの時に、在宅をしている方々と、出社している方々とがいる場合、
見え方、聞こえ方が違うために、どちらをメインに進行していけば良いか、
とても迷うんですよね。社員の意識を統一させるというところは、かなり悩みました。

―だから現在は全社員が自宅勤務なんですね。

内山:そうです。もう振り切ってしまった方が良いと判断しました。だから、人形町にある本社のデスクとPCは、全て捨てました。もちろんここまでやるのは極端かもしれません。

―テレワークの導入によって社員の家庭に起きた変化はありますか

竹倉:今回参加した社員の他にも、エグゼクティブには育児世代のママパパが多く働いています。テレワークを導入したことでの家庭の変化をコメントとしてもらいました。

・子供たちと会話が増えた
・学校での出来事を会話する時間が増えた
・学校から帰ってきたときの子どもの表情を見ることができる
・子供の宿題を見るのに余裕ができた
・習い事の時間を作ることができた
・子供が体調を崩した時でも仕事をしながら子供の様子を看ることができるようになった
・「家に帰ればいつでもママがいる」という安心感が子どもの自立心を高めてくれた(習い事先まで一人で行く/帰宅する)

内山:全ての企業にマッチするわけではないと思いますが、このような取組をもっと社会に広めていきたいですね。

「TOKYOテレワークアワード」推進賞(2021)を受賞する等、特徴的な取組を実施しているエグゼクティブ。子育てと仕事を両立しやすい同社の取組は、今後多くの企業が推し進める働き方改革に参考にできる点が多いように感じました。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

紹介した企業・団体