掲載日:2022年3月1日
トヨタ自動車株式会社
未来社会を子供が学び、未来を発想していくことをサポート
企業が予見している“未来”を、子供に学んでもらう。その一方で子供たちの自由な発想を“コンテスト”という形でサポートする。そんな活動に積極的に取り組んでいるのがトヨタ自動車株式会社です。日本を代表する企業が全国規模、世界規模で行なっている取組を覗いてみましょう。
モビリティカンパニーという立ち位置で、子供たちと一緒に未来を創り上げていきたい
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、一般的には自動車メーカーとして認知されていますが、2018年1月「自動車会社からモビリティカンパニーへの変革宣言」を発表しました。単に自動車を製造し販売する会社ではなく、地球環境に配慮しながら移動と社会とをつなぐモビリティカンパニーへと舵を切ったのです。そのひとつの象徴として、2008年から実施されている小学生向け出張授業『トヨタ原体験プログラム』が名称変更され『トヨタ未来スクール』となりました。
トヨタのプロモーション事業を担うトヨタ・コニック・プロ株式会社の皆様にお話を伺いました。
―トヨタ未来スクールを始めた当時の状況とこれまでについて教えてください。
鈴木裕司さん(以下、鈴木):立ち上げ当初は若者のクルマ離れなどが叫ばれていましたので、『子供たちにクルマへの興味、関心を持ってもらいたい』『クルマ好きを増やしたい』という思いを持って始めました。しかし未来の社会を考えると、私たちモビリティカンパニーがいかに社会と地球環境に貢献できるのか。次世代を担う子供たちにその点を訴えることが何よりも重要だと考えました。
鈴木:以前は自動車の構造やその魅力を訴える授業内容が主でしたが、現在は大きく改訂されました。自動運転に代表される最先端のテクノロジーから身近な暮らしのこと、そして地球環境のことまで、トヨタの事業を通して未来の社会を学ぶことができます。
モビリティカンパニーならではの授業を、全国各地の子供たちに届けることに意味がある
―具体的にどのような授業になっているのでしょうか。
鈴木:「未来モビリティ・プログラミング教室(小学校4~6年生向け)」では、子供たちに対して地球温暖化や交通事故、渋滞、移動手段の困りごとなどあらゆる社会課題を提示し、コミュニケーションを取りながら講師と一緒になって考えていきます。その上でロボットトイを使ったプログラミング体験を通じてミッションをクリアするための論理的思考や、プログラミングの基本要素である「順次、分岐、反復」を楽しみながら学べる授業です。
鈴木:小学校の学習指導要領で、プログラミング教育が取り入れられました。そこで私たちは、トヨタらしさを盛り込んだプログラミング内容にしています。例えばイーパレット(自動運転を前提とした大型電気自動車)に見立てたものを用意し、自分が意図した動きをマップ上で実際に動かしてゴールまで導く体験をしてもらいます。大人がやっても1回ではクリアできないほどのもので、失敗しながらも成功にたどり着くことで、試行錯誤しながら、失敗を恐れないで取り組む姿勢を学べるようなものとしています。
―子供たちからの反応はいかがでしょうか。
鈴木:プログラミング教室を含めた『トヨタ未来スクール』は、実際に子供たちからも好評で、
「環境に配慮してクルマを作っているということを知ることができた」
「未来をつくる会社なんだと思った」
「もっと勉強して社会の問題を解決したい!」
「プログラミングに対する意識が変わりました」
など楽しんでくれているだけでなく、意識の変化も大きいコメントをもらっています。
―全国で実施されているということですが、取組における工夫を教えてください。
鈴木:『トヨタ未来スクール』は、その前身である『トヨタ原体験プログラム』から数えて、累計4000校もの学校で実施されてきました。全国各地の新車販売店(ディーラー)のスタッフが講師として地元の学校へ赴きます。これは全国に約5000店舗の販売ネットワークを持つトヨタならではの強みであり、地域格差をなくし「誰一人取り残さない」というSDGsの考え方に合致したものであると言えます。
同時に販売店のスタッフにとっても学びの場になるようです。実際、販売店の新人育成プログラムとしても機能しています。
「事前の準備も大事ですが、なにより現場で子供たちの動きを意識して取り組むようになりました」
「子供たちとの距離を縮めるために、自分たちにニックネームを設定しています」
「子供たちとのコミュニケーションを取ることは、ご家族がいる方に自動車を販売する際に役に立ちました」
などの声が挙がっています。
ペンと紙があれば誰でも参加できるコンテストが、子供たちが未来社会を創り上げるきっかけになる
「トヨタ未来スクール」とは別の側面で、子供たちのクルマに対する興味を抱いてもらい、なおかつ明日のモビリティを考えてもらおうとして企画されたのが「トヨタ 夢のクルマアートコンテスト」です。
―夢のクルマアートコンテストの取組内容を教えてください。
穂積豪さん(以下、穂積):子供たちに毎回テーマに即して、クルマの絵を描きます。クルマ単体だけではなく、テーマに即して取り巻く環境や背景も加わります。テーマ以外の条件はほぼ何もありません。画材も自由です。鉛筆と紙さえあれば自由に絵を描いて応募できるので、瞬く間に世界中へと拡がりました。今では世界75カ国以上から、子供たちの絵が集まります。
応募した絵はトヨタの中での独自審査によるコンテストが設けられます。ワールドコンテスト入賞の子供たちは「ワールドコンテスト表彰トリップ」として、日本へ招待されます。現在は新型コロナの影響で一時中止されていますが、過去には世界中から集まった入賞者が日本の観光地巡りなどを楽しみました。
―コンテストに入賞した方からの言葉や、その後のエピソードなどありますでしょうか。
穂積:入賞したお子様の母親からお手紙をいただいた時は嬉しかったです。「何をやってもダメだった息子が入賞したことで初めて自信を覚え、挑戦する心を持ってくれた」と書いてありました。「今では運動部に所属して毎日がんばっています」とも。こういうお手紙は、逆に私たちが励まされます。
穂積:その後のエピソードで印象的だったのは、受賞したインドネシアの子供がそれをキッカケに有名になり、新聞に出たり、展覧会を催すほどに成長したそうです。子供の才能を発見し、そしてやる気を導き出す取組です。なにより子供たちの発想力は大人が考えている以上に柔軟でそして豊かですね。
―日本と世界の子供の作品に異なる特徴やそれぞれ印象があれば教えてください。
穂積:南国はポップな色味が多いなど、国によって色使いが結構異なりますね。震災や自然災害があった時期だと災害時に役立つクルマを描いたり、子供たちの絵には、固有の文化や世相がダイレクトに反映されるのだと知りました。子供たちは、我々が思っている以上に自分の国や自分を取り巻く環境をよく見ていると思います。
―この取組を通して、事業活動に影響を与えるようなことはありますか。
穂積:ワールドコンテストでは、過去には豊田章男社長をはじめ、最前線で働く開発者、レーシングドライバーなど多彩な方々が審査員を務めています。クルマ(モビリティ)づくりの最前線に立つ方々にとって、思わぬインスピレーションを得るいい機会になっているかもしれません。絵を立体化してオフィスに飾る例もあるといいます。具体的なインスピレーションではなくても、子供たちの創造力を感じて「自分も頑張ろう」と思えるモチベーションツールとして機能していると聞きます。
穂積:トヨタがやるコンテストである以上、表彰するだけで終わりではありません。子供たちのアイデアが近い将来本当に実現するかもしれないという可能性を秘めています。そうした意味でも『トヨタ 夢のクルマアートコンテスト』というのは、トヨタにとって重要なコンテンツだと考えています。
記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。
紹介した企業・団体
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トヨタ自動車株式会社
- 住所
- 東京都 文京区後楽 1丁目4番18号