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東京都

  • 子供の成長応援

掲載日:2023年1月18日

東京工芸大学

子供たちの学ぶ楽しさを育みたい!大学が持つ多様な学部の特性を活かした体験型の学び

東京工芸大学では、大学が持つ多様な学部の特性を活かして、子供たちの学びを楽しくするためのワークショップや講座を企画し、夏休みの自由研究等に活用してもらう「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」という取組を行っています。子供たち自身が手や体を動かしてやってみる体験型の学びをどのように企画しているかについて、東京工芸大学 中野キャンパス事務部 松尾 未来さんにお話を伺いました。

東京工芸大学創立100周年記念モニュメント

地域貢献を目指す中で、子供たちの学ぶ楽しさを育む場が生まれた

―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。

東京工芸大学 中野キャンパス事務部 松尾 未来さん(以下、松尾):一番古くから実施している取組は、「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」です。東京工芸大学の厚木キャンパス(神奈川県厚木市)で、子供たちに向けて夏休みの自由研究などに役立つ約15テーマの講座を開講しており、現在はコロナ禍のため、参加人数を絞った対面式の講座とオンラインでの講座を数点開催しています。
講座テーマの例として、本学にある風工学研究センターで、風に飛ばされない家を建てるにはどうしたらいいかを考えながら、紙で家をつくり、実際に風を当てて検証するというワークショップがあります。他には、クロマキー合成(テレビ等で見かける、緑色の背景に人を立たせた合成方法)を使った、漫画の下敷きづくりを体験する講座もあります。すべてのテーマで、子供たちが遊びながら学べる、学びながら遊べるにはどうしたらよいかということを考えてワークショップを企画・実施しています。

―聞いているだけでワクワクしてくるワークショップですね!「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。

松尾:本学のキャンパスは、厚木市・中野区どちらも住宅街に所在していますので、大学として地域貢献、地域連携を進めていきたいと考えたことが背景にあります。大学のキャンパスは、住民の方たちにとって少し入りにくい印象もあるかと思いますが、そうした住民の方にも開かれた場であるということを感じていただきたいと考え、厚木キャンパスの学生たち主催で実施していた「七夕祭」と共同で、平成7年頃に子ども向けの夏祭りを開催したことが起点となっています。はじめは屋台が出たり、スーパーボールすくいをやったりと学ぶ以外のこともしていましたが、夏祭りの一環としてワークショップを実施してみたところ、参加された保護者から「子供の自由研究に役立ってありがたい」というお声をいただき、それがきっかけとなってワークショップを中心に数年ほど続けていくうちに、現在の「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」の形に至りました。

「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」に子供が参加する様子

見ているものの裏側を知り、物事の見え方が変わる面白さ

―地域貢献への想いから取組が始まり、住民の方からいただいた声で取組がさらに発展されていったのですね!「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」以外にも取組を実施されているのでしょうか。

松尾:はい、「カラボギャラリー」(厚木市)でのワークショップと「弥生地区ワークショップ」(中野区)を実施しています。「カラボギャラリー」は、本学の「色の国際科学芸術研究センター」に附置している色にフォーカスしたギャラリーです。当ギャラリーで、小・中学生を対象に親子で参加できる企画展として「光が伝わる、光で伝える企画展」を開催しました。光が伝わる際の性質や、応用技術である「リフレクション」「フォトルミネセンス」「コミュニケーション」の3点に関する原理を、作品を通して体験型で学ぶという内容です。コロナ禍により「親子でわくわくKOUGEIランド」がオンラインになったことを受けて、オフラインで子供向けにできることはないかと考え、本企画展を予約制にして開催することになりました。

カラボギャラリーで「光」について学ぶ子供たち

松尾:「弥生地区ワークショップ」は、中野キャンパスがある弥生地区の子供会から子供向けのワークショップを開催してほしいと依頼があり、2018年から実施しているイベントです。2022年度は、写真学科とアニメーション学科の協力を得て開催しました。写真学科は、「ピンホール写真を作ろう!」という企画です。「ピンホールカメラ」にはレンズがありませんが、レンズの代わりに針で開けたような小さな穴から差し込む光によって作り出される像を「写真」にします。ゆっくり時間をかけてつくるピンホール写真で「手作り写真」の世界を体験できる企画になっています。アニメーション学科は、「われらアニメ探索隊!人間コマ撮りアニメーションを体験しよう!」という企画です。アニメーションの基本的な原理を学んだ後、iPadを使って様々な人間の動きを繰り返し撮影し、“人間コマ撮り”ピクレーション(コマ送りのアニメーション)を体験する企画となっています。いずれの取組も、普段見ているものの裏側を知ることで、物事の見え方が変わり、より楽しむことができるようになるのではと思っています。

弥生地区ワークショップ(中野区)を楽しむ子供たち

日々学びに向き合っている大学だからこその良さを活かす

―実際に子供たち自身が取り組んでみるという体験型の学びを提供されていることがよくわかりました。お話しいただいた取組について、アピールポイントはどのような点でしょうか。

松尾:大学では日々学びに向き合っているということもあり、学ぶということの楽しさをうまくワークショップに落とし込んで伝えられている点がアピールポイントではないかと思っております。若い世代の理科離れを耳にしますが、「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」では、工学部を中心に理科の面白さをワークショップで伝えられるよう試みています。芸術学部では、絵を描くことや写真を撮ることなどの楽しさについて伝えたいと考えて企画しています。多様な学部・学科を持っており、多様な学びを提供できることが本学の強みであり、その良さを活かすことができていると考えています。

―具体的にどんな取組を実施していくか検討する中で、大切にしていたこと、重視したことは何かありますか。

松尾:取組の主役はもちろん子供たちですので、子供の目線に立って「何が面白いと感じるのか」、「どうやったら学びが深まるのか」を考え、ワークショップのテーマや内容を検討することを大切にしています。ワークショップの講師は現役の大学教員で、普段は大学生を相手に講義しているものの、小学生向けの講義は稀です。小学生の目線で、どのように伝えたらわかりやすいか、面白いか等をよく検討してもらい、実践してもらっています。

東京工芸大学の教員が子供向けのワークショップを実施している様子

―子供のうちから大学教員の講義を受けることができるのは、本当に貴重な経験ですね!取組を始めるまで、もしくは始めてから、どんなハードルや苦労にぶつかりましたか。

松尾:何年か継続するうちに、自然と取組自体が周知されて応募者が増えていくのは大変嬉しいことでしたが、ワークショップを楽しんでもらうには定員が必要なので、ご応募いただいた全員を受け入れることができなくなったことは残念でしたね。ただ、コロナをきっかけにオンライン開催となってからは、参加できないということはなくなりました。一方で、直接子供の声が聞けないという新たな課題も感じており、今後うまく解決していきたいと考えています。

子供たちの楽しむ姿が、先生方のやりがいにつながる

―実際に取組に参加した子供から、どのような感想や意見が寄せられていますか。

松尾:参加した子供たちから最も多くいただくのは、「身近なものを使って、こんなことができるんだ!」「すごく楽しかった!」という感想です。普段生活で使っているものを通して、これまでになかった新たな発見につながる楽しさを感じてもらえていると思っています。
子供たちの保護者からは、「夏休みの自由研究を楽しんでやってもらえて、きちんと形になるので助かりました」というお声や、「家ではなかなかできないことで、親子で一緒に楽しめました」といった感想もいただいています。

―子供たちからも、保護者からも、嬉しい感想が寄せられているのですね!取組を実施する前と後で、本取組に対する学内の反応に変化はありましたか。

松尾:取組を開始した当初は、先生たちも準備が大変なため乗り気ではない部分があったかもしれませんが、取組をやっていくうちに、自分たちが企画・実施したワークショップで子供たちが楽しそうにしている姿を見ることで、やってよかったと伝えてくださる先生もいました。子供のための取組が、先生方にとってのやりがいにもつながっているように感じています。

「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」のプロペラをつかったワークショップ

コロナ禍で気づいたオンライン開催の良さも取り入れ、改善していく

―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いできますか。

松尾:「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」はコロナ前にやっていたオフライン開催の形が一番良かったと考えており、まずはコロナ前の方法を継続していくことを目標にしています。一方で、やむを得ず始めたオンライン開催で、本学の近隣に住んでいない方でも様々な体験を楽しむことができるといったオンラインならではの良さも実感できました、今後はオフラインとオンラインをハイブリッドする形で検討し、それぞれの良さを踏まえ、講座によって開催形式を使い分けて展開していきたいと考えています。

―現在実施中の取組のほかに、新たに実施を企画している取組等があれば教えていただけますでしょうか。

松尾:2023年1月6日に、芸術学部ゲーム学科の3年生が開発したゲームの試遊会「コウゲイゲ-ムショウ」を中野キャンパスで開催しました。近隣地域の回覧板や掲示板に載せてもらったり、小学校で告知してもらったりしました。子供だけでなく大人も含め、地域住民の皆様も一緒になって楽しめる内容になっていて、全8チームの学生たちがそれぞれ独自に制作したボードゲームやVRを用いたゲーム、通信機能を使ったゲーム等、本格的なゲームを用意しました。

中野キャンパスで開催したコウゲイゲームショウの様子

学ぶことは、遊ぶことに負けないくらい面白い

―最後に、子供たちや、他の企業・団体のみなさまへのメッセージをお願いいたします。

松尾:子供たちには、「学ぶことをきらいにならないでほしい」と思っています。本当は、学ぶことは遊ぶことに負けないくらい楽しいことです。私たち東京工芸大学も、みなさんの学びを楽しくする場を工夫しながら提供していきますので、子供向けのイベントが開催される際には、ぜひぜひご参加ください!
本学は2023年10月に創立100周年を迎えます。地域に根付いた大学として、ギャラリーや劇場型の教室を活かし、人材育成・研究拠点の場である充実した環境で未来の子供たちの笑顔につながる取組を実施していきたいと考えています。もし本学と連携できそうな企業・団体様がいらっしゃいましたら、ご一緒できればと思いますので、ぜひお声がけください。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

子供たち自身が手や体を動かしてやってみるという体験型の学びを提供し、子供たちが学ぶ楽しさを知ることに貢献する東京工芸大学の取組は、専門の学芸を深く教授・研究する高等教育機関としての特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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