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東京都

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  • 誰一人取り残されないようサポート

掲載日:2022年11月30日

株式会社タカラトミー

おもちゃ×SDGsの教育を通じて、子供たちと共に持続可能な社会を目指す

株式会社タカラトミーでは、自社のおもちゃを用いて、子供たちにSDGsを楽しく・わかりやすく伝える取組を行っています。自社製品と教育コンテンツを組み合わせ、継続的な遊び・学びに繋げる仕掛づくりについて、社会活動推進課の原田由美子さんにお話を伺いました。

創業から受け継がれる「子どもたちの笑顔をつくる」という使命

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。

社会活動推進課 原田由美子さん(以下:原田):タカラトミーグループでは、事業を通じてSDGsに関する課題に取り組んでおります。持続可能な社会をつくるためには、次世代を担う子供たちにSDGsを楽しく・わかりやすく伝えることが重要ではないかと考え、2017年から「みんなでつくる人生ゲームプロジェクト」を実施しています。この「人生ゲーム」の目的は、子供たちが自分で人生ゲームのマス目を考えること、作ることを通じて、自分たちが暮らしている地域の良さを再発見することです。また、当社では以前より、本社がある葛飾区の小学校を中心に、おもちゃを使った社会課題の解決をテーマとした出張授業を実施しておりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、学校では休校や様々な行事が中止になるなどしていたことから、子供たちの思い出の手助けができないかと考えたことが、リモート授業の取組を始めたきっかけになっています。

―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。

原田:現在、二つの授業を行っています。一つは、「人生ゲーム」を使ってSDGsを学ぶ「みんなでつくるSDGs人生ゲーム」です。この授業を通じて、自分たちが暮らしている地域社会をより良くしていくために「これから自分が何に取り組んでいくことが必要なのか」を主体的に考え、実際に行動に移してもらうことで、子供たちにプラスの変化を感じてもらうことがテーマとなっています。

SDGs人生ゲームを楽しんでいる様子

原田:もう一つは、「おもちゃで学ぶ!SDGsナゾトキ教室」です。今起こっている環境問題についてタカラトミーのエコ活動を題材に、クイズ形式で学んでいただきます。クイズを楽しみながら環境問題を自分事として捉え、地域社会や地球環境を大切にする心を育み、行動を促すことを目的としています。
どちらの取組も、現在はオンラインで実施しております。

―おもちゃメーカーならではのノウハウを活かした取組かと思いますが、どのような経緯で、また何から着想を得て実施することになったのでしょうか。

原田:タカラトミーの創業者である富山栄市郎が、おもちゃづくりをしようと志してから約100年間、「子どもたちの笑顔をつくる」ことに注力してきました。これからもおもちゃを通して子供たちの笑顔をつくるために、おもちゃの原料となる有限な資源を有効に活用する、誰もがお互いに個性を尊重し支えあうことのできる「共生社会」の実現等、持続可能な社会をつくっていきたいと考えています。また、その大切さを子供たち自身にも同じように感じてもらいたいという想いから、これらの取組を実施することになりました。

―取組としての特徴やアピールポイントはどのような点にありますか。その中で、貴社ならではの強みが活きた部分はありますか。

原田:子供たちが身近に接するおもちゃを通じてSDGsを学ぶことで、「SDGsを身近に感じ、自分たちにもできることがあるんだ」と思ってもらい、行動に繋げる良い機会になっていると考えています。
「みんなでつくるSDGs人生ゲーム」には、私たちの提供する授業だけでは「人生ゲーム」が完成しないという特徴があります。では、いつ完成するのかと言いますと、授業実施後に先生と子供たちで「このマスのイベントは何ドルにするのか」、「どうしたらもっとゲームを面白くできるのか」といった議論を重ねて、完成を目指します。自分たちで考えながら完成を目指すプログラムであるため、一回きりで終わってしまうのではなく、継続的に遊び・学びにつなげることが期待できると考えています。
また、オンラインであっても、一人ひとりの想いに寄り添った授業がしたいと考え、「リアクションカラーカード」を作成・活用しているのも特徴の一つです。コロナ禍でマスクが外せず、表情や言葉で表現することが難しかったり、子供の性格によって積極的に発言することが得意でなかったとしても、このリアクションカラーカードを用いることで、簡単に自分の感情を表現し、人に伝えることができます。このように、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」ことを意識した授業を提供することを心掛けています。

リアクションカードを掲げる様子

子供たちの行動変容を促す

―具体的にどんな取組を実施していくか検討する中で、大切にしていたこと、重視したことは何かありますか。

原田:①オンラインでありながら、オンラインであると感じさせない楽しい授業であること、②子供たちと常にコミュニケーションをとる授業であること、③SDGsが目指す「誰一人取り残さない」授業であること、以上の3点を重視しています。
私たちは、子供たちに取組を提供するということに重きを置くのではなく、取組を通じて子供たちの行動変容につなげることまでを目的としています。行動変容につなげるためには、受け身で学ぶのではなく、子供たちが実際に自分自身で考え、主体的に何かを作っていく過程を踏むことこそが重要であると考えています。

学校の先生方と一緒になって授業を改善し、つくり上げてきた

―取組を始めるまで、もしくは始めてから、どんなハードルや苦労にぶつかりましたか。それらにぶつかった際、どのようにして乗り越えられたのでしょうか。

原田:当初はタカラトミー側も学校側も、オンライン授業を実施した経験がなかったため、「どうやればいいのか?」という状態でした。また、授業当日は私たち講師が現地にいないため、不具合が生じた際は学校の先生方に対応いただく必要があり、心苦しさもありました。オンライン授業で不具合が発生した際には、一つ一つトラブルの原因を把握して、次回それが起こらないよう先生方と議論し、常に改善を繰り返すことで克服してきました。

参加者の声を改善に繋げることで、取組を日々アップデート

―実際に取組に参加した子供や先生方から、どのような感想や意見が寄せられておりますか。

原田:プラスの評価としては、子供だけでなく、先生までも楽しめるカリキュラムであること、そしてリアクションカラーカードといった補助教材の質の高さについて評価いただいています。他にも、環境に配慮した教材に実際に触れることができる点や、おもちゃをつくっている企業がどんな企業活動を行っているのかという裏側を知ることができて非常に参考になるといった意見が寄せられています。「人生ゲーム」の取組では、実施校の地域の特徴や学校行事を例に挙げてマス目の説明を行っており、マス目づくりを通して地域の良さや課題を学ぶことができるという点に魅力を感じていただいています。
マイナス評価としては、「リアクションカードは、使い終わるとごみになってしまう」というものがございました。しかし、現在では、そのフィードバックを反映して、リアクションカラーカードの裏面に教材として使える情報を載せ、その場限りの使用ではなく継続的に使ってもらえるように改善しました。子供たちの鋭い目線に、私たちも学びをもらっています。その他のマイナスのコメントにおいても、出来る限り改善につなげるようにしています。

リアクションカードの裏表紙

子供に対する遊び・学びは、社員にとっての遊び・学びでもある

―取組を実施する前と後で、本取組に対する社内の反応に変化はありましたか。また、取組を実施する中で得られた着想や意見が本業に活きた事例があれば、教えていただけますでしょうか。

原田:現在は、新人研修の一環としてオンライン授業に参加してもらっています。これらに参加することは新入社員たちにとって、自分たちの仕事が子供たちに与える影響力や、責任の大きさに気づくきっかけになっています。

誰一人取り残さない、共生社会の実現を目指して

―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。

原田:現在の授業は一校一校を対象にしていますが、今後は、複数の学校が一堂に会して実施するような合同授業にも挑戦したいと考えています。さまざまな地域の同年代の子供たちが、さまざまな考え方や価値観に触れることで、新たな学びに繋げられるのではないかと期待しています。さらには、実施校の地元産業とコラボし、人生ゲームのマス目づくりの要素に地元産業の特色を織り込んだ授業の企画も進めています。

―現在実施中の取組の他に、新たに実施を企画している取組等があれば教えていただけますでしょうか。(無償のもの、実費相当のもの)

原田:共生社会の実現に向けたオンライン授業を企画しています。具体的には、耳や目の不自由な子供も一緒に楽しく遊べる共遊玩具を使い、お互いの個性を尊重する大切さを学ぶことのできる授業を考えています。そうした遊びを通して、共通の喜びを見つけることや、相手の立場になって物事を捉える力を育むことにつなげたいです。
他には、自分で工作したダンボールロボットをプログラミングで操作するembotを使用した授業を企画・実施しています。学校現場から、プログラミング教育を子供たちにもわかりやすく実施する方法を模索しているというお話を伺っているため、お力添えになればと考え、取り組んでおります。現在、本社が所在する葛飾区のある小学校にて、小学5年生に対して授業を展開しているところで、今後さらに実施範囲を広げていきたいです。

共遊玩具、embot

子供たちの笑顔あふれる未来を、子供たち、企業・団体のみなさまと共に創りたい

―最後に、子供たちや、ほかの企業・団体のみなさまへのメッセージをお願いいたします。

原田:子供たちには、「世界中の子どもたちと友達になる」をサステナビリティビジョンに掲げ活動をしている背景を踏まえ、より多くの子供たちにこの活動に参加してもらい、みなさんの声を聞かせてほしいと思っております。そして、なにより、「笑顔あふれる未来を一緒に創っていきましょう」とお伝えしたいです。

子供たちが遊びを通してSDGsを主体的に学ぶ場、「遊びが学びになる」場を提供し、さらには共生社会の実現に貢献することを試みるタカラトミーの取組は、子供の健やかな成長に寄与するおもちゃメーカーとしての特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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