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東京都

  • 育業促進

掲載日:2022年11月30日

株式会社フューチャーフロンティアーズ

男性の育業取得率3年連続100%を達成

株式会社フューチャーフロンティアーズは「誰もが長く働ける環境づくり」を推進し、男性が当たり前に育休を取れる職場を実現してきました。東京都の発表した「育業」にもいち早く寄り添い、男性の育業取得率3年連続100%を達成しています。創業以来、職員との対話を重視し、人を組織にあてはめるのではなく、組織を人に応じて変化させてきたという同社。そうしてできた様々な取組について、代表取締役 CEO 橋本恵理さんと取締役 CKO 松尾隆浩さんにインタビューしました。

(写真左から)取締役CKO 松尾 隆浩さん、代表取締役CEO 橋本 恵理さん

人材難の保育業界だからこそ、育業を当たり前にすることで、人が集まる会社に

―人材不足が叫ばれている保育業界において、これほどまでに育業を推進されるようになった経緯を教えてください。

CEO 橋本恵理さん(以下、橋本):育児そのものが当社の事業ですから、当社の職員が育業できる環境を整えられなくて、人様のお子さまをお預かりできません。自然な流れとして創業以来、育業することが当たり前である風土づくりに努めています。
また、採用難の保育業界にあって、当社で働いてくれている職員に対して会社としてできることから報いたいという意識もあります。育児と仕事の両立を乗り越えられない職員が多くいた時代もあり、なんとかサポートしていきたいという想いから育業の推進に一層力を入れてきました。

―創業以降、従業員の方々の男女比はどの程度だったのでしょうか。

橋本:保育という業界柄、女性比率の多い職種ですが、当社は創業当初から「保育園にしては男性が多いですね」と保護者の皆様におっしゃっていただくことがよくあります。そもそも、会社として女性も男性も平等に捉えるようにしてきました。機会、処遇、すべて平等。そのせいもあってか、こうして男女を特別に意識しなかったことが結果として男性育業取得率の3年連続100%達成につながったのかもしれません。会社としてはみんな一緒。女性が取るのと同じように、男性にも育業してほしい、それだけのことなんです。

―多くの企業では、男女間で育業の取得率に大きな乖離があります。そういった企業において、どうしたらその差を埋められるのでしょうか。

橋本:男性と女性、それぞれを見る会社の目線がまったくフラットであれば、働いている側も同じような雰囲気になるのではないでしょうか。

―育業を促すため、社長自ら従業員の方一人ひとりと面談をしていらっしゃるそうですが、どんなことを話されているのでしょうか。

橋本:年に1度、職員と私とで面談を行っているのは、一人ひとりのバックグラウンドまで知ることができるためです。面談では、育業に限らずいろんな相談を受けますよ。当社の福利厚生のプログラムの多くが、この面談から生まれています。面談で「この人このままだと続けられないかもしれない」と思ったら、会社の制度を変えてみようと。時短でも正職員と同じ扱いの短時間職員制度、特定の業務を限定的な時間で行ってもらう職務限定非正規職員制度など、たくさんの制度を柔軟につくってきました。面談は、職員がやりがいを感じて働き続けるための要望を聞く機会になっています。
いまの従業員規模で年に1度であれば、時間を惜しまず相談に乗ることができます。ほかにも、年に2度ある役員と職員との面談も有意義ですが、何しろ直接聞くのが一番ですよね。ストレートな要望に応えたいと思っています。

育業の代替要員確保は?育業を見越して予め多めに採用しておく

―そうして育業の取得ができる風土を確立しても、実際に育業する人がいると人手が抜けてしまいます。代替要員はどのように確保しているのでしょうか。

橋本:職員一人ひとりが望む働き方を実現するためには、まず採用を多めにしておくことと、そして職場の理解の両軸が大事です。

―●採用難のなかで、多めに採用できているのでしょうか?

橋本:多めに採用するといっても言うは易しで、実際は人員にそれほど余裕を確保しきれていません。ですから、面談でのヒアリング結果などをもとにして人事計画を立てて、業務の引継ぎや代替要員の補填を計画的に行っていかなければいけません。実際、本部から指示をするまでもなく、ある施設長が自らの判断でそうした計画的な人事を采配してくれたことがありました。その施設の男性職員の奥さんが第二子を妊娠したことが分かると、「彼は第一子で育業しているから、今度もきっと取得するだろう」と考えて、出産予定日から育業までを見通して、役割を差配してくれました。それまで特定の年齢クラスの担任を務めていた彼を、複数の年齢クラスを包括的にサポートするフリーポジションに配置したのです。学校同様、保育園は1年間単位で同じ担任の先生、同じ教室でプログラムを組みますから、年度の途中から育業で抜けても大きな影響が出ないよう、施設長自ら自発的に人事配分してくれたことは、とてもありがたいことでした。

―それでは、育業など、個々の職員の働き方に対する職場の理解はどのように促していっているのでしょうか。

橋本:職場の理解のためには、育業することで身につくスキルがたくさんあることを折にふれて話したり、経験者の体験談を発表してもらったりと、いろんな方法で啓発しています。その際に、そういう会社でありたいと私自身が望んでいると伝えるようにもしています。
育業中だけではなく、復帰後も職場の理解が必要です。例えば、育業が明けるとたいていの職員は保育園にお子さんを預けて出勤します。入園すると子どもはすぐ風邪をもらってしまうのですが、園から子どもの体調が悪いと連絡がきたら「早く帰っていいからね」と言ってあげられる理解ある職場でないといけません。そのためには、「お互い様だから」と常々言っています。育業に限らず、職員自身のケガや病気も含めて、職員はそれぞれ持ちつ持たれつ協力し合うことが当たり前なのだという雰囲気づくりを意識しています。

育業の前中後、会社との切れ目のないコミュニケーションが円滑な復帰につながる

―育業中の支援もされているそうですが、どんなことをされているのでしょうか。

CKO 松尾隆浩さん(以下、松尾):育業の対象者に対して、シートを用いて面談を行っています。育業の希望通知を人事部で受けたら、ご家庭の状況などについてまずはお話しを伺う面談をします。そして育業期間に入る2か月前に、もう一度面談をして、取得期間や復帰に向けた具体的なプランをシートに一緒にまとめます。プランで具体的にいつ何をするのかを把握しておくことでより有意義な育業になるでしょうし、復帰に向けた計画を会社と共有すれば、職場のことについては安心して育業に専念できるのではないでしょうか。
他にも、育業中の支援も行っています。毎月、保護者様にお渡ししている園の便りや、職員会議の議事録を共有して、職場の現状を伝えるようにしています。職場とのつながりを完全に切ってしまうと温度差が生じてしまう一方で、育業に専念していただくうえでは頻繁な連絡は避けるべき。そのバランスを考えると、1か月ごとがちょうどいい間隔だと思っています。

―職員の方が育業から復帰する際に気を使っていらっしゃることはございますか。

松尾:育業のプラン設計から地続きに、復帰が近づくと「もうすぐ復帰ですが、予定通りのタイミングで復帰できそうですか」と確認の連絡を取ります。また、復帰から1か月後に面談をして、育児と仕事の両立ができているか、何か問題が起きていないかを確認する機会を設けています。育業の心理的ハードルは男性の方が高いといわれていますが、復帰のハードルは女性のほうが高いように思います。実際に、育児への不安やストレスを抱えたまま復帰される女性の職員もいます。その際、同じ会社の仲間であり、保育事業者でもある私たちは相談相手として適任だと自負しています。職場への復帰が、育児のケアにもつながるのだと職員に受け止めてもらえたら嬉しいです。

橋本:育業プランを職場でも共有しているので、職場の方でも復帰に向けてある程度の準備ができるので、大きな混乱なく復帰できていると感じています。それでも忘れてはいけないのが、育児をするようになった職員は休みがちになるという前提です。先ほども申し上げたとおりで、そういった持ちつ持たれつで支え合おうという理解を職場全体が持てるように、日ごろの会議などでのコミュニケーションに気をつけています。
また、当社で提供している在宅保育サービスでは病児もあずかれるので、必要に応じて使ってくださいと伝えています。さらに、政府から発行されるクーポン券を利用いただける事業者登録も行っており、出来るだけ家計への負担が少なくなる形で使っていただいています。

「育業」はあなたにしかできない、大切なしごと。唯一無二の研修

―「育業」という愛称を聞いて、どのような印象を受けたでしょうか。

橋本:「育業」という愛称は、まさに我々の考えていることを体現していると思います。育業してもらうことは、会社にとっては研修のようなものです。何しろ保育園をやっているものですから、新生児からの発達の経過が学べるし、それを見守る親御さんの気持ちも実感できるし、親の育業が明ける頃にあずけられる子どもの気持ちにまで思いを馳せるでしょう。スキルは上がるし、知識も増える。こんなに有意義な研修は他にありませんよ。
しかも、育業を経験した職員は、育児に限らず介護なども含めて、職場以外の何かに専念しなければいけない職員への理解を職場で促してくれますから。

これからは育業できる企業が信頼され、選ばれる

―育業応援企業に参画されて、何か変化はございましたでしょうか。

橋本:例えば、採用面接で育業応援企業であり、育業の取得を推進しているというと、とてもいい反応がかえってきます。会社として信頼してくださる印象です。

松尾:面接の際にライフワークバランスの話しの流れで育業の応援企業であることを伝えると、これから結婚や出産を控えている世代の受験者さんからよく、会社の考え方に対して共感する声をいただきますね。

―保育事業者として、「育業」で変わる社会に対してのメッセージをお願いします。

松尾:育業は、親であるあなたにしかできません。支援はできても、あなた以外の他の誰にも代わることはできない「大切なしごと」。ですから、育業と職場を天秤にかけなければならないならば、職場は誰かに任せて、ぜひ育業に専念してほしいと思います。

橋本:年に一度、職員一同で集まるのですが、その際に「仕事は誰かが代わることができるけど、家族はあなたがオンリーワン。代わることができないから、あなたが必要なんです」と必ず伝えています。育業の対象期間は、子どもの生涯で最も影響が強い時期です。そんな時期に、我が子について真剣に考える経験は、職場での仕事にも大きく活きてきます。
仕事と家族で迷ったら、家族を優先すべきです。そういうふうに考えないと仕事なんて続けられないし、私自身も実際にそうしてきました。

“育業”に対する思いを頂きました。

株式会社フューチャ-フロンティアーズでは、誰もが家族や生活を優先しながら続けられる職場づくりによって、保育の最前線から「育業」の実践に邁進しています。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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