掲載日:2023年1月25日
公益財団法人日本環境協会
環境保全活動を通して、子供たちの自然を大切に思う心と自発的に考え行動する力を育む
公益財団法人日本環境協会では、環境について自発的に活動する子供たちをサポートする「こどもエコクラブ活動」の取組を行っています。子供たちの活動成果を壁新聞で発表する「全国エコ活コンクール」や、企業・団体とのコラボレーションイベントなどの取組について、公益財団法人日本環境協会 教育事業部の東尚子さんにお話を伺いました。
家族や学校など自由な単位でクラブを創設可能。子供たちの自発的な活動を促す
―現在実施しているこどもエコクラブの取組はどのような内容でしょうか。
教育事業部 東尚子さん(以下、東):こどもエコクラブは、子供たちに様々なエコ体験を通じて、「身近な自然を大切に思う心」と「問題解決のために自ら考え行動する力」を育んでもらうことを目的とした事業です。3才から高校生までを対象に、家族、学校、保育園、学童など自由な単位でクラブを創設し、そこにサポーターの大人が加わり、身近な地域や暮らしの中でエコ活動を行っています。地域の交流会などでは活動内容の発表も行っています。
クラブの創設は登録申請をするだけですが、1クラブに1人以上の大人がサポーターとして参加し、子供の安全の確保や、スケジュール調整、子供たちの相談役を担ってもらいます。私たち全国事務局スタッフは、サポーターの方々と連絡を取り合い、活動のサポートや情報交換を行っています。
―具体的なイベント、コンテンツなどについてもお伺いできますでしょうか。
東:代表的な企画としては、毎年1回行っている「全国エコ活コンクール」があります。全国のこどもエコクラブから、日頃の活動成果をまとめた壁新聞・絵日記を募集し、作品をもとに、頑張って活動しているクラブを選出するコンクールです。各都道府県で選ばれたクラブは、その後行われる全国フェスティバルに参加していただきます。全国フェスティバルは、企業・団体が紹介する最新の環境保全技術や環境問題について学んだり、参加クラブ同士が活動を発表したりして交流を深めるイベントとなっています。
他には、企業とのコラボレーション企画も行っており、最近では「こくみん共済」様と連携し、全国一斉活動「おうちでBosai×Eco Camp」というイベントを実施しました。
こちらは、台風や洪水などの災害状況下での生活を想定し、電気やガス、水道を使わずに生活してみるなどライフラインが止まったらどんな風になるのかを体験し、考えることのできるプログラムとなっています。これらの災害は地球温暖化の影響による異常気象が原因とも言われているため、普段の生活から省エネを意識することの大切さ、また何気なく使っているライフラインの重要性などに子供たちに気付いてもらうことを目的に行いました。
―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。
東:こどもエコクラブは、1995年に発足した環境省の事業がベースとなっており、2011年より民間に移管されて日本環境協会の自主事業となり、現在に至ります。
元々環境省の事業であったことから、各都道府県と市区町村の環境部局とのネットワークがあり、自治体に地域事務局をお願いしています。現在でも全都道府県含め全国約550自治体の地域事務局にご協力いただいています。
取組の始まりは国の事業ですが、現在も「子どもたちに、エコ体験を通じ自然を思う心、自ら考え行動する力を育んでほしい」という思いは変わらず、私たち全国事務局と地域事務局、そしてその地域のクラブのサポーターの方々が連携しながら子供たちを応援しています。
子供たちの自主性を尊重し、教えるのではなく寄り添う形でサポート
―取組としての特長やアピールポイントはどのような点にありますか。
東:こどもエコクラブの特長は、1回限りの活動ではなく、継続・反復することで活動内容をステップアップできる点にあります。何かの環境問題について一度調べて発表したり、環境イベントに参加したりして終わり、という形ではありません。継続的にその問題に取り組むことで、子供たちの自ら考える力を高め、知識を増やすだけでなく課題発見・解決能力が身に付いていきます。実際に、「全国エコ活コンクール」で壁新聞を発表してくれたクラブが、次の年にさらに内容をブラッシュアップして発表してくれることが多々あります。また、高学年のメンバーが頑張る姿を見ている低学年のメンバーが次のリーダーとして育っていくことも大きな特長です。
「全国エコ活コンクール」に関しても、環境に関係していればどんな内容でも応募可能となっているため、様々な年齢層・ジャンル・切り口の壁新聞が集まります。これも、本事業だからこその特長だと思います。
また、公益財団法人の立場として、特定のジャンルや業界に偏ることなく、様々な企業・団体とフラットに接することができ、幅広い連携を実現できることが強みだと考えています。
―公益財団法人としての特性を活かしたステークホルダーとの連携が、現在の幅広い取組の源泉になっているのですね!具体的にどんな取組を実施していくか検討する中で、大切にしていたこと、重視したことは何かありますか。
東:できる限り子供たちの自主性を尊重し、興味や関心に応じた活動支援を行うことを大切にしています。
私たち事務局やサポーターの大人から「こんな取組をした方がいいよ」と押し付けるのではなく、あくまで子供たちが興味を持ってくれたものに関して、情報やヒントを出すような形でサポートしていくよう心掛けています。
そのため、現場で実際に子供たちをサポートするクラブサポーターの大人の方にも、「子供たちに学校の授業のように教えるのではなく、自分たちで話し合って考える力を育めるように、寄り添うことを大切にしてほしい」とお願いしています。私たち事務局スタッフは、どのクラブもそうした寄り添いができるように、サポーターのみなさんに相談事を伺ったり、他のクラブの事例から参考になるケースをご紹介したりしています。
環境活動には優劣がないからこそ、作品選出は悩みどころ
―取組を始めるまで、もしくは始めてから、どんなハードルや苦労にぶつかりましたか。それらにぶつかった際、どのようにして乗り越えられたのでしょうか。
東:先ほど「全国エコ活コンクール」について、様々な年齢層・ジャンル・切り口の壁新聞が集まることが特長であるとお話ししましたが、それゆえに優秀作品の選出が非常に難しいという側面があります。環境活動はスポーツのように優劣がつくものではありませんし、子供たちが一生懸命自分たちで考え、制作した壁新聞はどれもすべて素晴らしい作品です。その中から優秀作品を選出する基準については、毎回非常に頭を悩ませています。
完成度はどうしても中高生など年齢層の高いクラブに偏りますが、一方で低年齢層のクラブの頑張りや一生懸命さを評価してあげたい気持ちもあります。
そのため、活動分野や完成度ではなく、「子供たち自身で考えているか」や「研究結果だけではなく、結果が出た上で何を感じたか、次はどうしたいかなどの展望があるか」といった部分に重きを置いて選出するようにしています。
子供たちの成長を糧に、持続可能な社会をつくる人材育成に尽力する
―実際に取組に参加した子供から、どのような感想や意見が寄せられていますか。
東:低年齢層の子供たちからは「楽しかった」などの声が多いのですが、中高生以上になると、より問題意識に根差した感想や意見が多くなっています。例えば、こどもエコクラブを卒業したユース世代からは「水をボトルで持ち歩くなど、知らない間に普段の生活から環境意識が身に付きました」、「こどもエコクラブで学んだことをきっかけに、保全生態学、環境保全に関する勉強ができる大学に進学しました」、「深刻な環境問題などに対して、自分には関係ないという気持ちでいるのではなく、同じ地球に生きる人間として問題意識を持ち続けることが大切だと気付くことができました。そうすることで、もしかしたら今後私たちの手で、様々な環境問題を解決に導けるのではないかと思います」といった意見を頂いています。
こうした子供たちの声を頂けることを、私たちは何より嬉しく感じており、こどもエコクラブの卒業生たちが、環境負荷の少ない持続可能な社会をつくる人材へと成長してくれることが一番の喜びです。
ジャンルや地域を問わず連携できる特徴を活かし、取組を拡大していきたい
―現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。
東:基本的にはこれまでの活動を踏襲し、今後も子供たちに環境保全活動に興味を持ってもらい活動を継続することで、自分たちで考え、行動する力を育めるよう事業を継続していきたいと考えています。
こどもエコクラブ事業は誰でも参加することができ、クラブ創設も容易であるため、子供たちの自主的な活動としてスタートしやすいというメリットがあります。さらに、全国に地域事務局があり、日本全国どこでも活動できますし、環境という大きな切り口なので、連携できる企業・団体も幅広くなっています。そうした長所を活かし、こどもエコクラブ事業が学校や市民グループ、民間企業・団体などをつなぐ役割を担い、持続可能な地域社会をつくることに貢献できればと思います。
―現在実施中の取組のほかに、新たに実施を企画している取組等があれば教えていただけますでしょうか。
東:まだ具体的な企画はないのですが、「こくみん共済」様と連携した全国一斉活動「おうちでBosai×Eco Camp」のようなコラボレーション企画を、今後も様々な企業・団体と実施できればと考えています。
環境問題のトピックに関して言いますと、その時その時の重要な社会課題を取り上げたいため、今は脱炭素に関わる企画を検討中です。
ただ、何を実施する場合でも最も大切なのは、子供が自発的に興味をもち、楽しいと感じ、意欲が湧く内容であるかどうかです。そのため、コラボレーション企画にしても、トピックの提案にしても、「子供たちが楽しんで活動できるか」という点とのバランスを常に考えながら進めていきたいです。
「不思議だな」と感じ、考え、行動することが、環境意識を高め、持続可能な未来をつくる第一歩になる
―最後に、子供たちや、ほかの企業・団体の皆様へのメッセージをお願いいたします。
東:子供たちには、「なんでだろう?不思議だな、と感じてもらいたい。そして、それに関する調査や活動をどんどんやってみましょう。そう感じ、考え、行動することが、環境に対する意識を持ち、持続可能な未来をつくる第一歩になります。こどもエコクラブでは、子供たちのそうしたチャレンジを応援していますので是非参加してみてください」とお伝えしたいです。
企業・団体の皆様には、「環境活動をしている子供たちへのご支援や協働は、企業・団体におけるCSR活動やSDGsの取組の一環になります。興味・関心をお持ちの企業・団体様はぜひ気軽にお声掛けください。ともに未来を担う子供を育て、持続可能な社会づくりを目指していきましょう」とお伝えしたいです。
―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!
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