掲載日:2025年3月21日
三井不動産株式会社
誰もが自分らしさと最大限の力を発揮できる職場へ!
仕事とプライベートの両立支援で育業を後押し
グループロゴの「&マーク」に込められた「共生・共存・共創により新たな価値を創出する、そのための挑戦を続ける。」の理念のもと街づくりを行っている三井不動産株式会社。同社ではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進を重要な経営戦略のひとつと位置付けており、現在男性の育業推進にも注力しています。
育業推進のためどのような取組を行っているのか、同社でD&Iの推進を担う人事部D&I推進室主事の霧生 怜実(きりう さとみ)さん、人事部D&I推進室業務主任の浦田 友香(うらた ゆか)さん、2024年に育業を経験されたビルディング本部ワークスタイル推進部ワークスタイルデザイングループ主事の中井 雄太(なかい ゆうた)さんの3名にお伺いしてきました。

当事者の声を伝え、育業に対する認識のギャップを埋める。
―男性の育業推進に取り組み始めた背景を教えてください。
人事部D&I推進室主事 霧生怜実さん(以下、霧生):当社は、育児に関わる社員にとってより働きやすい職場環境の創出や文化の醸成を目指して、男性育業の推進を開始しました。現在では、社員一人ひとりが育児を含め様々なライフスタイルを尊重し合い最大限力を発揮できる職場環境を整備することで、重要な経営戦略のひとつであるD&Iの推進につながると考え、取り組んでいます。
育業しやすい環境の整備のため、2020年には配偶者が出産した社員の子育てへの積極的な参画・理解深化を通じて、職場全体の意識改革を図る目的で社内制度の「育児支援休暇制度」を導入しました。2022年10月の「産後パパ育休」施行に先んじて、同年4月に最大28日間の有給扱いとなる会社独自の「出生時育児休業」を創設。一人ひとりに合わせて柔軟に利用できる様々な制度が増えたことで2023年度には男性の育業取得率100%を達成しました。

―推進の課題点はあるのでしょうか?
霧生:育業する人の周囲が、男性の育業をどのように認識しているかが大きなポイントだと考えています。2023年度に全社員を対象に実施した仕事とプライベートの両立に関するアンケートでは、男性の約3割が「仕事とプライベートの両立に悩んでいる」ことがわかりました。ここで指す“プライベート”の中でも家事・育児の割合は多く、悩んでいる理由として「周囲の理解やフォローが得づらい」と感じていることも判明し、育業でも周囲への理解浸透が重要であると感じています。
―課題解決のために、どのような取組を行っているのでしょうか?
人事部D&I推進室業務主任 浦田友香さん(以下、浦田):取組の一環として2024年度から、これまで女性社員向けに実施していた「産育休復帰時研修」を、育業から復帰した男性社員とその上長向けにも対象を拡大しました。研修は育業復帰した本人とその上長を分けて行い、本人には「育業に関して周囲に言われて嬉しかった言葉/悲しかった言葉」をヒアリング。掛けられて嬉しかった言葉としては、子供の誕生を祝い前向きに育業へ送り出してくれる言葉のほか、「子供の急病などトラブル発生時は、家庭が第一と言ってくれた」「異動直後に妻の入院が重なり、子供の送迎など完全なワンオペとなったが、『無理せず自分がやり易いように進めて良い』と言ってくれた」などの意見が挙がりました。一方、言われて悲しかった言葉では、今の育業世代と異なる子育ての価値観からの発言などが挙がりました。上長にはそうした言葉を匿名化のうえフィードバックしています。
上長の世代と今の育業世代の間には価値観の違いがあり、上長の何気ない言葉を、本人がどのように受け止めているのか気付いてもらうことで、ギャップに配慮した育業しやすい職場環境を作っていければと考えています。

霧生:ヒアリングで印象的だったのは、育業した社員が上長から「後輩は先輩の背中を見て育つのだから、育業が当たり前の職場を作るためにも先輩の君が積極的に育業してほしい」と言われて嬉しかった、という意見ですね。上長の世代からそうした言葉が出てくるほど育業が浸透していると感じられて、私たちも嬉しくなりました。
ビルディング本部ワークスタイル推進部ワークスタイルデザイングループ主事 中井雄太さん(以下、中井):当社は仕事に誇りとやりがいを持って働いている社員が多いので、「今、この仕事から離れたくない」と育業しない人もいるかもしれません。そうした社員に育業する意義を真剣に考えてもらうためにも、霧生が紹介したように上長が直接伝えていくことの効果はあるかもしれないな、と感じています。

霧生:研修の他にも育業の当事者同士がつながる機会の創出のため、三井不動産グループ横断で「育児座談会」や「ワーキングファザー座談会」などのイベントも開催しています。育児座談会では、子供が小学校高学年になる社員から、現在子供はいないものの育児に興味がある社員まで、幅広い“育児”に関わる社員に参加してもらい、育児と仕事を両立させるノウハウなどを話し合っています。
ワーキングファザー座談会は2023年度から始まった比較的新しい取組で、男性の育業で課題になりやすい部分の解消方法などの情報交換をしています。自分の周囲には育業する人がいなくても、この会で接点を持ち「グループの中にも同じ立場の人がたくさんいるんだ」と知ってもらえればと考えています。
取引先も育業にエール!かけがえのない時間を過ごした28日間
―中井さんが育業されたのはいつ頃でしたか?
中井:2024年10月の中旬から11月中旬まで、28日間の育業でした。前の上長が「子育ては大事だぞ」と話してくれていたこともあり、妻が安定期に入った頃から現在の上長などに相談しながら育業に向けての準備を進めていきました。同僚たちも30歳前後の若い社員が多く、非常に協力的で引継ぎがスムーズに進みました。
また、仕事でお世話になっている取引先にも育業の連絡をするのですが、取引先の皆様から応援していただけたことも大変ありがたかったです。

―実際に育業してみていかがでしたか?
中井:うちは里帰り出産ではなかったので私と妻の2人で子供の面倒を見ていました。初めての育児だったので、すべてが新鮮で大変だけど楽しみながら取り組めたかなと思います。産まれてからの1ヶ月の成長を間近で感じられたことが嬉しかったですね。「基本的には全部やります」という感じで、子供のお風呂やおむつの交換から、買い物や洗濯、料理も3食作っていました。育業中に一番困ったのは料理のレパートリーですかね。
―育業を経験したことでご自身や周囲に変化はありましたか?
中井:復職後、若い世代の同僚からは育業中にしていたことを質問されたりしましたね。自分が育業するときのことをイメージしているのかもしれません。男性の育業が当たり前になってくれたらと思い、復職の直前に妻の協力を得て子供を会社に連れてきて上長や同僚に紹介していたので、すぐにその効果を感じられたような気がします。
男性も女性も、育業が当たり前の職場を目指して。

―今後の育業推進についての考えを教えてください。
霧生:当社では、人材を三井不動産グループのありたい姿を実現する重要なインフラと位置付けています。企業として育業を推進することで、これまで以上に全ての社員が自分らしさ・最大限の力を発揮できる職場になっていくと考えています。
浦田:男性社員の間でも育業が当たり前になれば、突発的な育児の対応への理解も深まってくれるのではないかと期待しています。子供を育てていると朝の登園前にぐずったり急な発熱で対応が必要になったりすることがありますが、上長が育児を経験していれば配慮もしやすいのではないかと思います。
これまでにも「今日は夕食を作るから早めに帰る」という上長や、スケジュール管理表で保護者会など育児関連の予定を入れている上長がいました。そうした上長の存在が、周囲も引け目なく育児の予定を前提にスケジュールを組みやすい雰囲気を作っていると感じます。
中井:私も育児のために朝や夜のスケジュールをコントロールする意識を持ち始めました。子供が朝の寝起きでぐずることが多いので、出社を少し遅らせても影響が出ないよう始業直後には打合せを入れません。今後子供が保育園に入園したら朝は私が送ることになるので、上長や同僚ともスケジュールを調整のうえ、打合せはなるべく10時以降に入れるようにしたいと考えています。こうしたことが社内全体で当たり前になってきている感覚があるので、もっと浸透していってほしいなと思います。
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