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東京都

  • 育業促進

掲載日:2025年1月16日

日販テクシード株式会社

男性育業推進で、誰もが働きやすい企業に変わる!
育業取得率は100%。分割取得や10ヶ月の育業など、社員の希望に応じた育業を可能にする業務の調整方法とは。

日販テクシード株式会社は、男性社員が多いIT業界の中で、女性社員の割合が4割と高いことが特徴です。このため、女性も働きやすい環境の整備に早くから取り組んできました。
その中で現在進めている取組のひとつが「男性社員の育業推進」。2022年に初めて育業する男性社員が誕生して以降、年々育業する人数が増加してきているといいます。

今回は同社 経営戦略本部本部長の牧野 玲さんと人事労務担当の飯田 みのりさんに、どのような狙いを持って育業を推進しているのか、どのようなポイントを押さえながら取組を進めているのか詳しくお伺いしました。

経営戦略本部の本部長・牧野 玲さん(写真左) 人事労務担当・飯田 みのりさん(写真右)

女性の働きづらさ解消を目指し、男性の育児参加を後押しするための育業推進

―男性の育業推進に注力したきっかけや背景を教えてください。

経営戦略本部長 牧野玲さん(以下、牧野):弊社は女性社員が多く所属しており、20代に限れば女性の割合が5割を超えます。そんな女性社員を含めた多くの社員一人ひとりが活躍できる環境を作るため、早くから短時間勤務やフレックス勤務など、柔軟な働き方を支援する制度を拡充してきました。
一方で「出産」というライフイベントには、女性だけが育業や短時間勤務を利用することで「子育て中の女性は時間の制約がある」というイメージがついて回ることも事実でした。そんなイメージを変えていくため、男性も育業して「育児と仕事の両立は男女関係ないもの」だと社員のみなさんに理解してもらいたいと思い、育業の推進に取り組みました。

人事労務担当 飯田みのりさん(以下、飯田):育業する人はこれまで女性が中心でしたが、育業推進の取組を機に男女関係なく育業するのが当たり前になってもらえればと思っています。
社員が育業するための準備として、育業当事者の上司同席のうえ面談を行います。社内で作成した「育児支援ガイドブック」を使用して育業制度の説明を行ったり、育業中の業務の調整方法をアドバイスしたりしています。

―ガイドブックにはどのようなことが記載されているのでしょうか?

飯田:給付金や社会保険料といった育業制度の事務的な部分から、女性だけでなく男性も「育児短時間勤務ができる」「子供の看護休暇が取得できる」など復職後の働き方の選択肢まで一通り書かれています。面談では、その中でも特に重要な部分について直接お伝えしています。
説明を受ける前は「育業すると無収入になる」「キャリアに影響が出る」などの心配をされる方もいらっしゃいますが、そうした不安を解消し、安心して育業に専念していただくことも私たちの役目だと思っています。

―これまでに何名の男性社員が育業しましたか?

牧野:2022年に3名、2023年は1名、2024年には4名が育業しています。
最初に育業された方には会社側から「育業しませんか」と声を掛け、1週間の育業を実現しました。2年目には1ヶ月以上育業する方も出てきて、取組開始当初は想定していなかった長期間の育業のニーズがあることに気づくことができました。

飯田:現在では育業のバリエーションも増えてきて、10ヶ月育業する方や、制度説明の中で分割取得が可能なことを知り2回に分けて育業する方もいます。ご家庭によって適切な育業ができるよう、柔軟な対応ができたらと思っています。

より良い育業制度を作るため、当事者に改善点をヒアリング

―かなり積極的に制度を利用されていると感じますが、制度運用で課題に直面することはありませんでしたか?

飯田:最初の男性社員は1週間育業しましたが、業務調整の時間が不十分だったためチームメンバーに想定以上の負担をかけてしまったことが反省点となりました。
そうした反省を活かし、現在では復帰後の育業当事者にアンケートを実施し、育業の感想を確認して制度の改善を続けています。

―アンケートではどのようなことを確認しているのでしょうか?

飯田:「育業した理由・きっかけ」から、「育業にあたって苦労したこと」「育業による良い影響・悪い影響」や「チームメンバー・ご家族からの反応」などをお聞きしています。

牧野:業務調整で負担のかかるチームのメンバーはもちろん、ご家族からの反応も「弊社の育業制度でどれだけ育児の負担を軽減できたか」を知る大切な要素です。十分な育業体制を整え、ご家族に「制度が充実した会社だね」と言ってもらえるよう、制度の拡充を図りたいと思っています。

―育業にはチームメンバーの協力も不可欠ですが、理解を得るために実施していることはありますか?

牧野:男性育業の導入にあたって、社内で男性育業の目的や実施する意義を伝える説明会を実施しました。育業は休暇ではありませんが、育業当事者の業務の引継ぎが必要になるため現実的には会社やチームのサポートがないと難しく、周囲の理解を得ることは不可欠です。
一回の説明だけで社内全体に浸透するほど簡単な話でもありませんので、管理職に対して定期的に育業の必要性を伝えていく必要があると感じています。

飯田:育業の制度説明の際に本人だけでなく上司にも同席してもらうのは、上司に育業への理解を深めてもらい業務調整をスムーズに行うためでもあります。
チームメンバーへの業務の引継ぎはすぐに完了する話ではありません。チーム全体のスケジュールを調整し引継ぎの時間を捻出するためにも、上司の協力が不可欠だと感じています。

経験者に聞いた、育業のエピソード

C&I統括本部・田中 佑典さん

―「育業する」と周りに伝えた際の反応はいかがでしたか?

C&I統括本部 田中佑典さん(以下、田中):「男性も育業して当たり前」という空気が社内にできていて、ハードルがとても低かったです。育業直前には、周囲から「育児を頑張って。楽しんで」、「復帰したときは赤ちゃんの話聞かせてね」など温かいメッセージをいただき、快く送り出してもらえたことも嬉しかったです。

―育業の期間はイメージしていた通りでしたか?

田中:私は分割での育業を希望していて、最初は「希望する育業を実現させることはできるのか」という不安もありました。ですが人事担当者のサポートもあって申請などの必要な準備を不足なく行うことができたため、安心して育業に臨むことができました。
家族にも「初めての育児で不安な中で、一緒に育児に専念してもらえて心強い」「こちらの希望したタイミング・期間で育業できて素敵な会社だね」と喜んでもらえたことがとても印象に残っています。

育業の推進で、笑顔あふれる強い企業に!

―男性育業を推進することで企業にどのような変化が訪れるのでしょうか?

牧野:大きく分けて3つの好影響につながっていくことを期待しています。
1つ目は、「多様な人財活躍の促進」です。男性も育業することで「『女性社員は』時間制限がある」という固定概念を取り払い、誰もが活躍できる企業になれると考えています。
2つ目は、「属人化業務の減少と生産性の向上」です。女性だけでなく男性も育業する可能性を会社全体で認識することは、すべての業務でバックアップできる体制を構築するために欠かせません。また、業務の共有が進み属人化が解消されれば、病気などで急なお休みが発生したときにもカバーできるため、生産性の向上につながることが期待されます。
3つ目は、「持続可能な組織運営の実現」です。「働きやすく誰もが活躍できる企業である」と社内外に知られるようになれば、優秀な人財の確保や定着にもつながり、時代の変化に負けない強い企業となって持続可能な経営が可能になるでしょう。

3つをまとめると「人と組織の持続的な成長の実現」と言えるかと思います。

―男性の育業が当たり前になれば、企業全体の成長へとつながっていくのですね。

牧野:もちろん簡単なことではないと思っています。
私たち経営戦略本部は短時間勤務の社員が多い部署でもあるため、まずは自分たちが「属人化解消の成功事例」になっていきたいです。経営戦略本部のバックアップ体制の工夫が、他部署の属人化解消のモデルケースになれるよう取組を続けていきます。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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