掲載日:2022年3月1日
株式会社バンダイ
子供にとって身近な“おもちゃ”を使い、興味深く学べる「出前授業」に
様々な「おもちゃ」でおなじみの企業・バンダイでは、子供たちが夢や将来を思い描くきっかけになるような取組として、学校での学習に即した「出前授業」プログラムを展開しています。子供たちにとって親近感のある「おもちゃ」を使った、好奇心を刺激し、主体性を尊重する楽しい授業は、子供たちにも先生方にも大変好評を得ています。
※イベントの写真は全てコロナ禍以前に撮影されたものです
おもちゃメーカーとして、子供たちの学びや夢を応援したい
―バンダイの出前授業は、小中学生を対象としたプログラムです。この取組について、プロダクトマネジメント部の岩村 剛さんにお話を伺います。
プロダクトマネジメント部 岩村 剛(以下、岩村):バンダイは子供に向けておもちゃ製品を企画製造販売している企業なので、子供たちにより夢を持ってもらいたいという思いがあり、それが出前授業を始めたきっかけです。土曜授業の拡大やキャリア教育の推奨という、昨今の教育現場における流れの中で参画を決めました。
―この取組のスタート時は、少し違う形であったと聞きました。
岩村:最初は2013年の子供向け環境イベントへの出展で、その時はバンダイの環境に対する取組を子供たちに知ってもらうことが目的でした。しかし、そこで子供たちと接しているうちに、学校としっかり連携して行えば、子供たちがより深く学べる機会、より夢を持てる機会を与えられるのではないか、と考えるようになりました。
―接点のなかった学校との連携、さらには認知度のアップといった課題はどう解決されたのですか。
岩村:環境イベントで教育コーディネート・コンサルティングを行うNPO法人と出会えたことにより、この取組をスムーズに進められるようになりました。その後、徐々に先生間の口コミで認知が広がり、「ぜひ今年も」とリピートいただくケースも増えていきました。また、テレビのニュース番組、雑誌や新聞で紹介された反響も大きかったです。
―年々、実施校が増えていく中、多くの依頼に応えるために行っていることはありますか。
岩村:映像教材も含めたすべての資材を提供し、各学校の先生や教育指導者の方の負担を極力軽減しながらも出前授業と全く同じ授業ができる「教材提供型」を開発しました。DVDの映像プログラムを再生、一時停止しながら進行し、映像の合間に配布した工作キットや教材で指導マニュアルに沿ってワークショップを行っていただきます。それにより全国規模での展開が可能となり、特にコロナ禍の今はその割合が伸びています。
学校のカリキュラムや単元とリンクさせたプログラムをお届けしています
―どのプログラムも「おもちゃ」が共通テーマということで、子供たちの興味を喚起しやすいのではないですか。
岩村:そうですね。ただ、テーマはおもちゃですが、単におもちゃづくりの話をするわけではありません。おもちゃを用いて、学校で習う「環境」「ユニバーサルデザイン」「安全」「統計と情報整理」といった単元を楽しみながら学べる授業にしています。
―小学校3〜4年生をターゲットにした「環境」のプログラムは、どのようなものですか。
岩村:おもちゃの主な材料、プラスチックを題材に環境問題を考えます。授業前半でリデュース、リユース、リサイクルの3Rについて、バンダイのおもちゃを例にが実践していることを説明し、後半ではカプセルトイの空カプセルを使った実習を行います。子供たちは、カプセルとウレタン廃材でのハンコづくりを通して、中身を取り出した後はゴミとなるカプセルのリユースを体感します。
―身の回りのものを捨てる前に何かに使えないかと、自分ごととして考えるきっかけになりますね。では、小学校4〜5年生をターゲットにした「ユニバーサルデザイン」のプログラムは、どうでしょう。
岩村:授業前半は、誰もがわかりやすいデザインについて具体例を用いて説明し、後半でおもちゃのパッケージデザインづくりを行います。子供たちはオリジナルでパッケージを作りながら、商品名、内容物、魅力などのキャッチコピー、そこに必要な要素を考え、誰に使ってほしいのか、魅力をどうやってわかりやすく伝えるべきかというユニバーサルデザインの基本を学びます。
―小学校5〜6年生をターゲットにした「おもちゃの安全」のプログラムは、どのようなものですか。
岩村:このプログラムでは、キャリア教育をメインに学びます。授業前半は、おもちゃづくりに不可欠な安全性の工夫について説明し、後半で、子供たちが品質管理の社員になりきり、実際に行う検査を体験します。また、この授業では、担当社員が自分の携わっている仕事内容について話し、おもちゃメーカーの仕事が、おもちゃの企画だけでないことも伝えます。
―「統計と情報整理」は、人気のプログラムだそうですね。
岩村:はい。「統計」の単元が復活する中学生をメインに、統計により製品の品質改良を図る考え方を学びます。各チームがおもちゃ製造工場になりきり、品質の良さと生産数により対抗します。統計学を使って1回目の生産で作った製品の弱点を抽出し、工夫してそれを克服し、第2回目の生産を行います。コンテスト形式で大いに盛り上がります。
目指しているのは、みんなが楽しみながら学べる授業です
―授業の後半は、子供たちの主体性を意識した内容ですね。
岩村:前半は学んでもらい、後半は主体性を持って実践してもらう、というような考え方で授業を構築しています。
「環境」の授業でのハンコづくりは、本質から外れたアート性に傾きがちですが、自由に楽しく作ることを重視し、エコを考えるきっかけにつなげます。
「ユニバーサルデザイン」の授業では、最後にプレゼンテーションの時間も設け、将来役に立つコミュニケーション能力を質疑応答で養います。
「統計と品質管理」の授業で行うコンテストは、一切の制限をなくした中で他チームに負けない良品を作るべく考えます。そのアイデアに私たちが驚かされることもあり、例えば、手先が器用な人を職人の役割にするなど、あるチームが適性に合わせた作業分担を作戦に取り入れたときは、こちらが想定していないアイデアにとても感心しました。
―御社らしいエンターテインメント性も人気の秘密だと伺いました。
岩村:4つのプログラムのうちの3つは、キャラクターを使った映像を授業に取り入れています。テレビ番組のように笑いも入れ、子供たちみんなが最初から最後まで楽しみながら学べるよう工夫しています。
―子供たちになじみのある企業で、さらに楽しい映像やおもちゃ製品を使うとなると、必然的に子供たちの期待度や意欲も高まりそうですね。授業後の感想はいかがですか。
岩村:アンケートで「本当に楽しかった」「また来てほしい」といった感想をいただいており、特に主体性を意識した後半の授業は自分たちで考えて何かを作り上げる要素が盛り込まれていますので、子供たちからとても好評を得ております。
作ったハンコがメッセージと一緒に届くこともあり、それはとても嬉しく、やりがいを感じる瞬間です。先生方からは「普段あまり授業に集中できない生徒が最後まで聞いていた」という声もいただきます。
―子供たちと接する上で工夫していることはありますか。
岩村:基本的には一個人を大切にし、あまり子供扱いしないようにしています。口調は、先生っぽくなく、逆にフランクにもなりすぎず、一緒に働く人と接する感じで進めます。
―今後は、どのような展開を考えていますか。
岩村:近年、社会問題になっている「環境」のプログラムを現状に合わせてアレンジし、対象を中学生まで広げたいと思っています。
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