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東京都

  • 誰一人取り残されないようサポート

掲載日:2022年3月1日

H O P E(ほっぺ) 子ども・若者支援プラットフォーム

「誰一人取り残さない」理念を元に学習支援、就労支援に取り組む

「子ども・若者支援プラットフォーム(以下、HOPE)」は貧困、孤独など様々な理由から居場所を無くした子供、若者を支援するために、2021年に連合東京(日本労働組合総連合会東京都連合会)や関係団体、若者支援組織、学習支援を行うNPO法人、子ども食堂により設立された支援組織です。子供、若者に関する社会課題解決に向けて取り組んでいる活動をご紹介します。

塾のようなものではない、あくまで子供たちの居場所としての“子ども食堂での学習支援”

左から、企画・運営委員の上本俊之さん、代表理事の斉藤千秋さん、専務理事の真島明美さん、取材対応を担当していただいた事務局の杉山秀隆さん

―HOPE(ほっぺ)の代表理事の斉藤千秋さん、専務理事の真島明美さん、企画・運営委員の上本俊之さんに、HOPEを立ち上げた動機、きっかけからお聞きしたいと思います。

斉藤千秋 代表理事(以下、斉藤):HOPEの母体は労働組合である連合東京なのですが、これまで見えなかった課題、あるいは実は見えていたのだけど、手を差し伸べることができていなかった課題が、ここ数年のコロナ禍をきっかけに浮き彫りになったという背景があります。特に子供や子育て世代の女性にまつわる社会課題の解決は急務でした。

そこで、持続的な解決に向けた活動が可能な支援プラットフォームという形でHOPEを立ち上げました。

2021年11月26日、子ども・若者支援プラットフォーム設立総会の様子

―子ども食堂と連携した学習支援というのは、どのような経緯から生まれた活動だったのでしょうか。

斉藤:HOPEを立ち上げた経緯でもあるのですが、コロナ禍が長引いたことで、給食がないため昼食も満足に取れない子供や、自分は食べずして子供にご飯を食べさせているシングルマザー家庭の実情などを知り、驚きました。特に把握できていない層にこそ支援が必要なのではと考え、まずはそういった子供たちの支援をするために子ども食堂に着目したのです。

―どのような理由で学習支援ボランティアという形を取ろうとお考えになったのですか。

斉藤:私たちはまず子供たちの“居場所”を作ってあげたいという想いがありました。しかし“子ども食堂”という名前は、食事を提供する“だけ”の場所というイメージもあります。そこで、子供たちに「ここに居てもいいんだよ」というメッセージを送り、学習支援を行うことにしたのです。

―HOPEの考える学習支援の内容はどういったものですか。しっかり勉強を教えるというイメージなのでしょうか。

斉藤:子供の居場所を作ることが目的の1つなので、私たちが想定していたのは成績を上げるための塾のような形ではありませんでした。

そこで着想したのが、一緒に宿題を見てあげる、というようなイメージです。子ども食堂で食事をとったら、お絵描きをしたり、本を読んだりしながら宿題に取り組む生活習慣を身に付けてもらいたい、というのが狙いです。それに親御さんが帰宅するまでここにいていいんだよ、というような意味合いもありますし、コミュニケーションの場になってほしいという想いもありました。そういった方向性を基本に、学習支援に知見のあるNPO法人キッズドアにご協力いただき、このような形で運営することになりました。

しかし、2021年11月末の活動開始から1ヶ月ほどで新型コロナ感染症まん延防止措置で子ども食堂が休止。現在(2022年3月現在)は再開に向けて改めて準備している段階です。

―ボランティアはどういった方々が参加されていますか。

真島明美 専務理事(以下、真島):現状は、足立区と目黒区の子ども食堂と連携して学習支援を始めたのですが、基本的にはそちらでボランティアを集めていただいています。連合東京でも組合役員に希望者を募り、研修を受けていただき準備はできていたのですが、新型コロナ感染症対策としてまん延防止等重点措置が実施になり、現場に出られるのは、活動再開後ということになってしまいました。

―学習支援に対して、印象的だったこども食堂やお子さんの声があればお聞かせください。

真島:ある子ども食堂の代表は「いままで手探りでやってきたけど、キッズドアの学習支援から自分自身も学ぶことができた。今後の運営は我々自身でやりながら活動していきたい」と前向きな言葉をいただきました。

また、あるお子さんが、コロナの関係で食堂に行けなくなってしまった時に、「子ども食堂の人たちとおしゃべりしたい!」とオンラインで会話したこともあったようです。子ども食堂やそこにいるスタッフやボランティアの人々は、子供たちにとって安心できる場所になっているのだと感じることができたようです。

―ボランティアが子供と接する時の心がけなどは研修されたのでしょうか。

斉藤:ボランティアの研修をキッズドアと共同で行いましたが、前述のとおり成績を上げるための勉強ではなく、一緒にいて見守ってあげる、というスタンスが大事だということをボランティアの共通認識として共有しました。あくまでボランティアなので、自分のできる範囲で手を差し伸べる、寄り添うということが重要だと考えています。

一方で、ボランティアとして参加していただく大人の方々にとっても、日常のルーティンから一歩踏み出して、社会で起こっていることを体感していただくいい機会だと思っています。

子ども食堂と聞くと、どうしても貧困などといったキーワードが浮かびますが、実際の利用者は必ずしもそういう環境の子供たちだけではありません。様々な理由で家に帰れない、学校にも家にも居場所がない子供はたくさんいます。HOPEの理念にも掲げております「誰一人取り残さない」は、そういった意味も含まれています。

学習支援の先に見据えるのは、 “様々な職場を見せることのできる就労支援”

―子ども食堂との学習支援ボランティアで子供の居場所を作り出したら、その先にHOPEが見据えているのが「若者への就労支援」と伺っています。

斉藤:子ども食堂での学習支援で子供の居場所を確保できたとして、その次に子供や若者に私たちができることが就労支援だと考えております。

なぜなら前述の通り私たちの母体は労働組合です。様々な企業、業種の人材がおりますので、そういった方々が勤める様々な職場にアプローチできるからです。

コロナ禍で企画が止まってしまっているのですが、就労支援の取組のひとつとして職場見学なども企画しています。例えば物流業界でいえば、日本最大級の物流ターミナル“羽田クロノゲート”の見学や、宅急便をはじめとした物流の仕組みの体験、郵便局の宅配便の仕分け体験などです。そのほか、スーパーの在庫管理や動物園の飼育・清掃など、実際に働いている方に案内してもらい体験することも考えております。様々な企業のバックヤードを見ることができるというのは私たちならではの企画だな、と思います。

このように多種多様の職場で様々な働き方があることを知ってもらうことで、社会を知るきっかけにしてもらい、就労支援につなげていこうという取組です。

―就労支援のターゲットはどこを想定しているのでしょうか。

上本俊之 企画・運営委員:2つありまして、まず1つ目は子ども食堂にいらっしゃる子供たちを対象にした社会科見学的なもの。もう1つはまさに就職を考えている高校生、児童養護施設を退所した世代向けの職場体験会を行なっていきたいと思っています。

―企画立案していくうえで、HOPEならではの工夫などを盛り込んでいることはありますか。

斉藤:こういった取組の場合、どこの団体も頭を悩ます課題が企画の段取り部分かと思います。移動はどうするのか、昼食はどうするのか、といった課題ですね。特に金銭的な部分で参加者にできるだけ負担はかけたくないですから。

前述の通り、我々には様々な業態のネットワークがあります。もちろん交通機関のネットワークもあるので、バス業界にもサポートしていただくことも想定して準備を進めております。

HOPEだからできる”企業とも連携した支援取組”を試みていきたい

―HOPEとしてのこれからの展望をお伺いできればと思います。

斎藤:子ども食堂と連携した各支援については、再開に向けて色々と準備を進めている中で、とても良い協力の申し入れなども届いています。

子ども食堂に役に立つことはないかと思案してくださっていた企業から、賞味期限の近い災害備蓄品を子ども食堂で活用してほしいというご提案をいただいたので、希望する子ども食堂に共有しようという計画を立てています。こういった場合、フードパントリーを支援したい企業と子ども食堂が直接連絡を取り合いアプローチするには色々なハードルがあり、実現に至るまでに時間を要してしまうことがあります。そこで、我々のネットワークを活かしその双方を繋げ、仲介役となればよいのではないかと考えました。

また、学習支援に関しては構想段階ではありますが、キャリア教育、主権者教育といった税制や労働法などを学んでもらえるよう、ゲストティーチャーを迎えた支援企画なども考えております。

発足したばかりでまだ実績の少ない組織ではありますが、様々な職場へのアプローチや企業とのネットワークといったHOPEならではの特性を活かした事業を展開しており、こうした特性を活かした企画をさらに検討しています。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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