掲載日:2023年2月24日
キユーピー株式会社
創始者の「食を通じて社会に貢献する」精神を受け継ぎ、食育で子供の未来を守る
キユーピー株式会社では、創業時より受け継がれる「食を通じて社会に貢献する」という精神のもと、食育活動を行っています。また、同グループと想いを共有する団体を支援し、より大きな社会貢献につなげるべく、キユーピーみらいたまご財団を設立し、個社に留まらない幅広い活動を展開しています。子供たちの笑顔を生み出す取組について、広報・グループコミュニケーション室 社会・食育チーム チームリーダーの上田史恵さん、公益財団法人 キユーピーみらいたまご財団 堀池俊介さんにお話を伺いました。
「食を通じて社会に貢献する」という精神で、60年以上前から子供向けの食育を展開
―子供向けの取組を始めた背景や理由、きっかけについてお伺いさせてください。
広報・グループコミュニケーション室 上田 史恵さん(以下、上田):キユーピーグループ創始者・中島董一郎の「食を通じて社会に貢献する」という精神を受け継ぎ、主に子供を対象とした様々な食育活動に取り組んでいます。その先駆けとなったのは、1961年に地元の小学校から「キユーピーの工場で社会科見学ができないか?」という打診を受け、実際に工場に訪問してもらったことでした。その社会科見学がベースとなって、現在の「オープンキッチン(工場見学)」をはじめとした様々な食育活動の展開につながっています。
―工場がある地域の小学校からの社会科見学の打診が、様々な取組のきっかけになったのですね!現在実施している子供向けの取組は、どのような内容でしょうか。
上田:子供向けの食育活動にも様々なものがありますが、中でも代表的なものは「オープンキッチン(工場見学)」「マヨテラス(見学施設)」「出前授業」の3つです。
「オープンキッチン(工場見学)」は、一般の方向けの工場見学です。キユーピーの商品がどのように作られているのかの説明を通して食の大切さをお伝えし、皆様に食や商品への理解と安心を届ける取組です。2019年までは年間約7万人の見学者を受け入れていましたが、現在はコロナ禍の影響で一時中止しています。その代わりに、3か所の工場でオンライン見学を実施するようになり、全国どこからでも見学が可能となりました。その結果、遠方の学校の子供や外出が難しい入院中の子供等、現地見学には足を運びにくかった子供たちにも見学に参加してもらえるようになったというメリットが生まれました。
「マヨテラス(見学施設)」は2011年に仙川工場跡地に建設した仙川キユーポート内にある見学施設です。「仙川工場が無くなって社会科見学ができなくなるのは困る」とのご要望から、2014年マヨテラス(見学施設)がオープンしました。
「マヨテラス(見学施設)」では、「キユーピー マヨネーズ」の歴史や特徴、キユーピーグループのものづくりへの姿勢や想いをお伝えしています。こちらの取組も「オープンキッチン(工場見学)」と同様に、オンライン・オフラインの両方で実施しており、実際に滋賀県の独立行政法人国立病院機構 紫香楽病院からの要望を受け、オンライン見学を実施するなど、様々な環境下で生活する子供たちに見学の機会を提供しています。
「出前授業」は、キユーピーグループの従業員が講師として全国の小学校に赴き、食の楽しさと大切さを伝える取組です。その中の一つである「マヨネーズ教室」は2002年から実施しており、子供たちにマヨネーズのヒミツについて学んでもらった上で、一緒にマヨネーズを作ります。決して混ざることのない酢と植物油が、卵黄を加えることで乳化して混ざり合い、マヨネーズになっていく様子を体験したあと、自分たちで作ったマヨネーズと工場製のマヨネーズの食べ比べをしています。また、2022年6月からは、弊社のサステナビリティ目標を踏まえた「SDGs教室~キユーピーグループと食品ロス~」も実施し、食という観点から持続可能な社会づくりについて一緒に考える機会も提供しています。
「食」は、嬉しく楽しいこと。「おいしく食べること」の楽しさを伝えたい
―具体的に取組を実施していく中で、大切にしていたことや重視したことはありますか。
上田:未来を担う子供たちが、「食を通じて心身ともに健康であること」を大切にしてきました。元々、創始者の中島がマヨネーズづくりに至ったのは、日本人が今よりもずっと小柄だった戦前にアメリカへ渡り、マヨネーズと出会ったことが起点となっています。そして、「アメリカ人と日本人の体格の差は栄養の違いではないか」と考えました。帰国後、中島は、日本人の体格向上や食生活の充実を目標に、栄養豊富なマヨネーズづくりに取り組み、現在のキユーピーマヨネーズへとつながっています。
現代では、ただ栄養を取るだけではなく、いろいろなものを食べて栄養バランスに気を付けることも大事になってきています。特に子供の場合、中学生くらいになると体形が気になってダイエットを始めて、栄養バランスを崩してしまう子もいます。そんな時も、マヨネーズは野菜だけでなく、肉や魚などいろんな食べ物をおいしく食べるための汎用性の高い調味料です。「おいしく食べる」ということは、嬉しく楽しいことであり、食育を通してその楽しさや、マヨネーズの良さを知ってほしいと考えています。未来を担う子供たちが心身ともに健康でいられることを、従業員一同、心から願っています。
創始者の理念をベースに自然と広がった食育活動が、子供たちの笑顔につながる
―キユーピーのマヨネーズが、日本人の体格向上や食生活の充実を目標に生み出されていたことに驚きました!そうした歴史や食の良さを、よりたくさんの人に知ってもらいたいですね。取組において、ハードルや苦労にぶつかることはありましたか。
上田:実は、食育活動を広げていく上で、特に苦労したことはありません。食育活動は創始者・中島の理念に基づくものですし、会社全体としても大事にしている考え方ですので、食育活動を始めることが自然と受け入れられ、むしろ従業員から様々なアイデアが生まれ、広がっていきました。
―会社として大切にしてきた考え方だからこそ、自然に広がっていったのですね!実際に取組に参加した子供や関係者の方々からは、どのような感想や意見が寄せられていますか。
上田:マヨネーズ教室に参加した子供たちからは、「自分でつくったマヨネーズをつけて食べたら、嫌いだったきゅうりが食べられるようになった」「マヨネーズで野菜をもっと食べようと思った」など、嬉しい感想が寄せられています。子供たちが食に向き合い、成長していく姿を見ることができるのは、私たちとしても本当に嬉しいことです。また、オンラインで子供向けの講座を実施した際、画面の隅に、一生懸命メモを取る保護者の方の姿が見えたこともありました。取組の対象である子供はもちろん、一緒に参加していただいている保護者の方も一緒になって真剣に取り組んでくださっていることが垣間見えて、嬉しさとやりがいを感じました。
―取組に対する社内の反応はいかがでしょうか。
上田:社内からは、「子供たちからの感想や笑顔が、やりがいにつながった」という声があがっています。また、「食育活動に携わることで、食品メーカーの一社員として担っている仕事の大切さや意義の深さを、改めて感じることができ、より一層仕事が身に入るようになった」という声が届いています。食育活動を通して、子供たちや社会に対して貢献することができていることを実感し、より一層前向きに仕事へと取り組むモチベーションになっているようです。
他団体と協力し、より幅広い活動につなげる「キユーピーみらいたまご財団」を設立
―もう一つの取組として、「キユーピーみらいたまご財団」の活動内容、設立の背景、成果などをお伺いできますか。
公益財団法人 キユーピーみらいたまご財団 堀池俊介さん(以下、堀池):キユーピーみらいたまご財団は、キユーピーグループが従来進めてきた独自の取組を進展させるだけではなく、想いを共有しうる団体の活動を広範に支援することで一企業だけでは成し得ない社会貢献に繋げていきたいという想いから、子供の食育や子供の居場所づくりに取り組む団体に対し、助成活動を行う財団として設立されました。主な助成活動である寄付の財源は、自社株の配当金です。事業収益から財源を補填するのではなく、自社株から得られる配当金を財源としているため、活動が業績に左右されにくい上、持続的に運営することが可能な仕組みになっています。
この財団が設立されたきっかけは、2016年頃に子供の貧困が社会問題化したことです。この社会問題を受けてキユーピーでも何かできないか、と考えたところ、「自社だけでこの問題に立ち向かうよりも、みんなで協力した方がきっと解決に向かうことができる」という考えに至り、財団を設立することとなりました。
設立後、2017年度~2022年度の間に、約480団体に対して総計約1億6,000万円の助成を行い、子供の食育や食の居場所づくり等の取組への支援を実施してきました。
この間、新型コロナウイルス感染症が拡大し、社会的に弱い立場にある方々が生活困窮状態となりました。そのような世帯の子供に対し、弁当配布や食料支援(フードパントリー等)などの食支援活動をしている団体を支援するプログラムも急遽作りました。その時々の社会課題に応じて、柔軟に活動を展開できていると感じています。
食育活動をより広め、子供たちの笑顔への貢献を目指す
―現在実施されている取組をさらに改良・拡大していくなど、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。
上田:これからも、食育活動を通じてよりたくさんの子供たちに「食の楽しさ」を伝えていきたいです。近年はコロナ下ではありますが、例えば、工場見学をオンライン化したことで、工場から遠くて参加することが難しい子供たちや、病院から出られない子供たち等、現地見学には足を運びにくかった子供たちにも食育活動を実施できるようになりました。このように、今後も社会情勢を踏まえながら、より多くの子供たちに食育活動を届けられるよう、精進していきます。
堀池:キユーピーみらいたまご財団では、長期に渡って子供たちの笑顔に寄与できるよう取り組んでいきたいです。長期的視点から見ると、子供への食育活動や食の居場所づくりをするにあたり、「継続する」ということはとても大切です。財団の仕組みによるメリットを生かし、子供たちの笑顔に貢献できる活動を続けていければと思います。
食品メーカーとして、「食」で子供たちの未来を守りたい
―最後に、子供たちや他企業・団体へのメッセージをお願いいたします。
上田:しっかりと栄養バランスよく食べることは、体の健康に役立つのはもちろん、心の健康にも重要です。子供たちには、そんな「心身の健康にとって大切な食について、もっと興味を持ってほしい」と伝えたいです。私たちキユーピーも食育活動を継続して、未来を担う子供たちの健康づくりのお役に立てればと考えています。
堀池:財団の活動には、例えば「居場所づくりサミット」というセミナーもあります。子供の居場所づくりを行っている団体の活動のお役に立つような情報提供と活動事例紹介、団体同士のネットワークづくりにつながる交流会という内容です。すでに11回実施しており、楽しみにしている団体もいらっしゃいます。どの団体も素晴らしい活動をしており、これからも皆さまの応援をしていきたいと思います。
―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!
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