掲載日:2023年3月9日
日本電気株式会社(NEC)
次世代を担う子供たちが、ビジネスパーソンとの対話を通して「できたらすごい」をつくり出す!
日本電気株式会社(NEC)では、社会課題解決のためのプロセスを学ぶ高校生向け教育プログラム「NEC Future Creationプログラム」に取り組んでいます。次世代を担う子供たちが、NECグループ社員との対話を通してSDGsへの探究を深めていく、「できたらすごい」をつくり出す取組について、コーポレートコミュニケーション部 プロフェッショナルの池田俊一さん、工藤沙緒里さん、高野七美さんにお話を伺いました。
企業の課題と教育現場のニーズが合致して生まれた「探究型教育プログラム」
―現在実施している子供向けの取組はどのような内容でしょうか。
コーポレートコミュニケーション部 プロフェッショナル 池田俊一さん(以下、池田):「NEC Future Creationプログラム」は、高校生を対象にした、探究型の教育プログラムです。SDGsをテーマに、「事前授業」「オンライン授業」「事後授業」の3部構成で展開しています。
まず「事前授業」は、学校の先生主導のもと、進めていただきます。この授業では、生徒の皆さんにNECが手がけるソリューション事例の映像コンテンツを観ていただき、「どんな課題やニーズを、どのように解決しているのか」を学びます。その上で、実際に自分たちで解決したい社会課題を設定し、その課題を解決するための「できたらすごい」アイデアを考えていきます。この時に使用するのが、「VPCシート」というワークシートです。VPCとは、バリュー・プロポジション・キャンバスの略。サービスやプロダクトを開発する際、顧客への提供価値とニーズのズレを明らかにするフレームワークで、企業の新事業開発などに使われています。生徒の皆さんには本取組用に改訂したものを使っていただきます。
次のステップとなる「オンライン授業」では、NECグループ社員が講師として参加し、ソリューション事例を解説。「できたらすごい」を支えるアイデアを創るための視点と、ITの活用について理解を深めていただきます。さらに生徒たちが考えたアイデアについて、対話を重ねながらブラッシュアップを図ります。その後、生徒の皆さんには自分たちが設定した課題を「どのように解決していくのか」を具体的にまとめてもらい、最後の「事後授業」で発表していただきます。
―非常に体系化されたプログラムを提供されているのですね!高校生向けのプログラムを始めた背景についてお伺いさせてください。
池田:弊社の2013年の中期計画で、「社会価値創造型企業への変革」を掲げたことが背景にあります。これにより、「NECの事業が社会のインフラを担っていく」という考え方に基づき、徐々にBtoBやBtoGの事業へと移行することとなりました。しかし、事業の移行を進めるにつれて、BtoCから離れることとなり、生活者に直接提供できるサービスや製品が少なくなってしまったことに気づきました。「次世代の方々から、『NECとは何の会社か』という理解が薄れているのではないか」。この課題が、浮き彫りになったのです。
一方で、教育現場でも改革が進み、特に高校では「探究型の課題解決学習」への取組に注目が集まりつつありました。2021年頃からは「企業と連携して課題解決学習に取り組みたい」という学校側からのニーズの高まりも顕著になりました。教育現場からの需要に応えることは、「社会価値創造」をPurpose(存在意義)として掲げる弊社の方向性とも合致しますし、高校生と私たちが交流を図ることで、次世代を担う子供たちの中でNECの理解が深まることも期待できます。このような経緯と想いから、「NEC Future Creationプログラム」が生まれました。
社員と一緒にアイデアをブラッシュアップ。交流から生まれる気づきと学び
―プログラムの特徴やアピールポイントはどのような点にありますか。
池田:最大の特徴は「現場の社員が参画する」ということです。どのタイミングで生徒と社員の交流を図るかが悩みどころでしたが、「ブレスト時に、社員と生徒が対話することで、アイデアの精度が増すだろう」ということになりました。結果的に、生徒側は「アイデアをブラッシュアップする」という点、社員側は「若い世代の考え方や行動への理解を深める」という点で、相互に気づきや学びを得ることができているように感じています。
―高校生にとっても、社員にとっても様々な学びが得られているのですね!取組を実施していく中で、大切にしていたことはありますか。
コーポレートコミュニケーション部 工藤沙緒里さん(以下、工藤):私は、これまで講師としても参画させていただきましたが、高校生の皆さんとブレストする際は、「答えを教える」という意識ではなく、「一緒に考える」「生徒の皆さんが自分で答えを出せるよう導く」という姿勢を大切にしていました。「生徒たちの疑問を、生徒自らが解消するためには、どのように問いかけをすべきか」を常に念頭に置き、一方通行にならないような対話を心がけました。
コーポレートコミュニケーション部 高野七美さん(以下、高野):私は事務局側として、高校生と社員の様子を見守らせていただきましたが、工藤さんが話したように、高校生の納得感を高めるための言葉のキャッチボールが印象に残っています。「ITを使うとこんなことができるかも」といった社員のヒントによって、アイデアの現実味が増すにつれ、「なるほど!」と、どんどん輝きを増していく生徒の皆さんの眼差しが素敵だなと見入ってしまいました。
社員からのアドバイスで、アイデアを多角的に見つめられるように
―取組を進める中で、どのようなハードルや苦労にぶつかることがありましたか。また、それらをどのようにして乗り越えたのでしょうか。
池田:高校生にとって、社会課題を広い視野で捉えることが、やや難しいように感じられました。SDGsネイティブである現在の高校生は、社会課題や環境問題に高い関心を持っており、「主体的な視点」でその課題を考えることはできていました。しかし、まだ社会を経験していない生徒たちは、「別の世代の場合はどうか、別の地域の場合はどうか」とアイデアを広げていく際に、確かな情報がないために立ち止まってしまう様子も見られました。この段階で社員とブレストを行うことによって、より広い視野で社会課題を考えることや確かな情報を持つことができ、アイデアのブラッシュアップにつなげられたと思います。
高野:オンラインの環境整備についても、改善すべき課題が見つかりました。参加クラスの生徒は、4~5人のグループでプログラムに取り組むのですが、タブレット端末を数人で共有しながら社員と対話する際、ハウリングが起こってしまうこともありました。そうした問題が発生した時には隣のグループと距離を取ってもらうなど、その都度対応し、次回のオンライン開催時のルールを更新し、改善を図りました。環境整備については、今後も改善を続けていきたいですね。
「普段の授業では得られない体験ができた」。教師側からも喜びの声
―実際に取組に参加した生徒や先生方からは、どのような感想や意見が寄せられていますか。
池田:参加した生徒からは、「プログラムを通して視野が広がった」「いろいろな角度から考えることができた」などの感想をいただきました。今回の取組を通して、SDGsについて広く、深く考える機会を得るとともに、「自分で考えて発表する」という主体性も学びとして得られたのではないかと考えています。
また、先生側からも「普段の授業では得られない体験ができた」という感想をいただいています。生徒が普段あまり接点のないビジネスパーソンと交流を図ることで、課題解決型の授業がよりリアルに展開できたのではないかと考えています。
―取組を実施する前と後で、社員に変化や気づきはありましたか。
工藤:社員のNECへの理解がさらに高まっているように感じています。私自身、NECの代表社員として高校生の前に立つために、改めてNECの理念やビジョンを学び直すことができ、とても良い機会となりました。
池田:SDGsネイティブであり、デジタルネイティブでもある次世代の方々が「今、どのようなことに関心を寄せているのか」を知ることができる、という意味でも社員にとって貴重な学習機会になっています。今後、新しいサービスを創出していく上で、「次世代の方々の視点や考え方がプラスになる」と確信を得た取組となりました。
高校生と一緒になって、新しい価値を創造したい
―現在実施されている取組をさらに改良・拡大していくなど、今後の展望をお伺いさせてください。
池田:このプログラムは、2021年度に2校でトライアルを実施し、2022年度は3校で開催しましたが、今後は出来れば年間5〜10校を目安に実施していきたいと考えています。また、ニーズがさらに増えてきた場合は、学校側で自立的に取り組めるマニュアルを用意する必要もあると考えています。例えば、一度実施した学校の他のクラスから開催を希望された場合は、マニュアルを活用して自主的に進めていただくなどを考えています。
徐々に実施校数を増やしていくことで、社会的なインパクトが得られるのではと期待しています。将来的には、「できたらすごい」に留まらず、高校生のアイデアを弊社と生徒たちで一緒になって実現していく取組につなげられたら面白いですね。このプログラムをきっかけに、新しい価値創造にチャレンジしていきたいです。
地域ごとの課題と向き合い、子供たちの将来を考えるきっかけとして活用してほしい
―最後に、子供たちや、教師の皆さまへのメッセージをお願いいたします。
池田:「オンライン」を取り入れたことで、どんな場所でもこのプログラムに参加できる仕組みが整いました。地方、地域によって抱えている課題は様々です。自分たちが住む場所の地域課題や社会課題に向き合い、私たちNEC社員とアイデアを創ることで、このプログラムが、生徒の皆さんにとって、自分自身の将来を考えるきっかけになると嬉しいです。
工藤:高校時代は進学や就職について考える大切な時期だからこそ、様々なことに耳を傾けて、チャレンジしてほしいです。その挑戦の一つとして、私たちのプログラムがお役に立てたら嬉しいです。
高野:このプログラムは、自分の中のアイデアの種を磨いて、育てる場でもあります。教師や生徒の皆さんには「ぜひ参加を検討してみてください!」とお伝えしたいです。
―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!
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