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東京都

こどもスマイルムーブメントアンバサダー 平井一夫さんにインタビュー

ソニー元CEOで、現在は子供たちの未来創造のきっかけとなる感動体験を提供する「一般社団法人プロジェクト希望(以下、Project KIBO)」の代表理事を務める、こどもスマイルムーブメントアンバサダーの平井一夫さん。
今回、9名の中学生リポーター(石榑まいさん、伊東悠希さん、加藤遼太朗さん、田中陽翔さん、都島知さん、中村さゆりさん、松田航樹さん、森田琉愛さん、山本珠さん)が、平井さんのこれまでの活動から興味を持ったことや、自分たちが夏休みに行った参画企業・団体への取材を通じて感じたことを元に質問を考え、一人ずつ平井さんにインタビューを行いました。

こどもスマイルムーブメント アンバサダーの平井一夫さん(前列中央)と9名の中学生リポーター
【こどもスマイルムーブメントアンバサダーの平井一夫さん
(前列中央)と9名の中学生リポーター】

【注意】以下、中学生リポーターの石榑まいさん、伊東悠希さん、中村さゆりさんの3名が代表して執筆しています。

自分たちが考えた質問で、平井さんにインタビュー!

―こどもスマイルムーブメントアンバサダーとしての活動や、「Project KIBO」について調べて、平井さんはこれまで多くの活動をされてきたと思いますが、その中で一番印象に残っている活動は何ですか。(田中)

こどもスマイルムーブメントアンバサダー 平井一夫さん(以下、平井):私はProject KIBOの活動や、こどもスマイルムーブメントアンバサダーの活動を通して子供たちに様々な感動体験を提供していますが、その中で1番というものはないですね。感動体験の中には、映画鑑賞、スポーツ観戦、キャンプや遊園地に家族や友人と行くなどの機会がありますが、どのような体験でも、子供達の目が輝いています。この瞬間が1番「この活動やっていてよかったな」と感じる瞬間です。そして、体験後にフィードバックとして「今までにできなかった活動がたくさんできて楽しかった」というお言葉をいただくと、改めてこのような機会を提供してよかったと感じます。すべての体験が子供たちに感動と印象が残るように心がけています。

―貧困による子供の体験格差は聞いたことがあるのですが、この課題を解決するために、どのような発信をしていますか。(中村)

平井:日本国内には子供たちの貧困問題に加えて、子供にまつわる課題は複合的で多くの課題がありますが、このような社会問題があるということを知らない人が多いです。知ってもらうためには発信する必要があります。私は、こどもスマイルムーブメントアンバサダーとして、本日のインタビューの場だったり、他にも企業・団体向けの講演、テレビや新聞などのマスコミからのインタビューなどの機会を通じて、しっかりと発信していくことでいろいろな年齢層の方に社会課題について知っていただきたいと思っています。

「プロジェクト希望」についての説明
【「Project KIBO」についての説明】

―AIなどがある中で、自分の将来に夢や希望を持つために、私たち子供が大事にするべきことは何だと考えますか?(石榑)

平井:大事なのはまず、将来自分がどんな仕事に就きたいかを考えることです。そして、将来の仕事を決めるために「自分が興味のある業界にどのような仕事があるのかを考える」ことです。私の場合は音楽業界の仕事に就職しましたが、音楽の中には音楽を作り出す仕事、その人たちを支え音楽の世界の基盤を作っていく裏方系の仕事など様々あります。私は裏方の仕事をしていましたが、達成感を味わう機会はたくさんありました。自分が好きな業界にいて、貢献できるということは本当に喜ばしいことです。広い視野をもって、業界の中にある会社、その仕事、そしてAIが業界にどのような影響を及ぼすのかを調べてみる。最終的に自分の目指すゴールは次第に変わってもいいです。まずは自分の将来の夢を持ち、それについて調べてみることは大切だと思います。

―学校で様々な教科を学んでいますが、将来役に立つのかわからないことが多いです。平井さんは、中学生の時に何をしていましたか。それは大人になってから役立ちましたか。(山本)

平井:私が中学生の頃は色々なことを勉強していましたが、将来役に立つのかは疑問に思っていました。例えば数学で方程式の解き方を習いますが、方程式にはたくさんの複雑なルールがあります。方程式は、「X=~」を求めるために解きますが、その方程式そのものを大人になって解くことはほとんどありません。しかし決して無駄にはならず、論理的に解を求めていくという点は実は大人になって生かされることがあります。方程式が複雑であることと同じで、会社や社会の問題も本当に複雑です。すべての物事における「Xとは何か?」を考えること、ロジカルシンキングで問題を捉えていき、解決していくためには根元を考えて論理的に分析する力が大切になります。方程式のように、将来役に立つことはなさそうで日常生活に関係していないと思うものも、物事の考え方や捉え方に貢献してくれます。自分が役に立たないと思っていたことも大人になると認識できることが多いです。

真剣な表情でお話を聞く中学生リポーター
【真剣な表情でお話を聞く中学生リポーター】

―平井さんはどのような思いがあって、こどもスマイルムーブメントアンバサダーに就任されたのですか?(森田)

平井:子供たちが「積極的に社会と関わって、成長していきたい」という想いをなんらかの形でサポートしたいと思ったからです。自分が子供の頃を思い返して、今思っていることは、社会のことについてもっと勉強すればよかったということです。その経験もあって、今の子供たちに多くの体験をさせ、視野を広めるきっかけをつくり、よりよい社会を築きたいと思いました。皆さんには「時間」というお金では買えない資産があります。そこで、自分が必要だと思うことを子供たちに伝えるためにこどもスマイルムーブメントアンバサダーに就任しました。

―平井さんはソニーの社長などを経験されたと思いますが、そのころの活動や意識していたことで、こどもスマイルムーブメントアンバサダーとしての活動と重なることはありますか?(加藤)

平井:自分にとって大切な人であるステークホルダー(関係している人たち)に喜んでもらえる活動を考えていることが共通しています。社長時代は、企業を支えてくれているビジネスパートナーたちに自分がどのような影響を与えるかを考えていました。同じように、今は多くの子供たちにスマイルを与えられているかを考えて活動しています。このように、今までの活動と今行っている活動で共通していることは、自分を重視するのではなく、相手を重視しているということです。

将来の夢や希望を持つことの大切さを伝える平井さん
【「将来の夢や希望を持つことの大切さ」を伝える平井さん】

―中学生リポーターとしての取材を通し、社会は思わぬ場所で繋がっていると感じました。企業が繋がることで、どのような良いことがあると思いますか?(森田)

平井:社会にはまだまだいろいろな課題があると思います。そこでいろいろな課題を改善するためには必要なことがあります。まず、一つ目は、子供たちが自分の視点で意識を持つということです。そして二つ目は、その意識を活用して企業と協力するということです。学生ならではの視点と、企業がもつ人材、情報、資金、影響力などの力という、お互いにないものを補うwin-winの関係で、いろいろな課題の改善に取り組めると思います。そして、達成感も得られ、どんどん社会課題の改善に向かわせることができると思います。

―参画企業・団体への取材を通して、こどもスマイルムーブメントに期待することとして「企業・団体がもっと直接子供たちと触れ合える機会を作っていって欲しい」ということをお聞きしました。平井さんはアンバサダーとして今後この取組がどのような形で広まってほしいですか?(伊東)

平井:いろいろな人が企業と対話をして、社会課題に取り組めるようになってほしいと考えます。ここにいる人たちは、問題意識を持っている方が多いと思います。そんな人たちと企業が連携して取り組むことで、課題を解決できたという成功例を多く作り、周知していくことが大事です。それにより、「うちの会社もやろう!」と思ってもらえるようになると思います。“学生と企業で連携をして対話する”、“企業に学生のほうを向いてもらう”ということが大事になっていくのではないでしょうか。

―こどもスマイルムーブメントの活動に参加することで、たくさんの企業が子供をサポートするために活動していることを知りました。もっといろいろな企業に参加してもらうためにはどうしたらいいと思いますか?(都島)

平井:企業のトップの人にいろいろな活動があることを知ってもらって、こどもスマイルムーブメントの活動がその企業のために良いと思ってもらう必要があります。企業は、トップがやる気になると動きます。そのため、いろいろな活動の成功例を発信することが非常に重要です。社会課題というのは大人だけが考えればいいのではなくて、いろいろな立場の人が考える必要があります。人は年齢によって違う視点を持っており、学生の皆さんが持っている視点は、学生にしかないものです。それはとても価値のあるものなので、企業と学生が連携できるとよいと考えます。そのためにも発信をして、トップの方に「やりたい!」と思わせることが重要でしょう。

平井さんのエピソードに思わず笑顔に
【平井さんのエピソードに思わず笑顔に】

―平井さんは、質問に対する答えの中で「対話」という言葉を多く使っているように感じました。対話に何か思い入れがあるのでしょうか?(石榑)

平井:人間と人間は、どんなことを考えているかという意思疎通がとても大事です。私は、ソニーに入社した後、アメリカに赴任してソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の社長になりました。アメリカに赴任してすぐだったため、現地の人は当然疑問を抱きますよね。そんな時にコミュニケーションをとって、一緒にやろうと対話をする姿勢が重要でした。社長が指示を出さないと、関係がこじれてしまいます。そう考えると、対話をすることが大切なのです。でも、たまにはどうしても意見が合わないなんてことがあるでしょう。そんなときは、「意見が合わないこと」に合意してください。意見が合わないときに、言い負かすことは意味がありません。世の中でたくさんの争いが起きていますが、争うのではなく「合意しないことに合意すべき」だと思います。そうすることでお互いが尊敬しあえる関係になれます。そんな関係があふれる世の中になっていくといいですね。

―平井さんの今後の目標を聞かせてください。(松田)

平井:私がなぜこの仕事をしているかというと、皆さんのような学生に将来を考えてほしいからです。日本の将来のリーダーに育つ人を増やしたいという思いで、子供たちみんなが同じスタートラインに立てるように、体験格差を縮小するために感動体験を提供しています。私は普段、社会人を対象に「リーダーとは何か」について講演をしています。また、学校への出前授業も行い、2~3年後、もしくは10年後、20年後にリーダーになってほしい、将来の夢を考えてほしいという思いを学生に伝えています。今後も多くの人に将来に夢や希望をもってもらう、そして日本のリーダーになってもらうための活動をしていきたいと考えています。

平井さんの取材を終えた感想

平井さんへの取材を通して、私達中学生の将来を考える上で大切になることや活動していらっしゃることがどれだけ重要視するべきものなのかを知ることができました。
特に印象に残ったのは「子供たちをスマイルにしていくこと」です。平井さんは自ら「Project KIBO」を立ち上げ、さらにこどもスマイルムーブメントアンバサダーに就任するなど、感動体験を提供することは未来を担う子供たちにとってかけがえのない時間になるとともに良い刺激になり、とても良い活動だと思いました。
また、「学校での学びにさらに付け加えて、社会を見ることや対話をすることなどの経験を積み、子供たちに与えられた「時間」という資産を大切に使い、成功と失敗を繰り返せるような人になってほしい」という言葉から、今しかできないことを大事にすることの重要性を知ることができました。 私たちがこれからの長い人生を歩んでいくにあたって、役に立つたくさんのことを学ばせていただきました。お聞きしたことをもとに改めて将来について考えたいと思いました。(伊東悠希)

今回の平井さんへの取材を通して、平井さんが子供のこと、日本の将来のことを強く想っているのを感じました。子供の体験格差をなくすことが、子供が将来への夢や希望を抱くこと、日本の将来のリーダーを作ることにつながると考えて、感動体験を実施されていると知りました。感動体験の一つである「沖縄の子供に冬の北海道を体験してもらう」というプログラムは、雪などの異なる文化を知ってもらうきっかけになります。一方で、平井さんはお話の中で、企業や学生など異なる視点を持った人が協力して地域課題に取り組むことが大事だとおっしゃっていました。みんなが同じ体験をしたことがある方がよいのか、それとも異なる視点がいいのか、それはとても難しいことなのではないかと考えました。けれど、人間はどんなに頑張っても全く同じ視点で物事を見ることはできません。だからこそ、相手と意見が合わないときには、意見が合わないことに合意するということが相手を尊敬するうえで、大事になっていくのではないかと思いました。(石榑まい)

私は、この取材を通して、協力することの大切さや夢を持つことの重要さ、そして諦めないことの大切さを改めて感じることができました。
今回は平井さんという社会人経験が豊富な方に質問することができ、平井さんの視点からの意見も考えて、将来のことについて前向きに考えることができました。私は、今回学んだことや、平井さんに教えていただいたアドバイスを心に留めて、これからに生かしたいです。また、平井さんのようにいろいろな人を助けて、スマイルが増えるよりよい社会にするために貢献したいです。(中村さゆり)

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