本文へ移動

東京都

  • 子供を大切にする気運醸成
  • 誰一人取り残されないようサポート

掲載日:2023年2月2日

TOKYO UNITE

どんな子供にも平等にスポーツへ関わる機会が拓かれ、夢を持つことができる社会をつくりたい

TOKYO UNITEは立ち上げ時から社会の課題解決を活動の軸に掲げ、困窮家庭の子供がスポーツを続けられるようにシューズを届ける、「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトなどに取り組んでいます。スポーツを通した子供への支援について、事務局の井上哲さんと飯嶋真晴さんにお話を伺いました。

TOKYO UNITE CHARITY AUCTION

スポーツを通して子供たちにもっと夢を持ってほしいという思いから始まった

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけをお伺いさせてください。

TOKYO UNITE事務局 井上哲さん(以下、井上):TOKYO UNITEは、東京をホームタウンとする14のスポーツチーム・団体※が協力し、社会課題解決や社会貢献活動を目的として2022年7月に立ち上げた組織です。
その立ち上げは、国際的なプロ水泳リーグに参戦しているTokyo Frog Kingsの代表である北島康介さんによって発案されました。具体的には、北島さんが読売ジャイアンツの親会社であり、長年に渡り米メジャーリーグと密接な関係にある読売新聞社に対して、スポーツチームの運営や海外リーグとの向き合い方について相談されたことがきっかけとなっています。その会話の中で、「東京をホームタウンとする様々なスポーツチームが集まり、何か大きなチャレンジができるのではないか」というお話になったことから、読売新聞社のネットワークを通して様々なチーム・団体にお声掛けをし、14チームから賛同が得られたことでプロジェクトが始動することとなりました。

※東京ヤクルトスワローズ、読売ジャイアンツ、FC東京、FC町田ゼルビア、東京ヴェルディ、東京サントリーサンゴリアス、リコーブラックラムズ東京、東芝ブレイブルーパス東京、サンロッカーズ渋谷、アルバルク東京、日本テレビ・東京ヴェルディベレーザ、Tokyo Frog Kings、木下マイスター東京、日本相撲協会(TOKYO UNITE オフィシャルサイト掲載順)

―組織の始まりに、スポーツによる社会貢献が大きなテーマとしてあったのですね。

井上:そうです。社会貢献活動の中でも子供支援に注力した理由は、元々スポーツは子供の楽しみと親和性が高いものであること、スポーツが子供の非認知能力の向上や社会性を育む面でも有用であること、そしてスポーツを通して子供たちにもっと夢を持ってほしいという思いからです。
コロナ禍以前から、社会の格差や閉塞感が深まる中で、昔に比べ子供たちが夢を持ちにくくなっているのではないかという懸念を持っておりました。実際にひとり親家庭等において「子供にスポーツをする機会をつくりたくても、経済的にそれが難しい」という声も届いておりました。さらに、東京では公園でキャッチボールが禁止されていたり、チームやスクールに加入していないと施設が使えなかったりするという状況もあります。
こうした中で、経済状況や環境に関わらず、すべての子供たちが平等にスポーツに関われる機会や場所を創出することがTOKYO UNITEの社会貢献活動にふさわしいのではないか、と考えがまとまり、子供向けの取組を積極的に行っていくことが決まりました。

クラウドファンディングとチャリティーオークションを活用し、スポーツシューズを届ける

―子供向けの取組について、具体的な内容をお伺いさせてください。

TOKYO UNITE事務局 飯嶋真晴さん(以下、飯嶋):組織を立ち上げて最初に開始したのが、「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトです。クラウドファンディングとチャリティーオークションで集めた支援金を活用し、東京都内で暮らす困窮家庭の子供たちにシューズを届ける取組で、結果的に339足のスポーツシューズを届けることができました。

―シューズに焦点を当てた理由はどこにあったのでしょうか。

飯嶋:取組を決める際に、認定NPO法人のキッズドアさんが実施するキッズドアファミリーサポートを通して、サポートが必要な子育て家庭にスポーツに関する悩みについてアンケートを行いました。その中で「スポーツシューズは、子供の成長に合わせて買い直さなくてはいけないので負担が大きい。だから、部活やスポーツをやらせてあげたいけど我慢している」というお声があったことが、シューズにフォーカスした大きな理由です。
また、英語で「If I were in your shoes」という慣用句があり、これには「もしも私があなたの立場だったら」という意味があります。困窮家庭やスポーツがやりたくてもできない子供の立場を想像し寄り添うという意味でも、「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトが良いのではないか、と取組が決まりました。
様々なNPO法人様へのヒアリングを通して、「家庭環境によって、スポーツを続けたくても続けられない子供たちがいる」ことが分かり、そうした子供たちがスポーツを続けられるようにサポートすることに意義があると考えたことも、取組を決めた理由となっています。

#your_shoes(ユア・シューズ)プロジェクトのPR

競技の枠を超えた14チームの強みを活かす

―取組を実施する上で、TOKYO UNITEという団体ならでは強みや独自性が活きた部分はありますか。

飯嶋:やはり、14チームに所属するそれぞれの選手や関係者の皆さんにご協力いただけるという強みが活きたと思います。チャリティーオークションやクラウドファンディングでは、選手のみなさんが実際に使用されていたシューズを出品するなど、魅力的なリターンが用意できたことで広く関心を持っていただくことができ、支援金をスムーズに集めることができました。

井上:独自性という意味では、単一のスポーツチームだけの取組ではないことも挙げられます。海外に比べ、日本のスポーツファンは1つのスポーツ、1つのチームだけを応援する傾向があり、良くも悪くもファン層があまり被りません。
TOKYO UNITEの場合は、競技やチームの枠を超えて14チームそれぞれのファンの方に広く告知できるので、ご支援いただける数もそれだけ増えていきます。これは、TOKYO UNITEの一つの独自性であると思います。

リターンとなるスパイクシューズを手にとる読売ジャイアンツ中島宏之選手

コレクティブ・インパクトを意識し、社会課題に取り組む姿勢を大切にしたい

―取組を進める中で、大切にされたことや重視されたことはありますか。

飯嶋:「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトというより、TOKYO UNITEそのものの話になるのですが、大切にしている考えが2つあります。
1つは、14チームそれぞれがフラットに意見を分かち合い、持続的な関係性を築くことです。もう1つは、東京都やNPO法人、ソーシャルイノベーションに関心のある企業など、そうした組織・団体と手を取り合って、社会課題に取り組む姿勢です。行政のみならず、様々な企業・団体が協力して社会課題に取り組むことは、コレクティブ・インパクトと呼ばれ、広がりを見せています。私たちも、様々な団体と連携し、多様性を持って社会課題に取り組む組織でありたいと考えています。

一人ひとりに合わせたシューズを届けるために、メーカーの協力も仰ぎ一足一足選んだ

―「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトを進める中で、どういったハードルや苦労がありましたか。また、それをどのように乗り越えたのでしょうか。

飯嶋:「シューズを本当に必要とする世帯に届ける」という取組は、一見シンプルなようで、子供一人ひとりにフィットする靴を個々に届けるということは非常に難しいことです。支援を届ける先として、認定NPO法人キッズドアさんが支援するキッズドアファミリーサポートの登録世帯を対象としましたが、すべての登録世帯と直接お話して、一緒に買いに行って選ぶということは現実的に困難でした。
そこで、支援先の方々からシューズのサイズ、性別、実施スポーツなどをヒアリングし、その情報を元にシューズメーカーさんから専門的なご意見をもらいながら「このご家庭には、このシューズが良いのでは」と一つ一つすり合わせて、シューズを決めていきました。すでにあるシューズをサイズだけ聞いてお送りするような形を取れば負担は減りますが、子供一人ひとりと向き合うということに意義があると考え、関係者の知見を結集してなんとかハードルを乗り越えてきました。

「これで安心してスポーツをさせてあげられる」という保護者の方からの言葉が励みになる

―関係者それぞれの知見を持ち寄り、一丸となって取組を進めてきたのですね。「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトに参加された子供や保護者の方からは、どのような感想や意見が寄せられていますか。

飯嶋:キッズドアさん経由で、単身世帯のお母さんから、「次男が卓球部なのですが、これまで専用シューズを買ってあげられませんでした。今回のプロジェクトで提供いただけて本当に嬉しいです。これからは安心して競技をさせてあげられます」というお声をいただいています。「安心して」という言葉をいただけたことに、私たちも本当に嬉しい気持ちになりました。
他には、小学生4年生の女の子から「靴が届いた日の夜に、靴紐の結び方をYouTubeで勉強して、次の日からさっそく学校にその靴を履いていきました!」というお声もいただいています。こちらの女の子は、ちょうどマジックテープの靴から靴紐に変わるタイミングだったとのことで、そうした成長に立ち会えたことも非常に喜ばしいことでした。

「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトの他に、参加型のスポーツイベントも企画

―現在実施されている取組をさらに改善、拡大されていくなど、今後の展望についてお伺いさせてください。また、新たに実施を企画されている取組などがあれば教えていただけますでしょうか。

飯嶋:未定ではありますが、「#your_shoes」(ユア・シューズ)プロジェクトは来年以降も継続したいと考えています。今回第1弾ということで課題や反省点もありましたので、来年はシューズメーカーさんとより深く連携するなど、改善しながらさらに多くの人に広げていきたいです。
また、2022年12月20日に、小学生を対象とした「TOKYO UNITE キッズスポーツフェス in 両国国技館」という参加無料のイベントを企画し、様々なスポーツ体験やスポーツに関する食や健康づくりの体験などに参加してもらうことができました。

「TOKYO UNITE キッズスポーツフェス in 両国国技館で、相撲の四股を教わる子供たち
「TOKYO UNITE キッズスポーツフェス in 両国国技館で、ラグビーボールの投げ方を教わる子供たち

子供たちに、夢や希望をあきらめてほしくない

―子供たちが楽しくスポーツで遊び、学べる場をつくり続けているのですね。最後に、子供たちや他の企業・団体様へのメッセージをいただけますでしょうか。

井上:子供たちに向けては、「夢や希望をあきらめないでほしい。手を差し伸べてくれる大人たちもいるから、あきらめるのではなく、あがいて自分からそういう大人を見つけてほしい」と伝えたいです。私たちも、支援が必要な子供に支援が届くように、保護者や子供たちに支援の手があることを気づいてもらえるように、もっと認知してもらうための活動をしていきたいと思います。私たちだけでなく、他にもそうした思いを持つ企業や団体はたくさんいらっしゃると思います。だから、子供たち自身にも、自分を助けてくれる大人を探してほしいですし、何より、夢や希望をあきらめないでほしいです。
また、私たちの取組にご賛同いただける企業・団体の皆様には、「ぜひ私たちと連携していきましょう。社会課題を解決するコレクティブ・インパクトは、仲間が多ければ多いほど、大きな取組ができるようになり、それだけ助けられる人も多くなります。社会貢献はしたいけれど、何をしていいか分からないという場合にも、ぜひ一緒に何ができるか考えさせてください。みんなで力を合わせて、よりよい社会をつくっていきましょう」とお伝えしたいです。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

どんな子供でも平等にスポーツへ関わる機会が拓かれ、子供たちが安心してスポーツを続けられる社会の実現に寄与するTOKYOUNITEの取組は、スポーツが持つ「人に夢を与える」という特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

紹介した企業・団体