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東京都

  • 子供の社会参画の機会創出
  • 誰一人取り残されないようサポート

掲載日:2023年1月11日

株式会社ファミリーマート

日本全国の店舗を活かした地域密着型の支援。「ファミマこども食堂」で子供たちの居場所をつくる

株式会社ファミリーマートでは、日本全国の様々な地域に展開するコンビニエンスストアという業態を活かし、地域密着型の取組を続けています。その中でも、地域の人々と共に子供を支援する取組である「ファミマこども食堂」について、サステナビリティ推進部の大澤寛之さんにお話を伺いました。
サステナビリティ推進部 大澤寛之さん

地域に子供が安心できる居場所をつくりたいという思いから始まった

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけをお伺いさせてください。

サステナビリティ推進部 大澤寛之さん(以下、大澤):2019年より、地域に子供たちの安心できる居場所をつくり、健やかな成長を支援することを目的とした「ファミマこども食堂」という取組を実施しています。コンビニエンスストアは、全国各地にフランチャイズ形式で展開・運営しているため、実は地域に紐づく個人商店という側面が強いという特徴があります。そのため、地域密着型の活動を大切にすることが根付いており、以前よりファミリーマートでは地域に貢献する活動を行っていたという背景がございます。
そうした中で、社内で「地域に子供が安心できる居場所がなくなってきているのでは」という問題提起があり、地域密着型で子供の支援につながる活動を模索し始めました。当時は、まだ世の中に「こども食堂」が広がり始めた頃で、貧困・困窮支援のイメージが大きかったのですが、調べるにつれて、貧困・困窮支援に限らず、誰でも参加できる居場所・コミュニティとしての役割を持つことも多いとわかりました。その形であれば、ファミリーマートも貢献することができるのではないかと話がまとまり、試行錯誤の末、2019年に「ファミマこども食堂」をスタートするに至りました。
人が集まる取組ということもあり、コロナ禍の影響を受け2020年春以降は開催が難しい状況が続いておりますが、2019年度の1年間だけでも全国で350回以上開催し、合計で約4,000人の子供と保護者の方に参加いただいています。

「ファミマこども食堂」に参加した子供たち

「ファミマこども食堂」では、食事だけでなく学びも提供する

―「ファミマこども食堂」の取組はどのような内容でしょうか。

大澤:一般に、こども食堂は無料のところと有料のところがありますが、「ファミマこども食堂」は大人400円・小中学生100円で開催しています。1回の開催で約10人程度の子供と保護者の方にご参加いただき、約90分の様々なプログラムを実施しています。
プログラムの内容は、半分が職場体験、半分が食事です。職場体験では、子供たちに店内の商品陳列や清掃を体験してもらい、コンビニエンスストアを通して働くことへの理解を深めてもらう内容になっています。保護者の方には子供たちが楽しく働く姿を見ていただいたり、写真を撮っていただいたりしており、親子のコミュニケーションの場にもなっています。
食事は店内イートインスペースでおこない、食事の他にクイズなどを実施して学びの時間にもなるよう工夫しています。提供する食事は、ファミリーマートで取り扱っている食品をお出ししているのですが、アレルギーや好き嫌いに配慮し、3種類のメニューから選べる方式をとっています。予めメニューを選んでいただくようにしているのは、フードロスをできるだけ出さないというSDGsの理念に沿うことも目的となっています。

―取組に関して、ファミリーマートさんならではの強みが活きた部分はありますか。

大澤:ファミリーマートはイートインスペースの設置割合が多く、そうしたハード面の特徴が役立ったと思います。また、「ファミマこども店長」という取組や「ありがとうの手紙コンテスト」という小学生作文コンテストを2009年から毎年開催するなど、元々企業として子供の支援に力を入れてきていた経験が活きた部分もあります。「ファミマこども店長」は、現在の職場体験プログラムのコンテンツにも反映されています。

商品陳列時、バックヤードをのぞき込む子供たち
清掃体験をする子供たち

納得して協力を得るため全国各地を飛び回る

―元々実施されていた子供への支援が、現在の「ファミマこども食堂」にも活きているのですね!これまで取組を進める中で、大切にしていたことや重視していたことはありますか。

大澤:関わる店舗の皆さまに、納得してご協力をいただくことです。「ファミマこども食堂」の実施は、店舗にとっては開催の準備に手間がかかるため、本部側で回数などを決めて強制的にやってもらうのではなく、しっかりと店舗の方々に説明をし、賛同してもらった上で開催することを重視しています。取組の開始当初はサステナビリティ推進部の社員が全国の事務所に行き、こども食堂について説明をし、加盟店の理解を深めてもらうという取組もおこないました。また、開催する際には本部から人を派遣する、加盟店に食事代や人件費を補助する等のサポートも実施しています。

―取組を進める中で、どういったハードルや苦労がありましたか。また、それをどのように乗り越えたのでしょうか。

大澤:社内外の理解をいかに得ていくかが大きなハードルでした。取組を始めた2019年頃は、まだ企業がこども食堂をやる事例自体が少なく、「コンビニがそんなことをやってどうするんだ」という声もありました。そうした中で、社内に対しては先ほどお伝えのとおり、地道に全国の事務所へ説明を行い、理解を深めていきました。
社外においては、ファミリーマートという名前を広く認知いただけていたことが幸いし、弊社が「こども食堂をやりました」となると、自治体や他企業様から「話を聞きたい」と言っていただけることがあり、そうした機会を通して理解が広がっていった手応えがありました。

「ファミマこども食堂」で食事をする子供たち

親子の交流、家族間の交流が深まる姿を見られることが大きな喜び

―地道な説明の中で理解が得られ、取組が広がってきたのですね。「ファミマこども食堂」に参加された子供や保護者の方からは、どのような感想や意見が寄せられていますか。

大澤:子供たちからは、「職場体験で、今まで知らなかったコンビニのことがわかって面白かった」「美味しいものを食べることができて嬉しかった」「普段は入れないコンビニの裏側に入れてワクワクした」といった喜びの声をいただくことが多いです。
保護者の方からは、「親子の交流や、参加したご家族同士の交流ができる良い機会になった」という声をいただいています。例えば、実際にあったケースでは、参加されたご家族同士が交流する中で、4月から子供が同じ小学校に通うと分かり、入学前に仲良くなることができたことがありました。こうした地域交流に貢献できるのは、我々としても非常に嬉しいことです。

取組を通じた社会貢献が、店舗スタッフのモチベーションにつながっている

―取組を実施する前と後で、社内の反応に変化はありましたか。

大澤:こども食堂を開催したとしても、直接的な売上や利益にはつながらないため、取組実施前には消極的な意見もありました。しかし、今では、積極的に開催しようという空気に変わっています。こども食堂の取組を通して自分たちの店舗が地域の役に立っていると実感できることや、取組におけるお客様との交流によってお客様のことをより理解できるようになることが喜びになり、「もっともっと開催していこう」と前のめりになっています。もちろん開催には準備等の負担もかかるのですが、それ以上に、こども食堂を開催することで得られるものがあるということが社内に浸透してきたと感じています。

「ファミマこども食堂」で様々なコミュニケーションが生まれる

食堂を拠点とした多世代交流の場を目指していきたい

―現在実施されている取組をさらに改善、拡大されていくなど、今後の展望についてお伺いさせてください。

大澤:「ファミマこども食堂」という名前から始まっておりますが、最近は「みんなの食堂」といった形で、どなたでもご参加いただくことができる食堂も展開していければと考えています。
ファミリーマートでは、こども食堂のみならず、シニア向けの地域交流の取組もおこなっています。そのプログラムとして、警察の方と協力した特殊詐欺防止の講習や、栄養士の方に栄養や食べ合わせのお話しなどをしていただく機会も提供しております。
コロナ禍が落ち着いて対面の交流が自然にできるようになれば、こども食堂やシニア向けの取組を再開し、食堂を拠点とした多世代交流の場にできるよう、企画を進めていきたいと考えております。

子供たちにとって安心できる場、様々な体験の場となればコンビニはもっと面白くなる

―最後に、子供たちや他の企業・団体様へのメッセージをいただけますでしょうか。

大澤:子供たちに向けては、「買物をする場としてだけではなく、様々な出会いや体験が得られる場として、コンビニエンスストアを利用してもらえるよう、これからも様々な取組を提供していきますので、ぜひ楽しみにご来店ください」とお伝えしたいです。お客様でも従業員でも、自然と多様な人々の受け皿になれることがコンビニエンスストアの長所です。子供たちが安心できる居場所であり続けると同時に、様々な出会いや体験の場になれれば、コンビニエンスストアはもっと面白くなれると思います。
他企業・団体様に向けては、「地域に根差した活動をされている企業・団体様とともに、一緒に手を取り合って、取組等ができましたら嬉しいです」とお伝えしたいです。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

子供たちが安心できる居場所を提供する「ファミマこども食堂」をはじめ、世代や属性を超えて人々が交流できる場の創出を続けるファミリーマートの取組は、全国各地の地域に密着して展開するコンビニエンスストアの特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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