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東京都

  • 子供の社会参画の機会創出
  • 子供を大切にする気運醸成

掲載日:2022年11月30日

株式会社イトーヨーカ堂

創業から続く「ステークホルダーに寄り添う経営」で、変化する時代の課題を捉え、ニーズに応え続ける

株式会社イトーヨーカ堂では、「いいもの。いつもの。」を届けるために、CSR活動においてセブン&アイグループ7つの重点課題を掲げ、出店地域の特性やニーズにあわせた幅広い取組を行っています。変化する時代の課題やニーズを的確に捉えた取組を次々と打ち出す秘訣について、経営企画室CSR・SDGs推進部の強矢(きょうや)健太郎さんにお話を伺いました。

経営企画室 CSR・SDGs推進部 強矢 健太郎さん

約半世紀にわたる「マタニティ育児相談」の取組が起点となり、子供のための様々な取組に発展

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけについてお伺いさせてください。

経営企画室CSR・SDGs推進部 強矢健太郎さん(以下:強矢):1972年に作られた社是に込められた「様々なステークホルダーに信頼される誠実な企業でありたい」という想いが起点となり、すべての取組が生まれてきました。
イトーヨーカ堂では、CSRという言葉が世の中に広まる前から、CSR活動に類する取組を展開しており、その主要な取組の一つに「マタニティ育児相談」があります。この取組は社是を定めた3年後の1975年から実施しており、イトーヨーカ堂の店舗に足を運んでくださる保護者が買い物に来た際に、弊社の育児相談員(直接雇用の保健師・助産師さん)が育児に関する相談に乗ることができるというものです。この時代には、まだ世の保護者が育児について相談できる場所やコミュニティが少ない上、家事に奔走する保護者にはその時間もないという状況でした。そこで、買い物に来た際に相談ができたらよいのではないかと考え、この取組が始まりました。実際に取り組む中で、「お客様に寄り添うこと」の大切さを深く肌で感じ、さらなる取組に展開していくという流れが会社にできました。2014年には、セブン&アイグループとしての重点課題を設定し、さらにSDGsの流れを踏まえ2021年にセブン&アイグループ7つの重点課題を改定しました。それらの課題に対応する形で「次世代育成の支援」や「マタニティ育児相談サービス」など、子供に関する取組を実施しています。

―1975年から取組を始められていたとは驚きです!現在実施している子供向けの取組にはどのようなものがございますか。

強矢:大きくは、三つの主要な取組を行っております。
一つ目は、先ほどもご紹介した「マタニティ育児相談」です。この取組では妊娠や出産・育児について悩みをもつ保護者に、買い物ついでに気軽に相談できる場所として利用いただいています。最近では、育児・介護のダブルケア等の相談も増えてきており、時代の変化とともに、私たちとして提供するサービスも随時アップデートしています。

マタニティ育児相談に訪れた親子と従業員が会話する様子

強矢:二つ目は、「小学生の職場見学」や「中学生の職業実習」の受け入れです。この取組は、新型コロナウイルス感染症流行前は、年間約1万人の生徒のみなさんにご来店いただいておりました。しかし、新型コロナウイルス感染症により店舗に来店しての見学や実習が激減しました。そのような中、ある店舗では、学校の先生方が店舗に足を運び、普段見ることができない店舗の裏側や仕事の進め方等をビデオ撮影し、学校の授業で使用していました。このやり方では先生方の負担が大きいと考え、現在では、弊社にて撮影・作成した「職業体験動画」をCSRページで配信しています。動画の視聴後にオンラインで学校と店舗をつなぎ、実際に働いている店長と自由に会話することができるコンテンツに改善するなど、取組内容をアップデートしています。 三つ目は「ちびっこ職場体験ツアー」で、親子で参加できるプログラムです。子供たちにとって、普段見ることのできない店舗の裏側は、ワクワクがいっぱいつまった宝庫です。そうした裏側を知ってもらうことで、店舗に来た際の楽しさが倍増し、買い物が楽しくなること、ファンになっていただくことを目標に取り組んでいます。

ちびっこ職場体験ツアーでレジ打ちを体験する子供

強矢:このような取組は、従業員にとっても良い時間になっているという声をもらいます。普段の買い物のタイミングだけでは、お客様と十分に対話する時間をとることが難しいですが、こうした取組を通してお客様と会話できる機会が増え、やりがいにつながっています。そうしたやりがいが、参加いただいた親子の皆様にもっと楽しんでもらいたいという気持ちに変わり、従業員自ら前のめりになって店舗ごとの企画を考えてくれるようになっています。
いまお伝えした主要な取組以外にも、今年の6月には「TOKYOこども見守りの輪プロジェクト」に参画し、店舗ごとに所轄の警察署や消防団と連携し、啓発イベントや表彰式等も実施しています。その際、ミニコンサートやキッチンカーによる食育促進等、さまざまな企画も展開しました。本プロジェクトへの参画に際し、東京都と協定を結びましたが、協定を結ぶこと自体は目的ではなく、従業員一人一人にこの協定の意義を理解・実践してもらうことを重視しています。店舗によっては600名を超える従業員がいますので、バックヤードのコミュニケーションボードなどを活用し、取組内容の周知を図っています。

※(この他にも、本記事に書き切れないほどたくさんのCSR活動を企画・実施されていることをお伺いし、取材した事務局一同、驚きを隠せませんでした!)

お子さまのお誕生日の際やイベント時に実施している足形スタンプ

地域コミュニティとしての役割を担い、基本に忠実に、変化に柔軟に対応することで、ステークホルダーのニーズに迅速に対応する

―たくさんの取組をされているのですね!こうした取組を企画する際に、イトーヨーカ堂さんが大切にしていたことを教えてください。

強矢:私たちの店舗は、単に商品を売るということではなく、地域コミュニティとしての役割も担っていると考えております。地域コミュニティとして機能するには、行政と連携しつつ、必要なサービスを必要とする人たちに届けるための活動を実施することが大切であると捉えています。具体例として、「マタニティ育児相談」の取組では、年1回行政訪問を実施しています。店舗近くの子育て支援センターと相談内容を共有し合うことで連携を深め、店舗に行政支援のパンフレットを設置するなど、そのサービスを必要としている市民に、きちんと届くようにするための活動を実施しています。
これらの活動は、子供や保護者の方々に貢献することができるだけに留まらず、時代とともに変化するお客様の課題やニーズを的確に捉え、店舗における適切な品揃えは何か、充実すべきサービスは何か、という店舗運営の改善の起点にもなっています。子供を大切にする取組が、私たちの事業としての学びにつながっていると感じています。

子育て支援センターなどで情報交換を行っている様子

ニーズを的確に把握し、時代に合わせてやり方を柔軟に変化させる

―子供を大切にする取組が、事業への学びにもつながっているということに、大変感銘を受けました!取組を始めるまで、もしくは始めてから、大変なこともあったかと思います。困難にぶつかった際、どのようにして乗り越えられたのでしょうか。

強矢:「マタニティ育児相談」においては、時代の変化に伴って相談者の悩みが多様化してきたことへの対応が大変でした。1975年当初は、時代の背景から専業主婦の方を想定し、お子様に関する相談をメインに実施していましたが、少子高齢化が進行する中で、そこに介護の悩みが加わったり、女性活躍の広がりによって子育てと就労の両立に関する話が加わったりと、相談内容が多様化してきました。そのため、現場の保健師・助産師さんからも「従来の体制だけでは対応が難しくなってきている」と声があがったため、どんな体制補填が必要かヒアリングした上で、「認知症サポーター養成講座」の企画や、地域包括支援センターと連携した支援を展開するなど、多様な相談に対応するための体制づくりに注力してきました。

参加者からの温かい言葉が、従業員のエンゲージメントを高め、新たな取組を生み出す

―子供や保護者のニーズ、悩みの変化に伴い、取組の体制も変えてこられたのですね。そのようにして取組をする中で、実際に取組に関わったお子様、保護者、従業員のみなさんから、どのような感想や意見が寄せられておりますか。

強矢:嬉しいことに、様々な取組に対してお褒めの言葉を頂いています。例えば、以前マタニティ育児相談を受けた保護者から、「相談させてもらった当時、赤ちゃんだったあの子が、今は大学生になって、今でもイトーヨーカ堂さんで買い物させてもらっているんですよ」といった報告をいただいたことがありました。さらには、保護者に連れられて相談に来ていた子供が大きくなった時に、相談員に会いに来てくださったこともありました。その際、「あのときの支援があったからこそ、今の私があります」といった言葉をいただいて、「ああ、本当にこの活動に関わることができてよかった」と感動したという話を従業員から聞きました。こうした言葉は、従業員のエンゲージメント、やりがいに直結しているのではないかと思います。子供を大切にする取組が起点となって従業員のやりがいが生まれ、そのやりがいからさらに子供やお客様のためになるような取組を考え、イトーヨーカ堂がさらに子供やお客様のためになる場所になっていく、という好循環が生まれていると感じています。先ほどご紹介した「ちびっこ職場体験ツアー」の企画も、実際の店舗の従業員から声が上がったものでした。関わるみんなにとって嬉しい企画が、もっと現場から生まれてきてほしいと思っています。

ちびっこ職場体験ツアーでお仕事の説明を受ける子供たち

日本全国、すべての店舗に取組を展開させる

―イトーヨーカ堂さんの中で、みんなが嬉しくなるような好循環が生まれていることを感じました。現在実施されている取組をさらに改良、拡大していく等、今後の展望やビジョンをお伺いさせていただけますか。

強矢:現在実施中の取組を、日本全国すべての店舗で実施できるよう、会社としての体制や仕組みの整備を進めているところです。

―イトーヨーカ堂さんの店舗は日本中にあるため、インパクトが大きそうですね!現在実施中の取組のほかにも、新たに企画している取組等があるのでしょうか。

強矢:検討中の企画として、ネットスーパーに関連する取組を企画しています。実店舗に足を運ぶことが珍しくなってくると、リアルな場でお子様が初めて経験する買い物は、思い出深いものになると考えています。そのため、楽しく買い物ができ、思い出がより良いものとなるような取組を企画したいと考えております。

子供たちの未来をよりワクワクしたものにするため、よりよいバトンを、次世代に繋いでいく

―最後に、子供たちや企業・団体様へのメッセージをいただけますでしょうか。

強矢:子供たちに向けては、「みなさんの未来がよりよいものになるよう私たちイトーヨーカ堂も引き続きたくさんのワクワクする取組を企画していきます。次の世代によいバトンを繋げていきますので、一緒に素敵な未来をつくっていきましょう!」とお伝えしたいです。
企業・団体の皆様に向けては、「社会課題が複雑化する中で、1社だけでは解決しきれない課題も多くあると思います。そうした課題に皆様と共に向き合い、共に持続可能な社会をつくっていきたいと思っております。ぜひ、一緒に良い取組を広げていきましょう!」とお伝えたいです。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

創業時から受け継がれる「いいもの。いつもの。」という想いによって紡がれてきたイトーヨーカ堂の様々な取組は、子供にとってのみならず、社会にとって必要不可欠なインフラである総合スーパーとしての特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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