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東京都

  • 子供の社会参画の機会創出
  • 子供を大切にする気運醸成

掲載日:2022年3月1日

株式会社 久米設計

小学生を対象に「自分の住みたい街」をテーマにした体験学習を開催
子供ならではの自由な発想を大切にする

東京都江東区に本拠を構え、小学校やホテルなどの設計を数多く手掛ける久米設計。2019年11月20日、同社は小学校2年生を対象に、街の設計体験学習を行いました。地元で働く人を知るためのきっかけとして開催したこの取組に対する想いを、担当の方々にインタビューしました。
取材を受けていただいたのは、広報全般を担当する社長室広報戦略グループ 露木久枝さん。取組内容全体の構築に関わった、名古屋支社 片山京祐さん、開発マネジメント本部 都市開発ソリューション部 郡司浩和さん。主にグループワークの構築をした設計本部 第6建築設計部 矢嶋優太さんです。

模型製作は小学生から設計事務所の「仕事」を理解してもらえる最適な方法です

―初めに、この取組がどのようなきっかけで始まったのか教えてください。

社長室広報戦略グループ 露木久枝さん(以下、露木):きっかけは、弊社の近くにある江東区立枝川小学校の「地元で働く人を知る」という授業の一環として、弊社へ協力のオファーを頂いたことです。
まずは「そもそも久米設計とはどのような会社なのか」を子供たちに知ってもらうところからのスタートでした。取組では、小学2年生8名に加えて、2名の保護者にご参加いただきました。

―取組の具体的な内容を教えて下さい。

開発マネジメント本部 都市開発ソリューション部 郡司浩和さん(以下、郡司):まず、我々がどのような仕事をしているのかということを子供たちに知ってもらうために、社内を見学していただきました。

オフィス見学をする子供たち

郡司:その後は、小学生を4人ずつ2チームに分けて、事前に用意した3つのカリキュラムに沿って、体験学習を行いました。両チームには、弊社の若手社員が2人ずつ付きました。体験学習のテーマは、「自分たちの住んでいる街をどのように設計すれば、より楽しい街になるか」というものです。
カリキュラムの1つ目はグループワークです。これは、人が暮らす街にはどんな建物や施設が必要かをグループみんなで考えるというものです。2つ目は、街の中に必要な施設などを自由に紙に書いていくゾーニングです。
3つ目はボリュームスタディです。チーム毎にそれぞれ大きさの異なるブロック(発泡スチロールの端材)を使って、建物の大きさや高さを考え、ブロックに、「映画館」や「ホテル」などの付箋を貼ります。そして付箋を貼ったブロックを、地図の上に自由に配置していくというものです。その後、出来上がった街の模型について、「どういった楽しさをイメージして作った街なのか」を両チームに発表してもらいました。

内容を分かりやすく説明するためにヒントを記載
子供たちが、ブロック(発泡スチロールの端材)を建築物に見立て、地図上に自由に配置する様子
開発マネジメント本部 都市開発ソリューション部 郡司浩和さん

郡司:ただ、小学2年生にとっては、少々難しい取組内容であると思ったため、「街には住む所・遊ぶ所・働く所がある」というヒントも作りました。アドバイスはその程度に留め、あまり否定はせず、子供たちに自由に考えて作ってもらいました。

―取組の内容を小学生の学習レベルに合わせて考えるのは、大切ですね。

露木:そうですね。2019年は小学生のほかに、宮城県の中学生に来社いただき、体験学習を行った実績もあります。そのほか、2018年と2019年、2021年には、大分県から修学旅行で来た高校生を対象として実施しました。大人を対象としたセミナーも開催したこともあります。それぞれの参加者の年齢に合わせて、カリキュラムも変更しています。
例えば高校生の場合は“設計事務所”の会社組織にはどのような機能が必要でどのように運営されているか、といった組織運営全般と社内ツアーを開催しました。実際に部署を回りつつどんな機能を持っているか、具体的にどんな仕事内容なのか説明しました。

高校生の社内見学時に配布した資料の一部

露木:設計事務所は、仕事内容を大々的にPRする機会が少ないです。参加した小学生は、設計事務所が具体的に何をしているのか知らなかったり、設計者が設計図を描いていることも知らなかったりします。弊社の体験学習は、地域交流のほか、設計事務所自体の理解向上としても有用だと感じています。

論理的だけでなく、直観的に発想してみることも失ってはならないと思いました

子供たちの自由な発想が現れている、ボリュームスタディの様子
設計本部 第6建築設計部 矢嶋優太さん

―体験学習は、貴社の設計にどのように活かせると思いますか。

設計本部 第6建築設計部 矢嶋優太さん:自分たちが今まで無意識に触れてきた映画館やプール、住宅といった建物に対しての捉え方が変わりました。子供たちが地図上に置いた映画館のブロックは、我々が実際に設計するサイズよりも非常に大きいものでした。「ウォータースライダーが欲しい」という意見もあり、非常に大きなブロックを地図の上に置いた子供もいました。これらのような新鮮な感覚を持ちながら、今ある街を見ることは、設計者として参考になると感じました。

名古屋支社 片山京祐さん

名古屋支社 片山京祐さん(以下、片山):子供たちは、「街を考えてみてください」というテーマに対して、自分が楽しかった思い出を組み込んでいました。我々も論理的に考えるだけでなく、直観的に発想してみることも失ってはならないと思いました。
我々は設計に対して、論理的に考える割合が多いですが、この体験教室で、感動したことや、人の心を動かすこと、実体験に基づいた楽しかった要素を、形として都市、建築の中にもっと盛り込むべきなのではないかと学びました。
体験学習は子供向けでしたが「楽しい街を作りたい」という欲望は、大人の中にも必ずあると思っています。そういった想いを建築に反映させるという意味で、我々としても有意義な体験だと思います。

論理的だけでなく、直観的に発想してみることも失ってはならないと思いました

―取組に参加した保護者の方は、どのような反応を示していましたか。

露木:実際にブロックを使って街の設計を考えているとき「ええ〜、こんなの作るの?」と驚かれていました。この取組を通じて、普段接している自分の子供に対しても、新たな一面を見ることが出来たという意見を多くいただきます。

―取組に参加した小学生は、どのような反応を示していましたか。

露木:弊社に対して、親しみを持ってもらえたかと思います。実際に「今度遊びに行っていい?」と言われたりもしました。後日、参加された子供からお手紙をいただくこともありました。

体験学習に参加した生徒からの手紙

―この取組は、コストなどの面において、会社にとって負担と感じる部分もあるかと思います。

郡司:ボリュームスタディで使用するブロックは、弊社に元からあった発泡スチロールの端材で作ったものです。取組自体も弊社内で行っているため、負担に感じたということはありません。

片山:またイメージとして「体験していただく」というよりも「体験を与える」ということを意識して取り組んでいます。私は、物作りを好きになるという経験の積み重ねがあったから、今この仕事をしています。そのように考えると「未来の設計者を作る、育てる」という感覚で取り組むべきだろうと考えています。

―貴社は今後、子供を対象とした取組として、どのようなことを考えていますか。

露木:弊社が設計した小学校などに我々が出向いて、体験学習をさせていただくということも考えております。

片山:私は直近で小学校の設計をしており、その小学校は、2022年の4月に開校します。どういうところが使いやすいのか、または使いにくいのか、といったリアルな反応が、今後私の耳に入ってきた時、次の設計にもそれを活かしたいと考えています。

「設計」という仕事を知って興味を持ってもらい、この体験が将来の姿に繋がるのなら。そんな想いが込められた久米設計の取組。社員の皆さんも小学生の新鮮でユニークな発想に大いに刺激を受けた様子でした。参加した小学生も、なかなか触れることのない「設計」という仕事に触れたことで、今まで無意識に暮らしていた街のいたるところに、たくさんの人の考えや想いが詰まっていることを知れたと思います。当初のきっかけであった子供たちに「会社を知ってもらう」ことだけに留まらず、こうした取組によって、自分たちの街を見る目が変わったかもしれません。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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