本文へ移動

東京都

  • 子供の成長応援

掲載日:2023年2月2日

セイコーグループ株式会社・セイコーミュージアム銀座

140年を超える歴史と世界初・日本初の技術を活かした「本物の体験」を通じて、子供たちの未来を育む

セイコーグループ株式会社は、持続可能な社会発展に貢献するために13の重要課題を掲げ、そのうちの1つである「次の世代の育成・支援」として、腕時計をはじめとする精密機器を扱う企業ならではの取組を行っています。140年を超える歴史を有し、世界初・日本初を生み出してきた技術を持って、子供向けに提供する「本物」の体験学習について、セイコーグループ株式会社の安井稚葉さん、セイコーミュージアム銀座の東野由佳さん、宮寺昇さんにお話を伺いました。

左からセイコーミュージアム 銀座 副館長 宮寺昇さん、東野由佳さん、セイコーグループ株式会社 コーポレートブランディング部 安井稚葉さん

笑顔あふれる未来を育むために、より多くの子供たちに体験を届けたい

―子供向けの取組を始めた背景、理由、きっかけをお伺いさせてください。

セイコーグループ株式会社 安井稚葉さん(以下、安井):従前からセイコーミュージアムで提供してきた来館型の子供向けの体験学習を、より多くの子供たちに届けたいと考えたことがきっかけです。そのためには、自社の社員が様々な場所に出向く出張型の体験学習が必要と考え、全社的な取組として「セイコーわくわく教室」を立ち上げました。
また、子供向けの取組を展開していくことは、全社方針とも関わりがあります。2021年に創業140周年を迎えたことをきっかけに、セイコーグループは” 革新へのあくなき挑戦で、人々と社会に信頼と感動をもたらし、世界中が笑顔であふれる未来を創ります”というグループパーパスを制定しました。また、次の10年に向けて、社会課題解決型の事業を展開する企業となることを掲げています。あわせて、持続可能な社会発展への貢献を目的とした「サステナビリティ方針」における13の重要課題の1つに「次の世代の育成・支援」を掲げており、子供たちの笑顔あふれる未来を育むことを目指しています。

セイコーミュージアム銀座 宮寺昇さん(以下、宮寺):セイコーミュージアムでは、2012年の一般公開をきっかけに子供向けの取組を始めました。当初は、「時と時計」に関する資料・標本の収集・保存と研究を目的とする資料館として1981年に設立されましたが、一般公開をきっかけに社会貢献に注力することとしました。そのため、従来の研究機関としての機能に学習・教育機能を加え、徐々に子供向けのワークショップなどを企画・実施し、現在は「セイコーわくわく教室」と連携した来館型の子供向けの体験学習を提供しています。

セイコーミュージアム銀座 東野由佳さん(以下、東野):若年層で時計離れが進む中で、早くから時計や時間に親しみを持ってもらえたら嬉しいという想いもあって、子供向けイベントを開催することになりました。

セイコーグループならではの「時」や「ものづくり」にまつわる体験を提供

―「セイコーわくわく教室」の取組はどのような内容でしょうか。

安井:セイコーグループならではの4つの体験学習として、「わくわく時計教室」「わくわく環境教室」「わくわくスポーツ教室」「わくわく音楽教室」を、小学生から中高生向けに提供しています。今回は、2017年にスタートした最初の体験学習である「わくわく時計教室」を中心に紹介いたします。
「わくわく時計教室」は、小学校の授業単元に紐づけて、様々な角度から「時」について考える小学生向けの無償の体験学習です。セイコーグループの社員が講師として出張授業を行い、理科の学習内容と社会や日常生活を結びつけた学習・体験を提供しています。人類と時の関わりの歴史や、時刻情報を支える技術の進化などを学習する中で、理科の学習内容である「ふりこ」の等時性が応用されることで時計の精度が進化し、私たちの便利な暮らしを支えていることを学ぶことができます。実際に、腕時計の中の小さな部品を観察しながら、1秒を刻む小さな部品の精緻な動きを体験したり、本物の時計のネジをつまんで0.9mmの穴に入れる時計職人の技へ挑戦する体験など、ここでしかできない体験を提供しています。銀座四丁目の時計塔屋上にご招待し、太陽の動きで自然の時間を示す「日時計」について学び、子供たちが実際に日時計を作って実験するプログラムもあり、学習とともに実際のものづくり体験ができることがポイントです。

わくわく時計教室

東野:セイコーミュージアム銀座で提供している「わくわく時計教室・ウオッチ組み立て編/お絵かきクロック編」も、「わくわく時計教室」のプログラムのひとつです。
「わくわく時計教室・ウオッチ組み立て編」は、クオーツ式の腕時計の組み立てを体験する小学3年生から6年生向けのプログラムです。セイコーグループの職人経験者が講師を務め、時計の仕組みや種類などの基礎知識を学んだうえで、実際に組み立てをします。
「わくわく時計教室・お絵かきクロック編」は、時計の文字板にお絵かきをしてオリジナルクロックの制作を体験する5歳から8歳向けのプログラムです。掛時計を提供して、自由に絵を描いたり、ステッカーを貼ったりして、オリジナリティのある世界にひとつだけの時計を制作します。
いずれも材料費の実費相当のみを頂くプログラムとなっておりますが、子供が自分自身で時計を作る・デザインする実際のものづくり体験が貴重なためか、プログラムの受付開始後にすぐにチケットが完売するなど、子供と保護者の方に大変ご好評いただいています。

わくわく時計教室・ウオッチ組み立て編

安井:その他の「わくわく環境教室」「わくわくスポーツ教室」「わくわく音楽教室」も、セイコーグループならではの「時」や「ものづくり」にまつわる体験学習を無償提供するプログラムです。セイコーの高級機械式腕時計は岩手県雫石の工房で、時計職人が命を吹き込んでいます。工房の周りにある森で、生物多様性や自然保護についてフィールドワークを通して学ぶのが「わくわく環境教室」です。「わくわくスポーツ教室」では、一流アスリートの教えと、世界大会で使われる本物の機材を使って、スポーツを支える「時」の大切さを学ぶ体験を小中高生向けに届けています。

わくわく環境教室

世界や日本をリードしてきた技術を活かして子供たちに「本物」の体験を届ける

―「セイコーグループならでは」というワードもございましたが、取組におけるセイコーグループさんならではの強みは、どのような点にあると考えられていますか。

安井:子供たちに「本物」の体験を届けられることです。セイコーグループは140年を超える歴史の中で数々の挑戦を行っており、世界初・日本初の技術を世に送り出してきました。例えば、「世界初のクオーツ式腕時計」や「日本初のめざまし時計」などの開発や、1964年の東京オリンピックではアジア初の公式計時に取り組みました。そして、卓越した技能者(現代の名工)として国に認定された時計職人もいます。このように、子供たちに伝えられる財産を豊富に有していると考えています。

東野:「本物」の体験を通じて、達成感を得ることと、物を大切にする心を養えることも強みと考えています。子供が自分自身で時計を作ることで、物を大切にして、長く使うという習慣ができます。時計作りの体験をしてから数年後に「時計が故障してしまったから直してほしい」と来てくれる子供もいて、「本物」の体験だからこそ子供たちの行動変容にも繋がっていると感じることもありました。

―これまで取組を進める中で、大切にされたことや重視されたことはありますか。

安井:私たちの便利な生活は、様々な技術に支えられているということを、子供たちに自分ごととして感じてほしいと思っています。時間はとても身近で、今は正確な時間があたり前に分かりますが、その裏にある技術革新や、背景の社会構造、人々の思いなどを考えることで、自分の将来について幅広く考えるきっかけになったらと考えています。

東野:専門的な分野かつ精密機器を扱う体験を提供しているため、子供目線での丁寧さも大切にしています。例えば、説明の際に子供でも理解しやすい言葉に置き換えることや、作業の遅れや先走ることのないよう細かく作業工程を区切ることなどの配慮をしています。早くから時計や時間に親しみを持ってもらうことも目的としていますので、子供にとって楽しく、やりがいのある体験となるように心がけています。

子供たちの「わくわく」や「輝く未来」を生み出している実感が喜び

―体験学習に参加された子供や保護者の方からは、どのような感想や意見が寄せられていますか。

東野:セイコーミュージアムの体験に毎年来てくれる子供もいますし、保護者の方から「下の子も大きくなったら体験させてあげたい」と仰っていただき、数年後に実際に連れて来てくださることもありました。保護者の方々による口コミが学校内で広まったことで参加される方もいます。実際に体験した方の評判から参加者が広がることやリピーターが生まれるような体験を提供できていることが嬉しいですね。

安井:「時計や時間を大切にしたい」「セイコーグループのような皆のためになる仕事をしたい」「本物に触れることで、自分の夢を見つけようと思った」などの声も多く寄せられています。物や時間を大切にすることや、夢について考えるきっかけになっていることは、「セイコーわくわく教室」のキャッチコピーでもある「わくわくするたび、未来が輝く」の体現に近づいていますし、本当に嬉しいですね。

子供たちを喜ばせるための視点が生まれたことで、新たな企画の発案にも繋がっている

―取組を実施する前と後で、社内の反応に変化はありましたか。

東野:セイコーミュージアムにおいて、「子供たちに喜んでもらうためにはどうしたらいいか」という視点が芽生えたという変化を感じています。元々は研究機関であったため、主に技術者や専門家などが訪れる施設だったのですが、一般公開をきっかけに子供たちも来館するようになり、「どのような展示なら子供が楽しめるか。どのように説明するとわかりやすいか」といった議論が活発になりました。実際に、そのような文化醸成を通じて、「セイコーキッズ」という子供向けホームページの開設や、子供向けキャラクターの誕生、夏休み企画である「セイコー博士になろう!クイズ」の開催など新たな企画の発案にも繋がっています。

「より多くの子どもに体験」を実現するため、デジタル活用や海外展開を視野

―現在実施されている取組をさらに改善、拡大されていくなど、今後の展望についてお伺いさせてください。

安井:より多くの子供に体験を届けるため、「セイコーわくわく教室」のプログラム・対象年齢・開催地域などをさらに広げたいと考えています。経済産業省の「未来の教室 STEAMライブラリー事業」にも参画し、中高生をメインとしたより高度な教材を動画で公開しています。このような積極的なデジタル活用とともに、海外展開も視野に入れています。

デジタル社会だからこそ、「本物」の体験から気づきを得てほしい

―最後に、子供たちや他の企業・団体様へのメッセージをいただけますでしょうか。

一同:子供たちに向けては、「ぜひ、「本物」の体験をしてほしい。スマートフォンで検索すれば沢山の情報がすぐに出てきますが、実際に一流の人と会い、会話をして、「本物」の体験をすることで、大切な経験や自分の未来が変わるきっかけを得られます。これからも「本物」の体験を提供し続けていきますので、体験学習への参加や、セイコーミュージアム銀座に来館していただけたら嬉しいです」とお伝えしたいです。
他企業・団体様に向けては、「時間という切り口はコラボレーションの幅も広いと考えています。「本物」の体験を提供することへの共感や、多様な地域展開に関心を有する企業・団体様とともに一緒に活動を拡大できたら嬉しいです」とお伝えしたいです。

―素敵なメッセージをいただき、ありがとうございました!

子供たちへの「本物」の体験の提供を通じて、質の高い学びの場を創出するセイコーグループ株式会社の取組は、140年以上にわたり時計をはじめとした精密機器を作り続けてきた高度な知識・技術・経験を有する企業としての特性が十二分に発揮された意義のある活動です。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

紹介した企業・団体