掲載日:2022年3月1日
株式会社トイカード
子供たちにおもちゃと遊ぶ場所を提供し『世界こども博』へと発展させたい
株式会社トイカード(以下、トイカード)は、一般社団法人日本玩具協会の決議により、1987年に玩具業界61社の共同出資によって設立されました。現在も日本玩具協会とトイカードは二人三脚体制で、おもちゃの普及活動を実施しています。トイカードのこれまでの活動、また今後の抱負について代表取締役 社長を務める弓野淳一さん、そして営業部の中嶋水香さん(以下、中嶋)にインタビューしてきました。
子供たちの成長に欠かせないおもちゃを、色々な側面から支える存在
―まずはトイカードのメイン事業である「こども商品券」についてお聞かせください。
弓野淳一 社長(以下、弓野):トイカードの核となる事業は、社名の通り「こども商品券」を発行し、それを広く社会へと普及させることです。「こども商品券」は全国の加盟店で、おもちゃやその他の子供用品と引き換えることができます。
最近では遊園地や動物園などアミューズメント施設での利用や、育児にまつわる製品購入なども可能となるなど、徐々に使い道が増えてきました。そのため中野区等都内多くの市区町村では、子育て応援ギフト券として「こども商品券」が贈呈されています。
―その他の取組や活動内容についてもお伺いさせてください。
弓野:トイカードの活動は「こども商品券」関連だけに止まりません。ひとつがおもちゃを使ったイベント活動です。昨今、街の玩具店や玩具売り場は激減しています。2005年には6000売場以上ありましたが、現在は3830売場ほどまでに縮小しました。特に玩具専門店は1000売場を切るほどになっています。
弓野:街のおもちゃ屋さんって、かつては子供たちが親以外の大人と最初に接するような場所でした。友達同士で順番を決めて遊んだり、できあがったプラモデルを店員さんに自慢しに行ったり。あるいはルールを守らない時は注意されたりもしました。つまり子供たちが社会経験を積んでいく上でのコミュニティの場として機能していたと思うんです。大規模量販店やインターネット販売の普及が進む中、おもちゃと接する場所はこれ以上失ってはならないと考えました。
おもちゃを実際に触って遊べる場所を提供するイベント活動
―たしかにおもちゃ屋さんを中心としたコミュニティは減ってきていますよね。具体的にどのようにおもちゃと接する場所や機会も設けたのでしょうか。
弓野:「おもちゃ博」「アソボーフェスタ」などへの協賛、参加などです。日本玩具協会や自治体、玩具メーカーを中心とする企業や全国のおもちゃ屋さんが集まり、子供たちに「おもちゃとともに、おもちゃで遊べる場」を提供する活動です。過去には東京・自由が丘のスイーツフェスタ内などで実施しました。
―運営に携わるにあたって大事にしていることや工夫などはあるのでしょうか。
弓野:自由が丘のスィーツフェスタなど、必ず地元の自治体、大学、異業種などとコラボをして“おもちゃと触れ合う機会”を地域に根付かせることを重視しております。
加えて意識しているのは、実際に触れてもらうおもちゃは子供の五感を刺激する、手先が器用になる、そういったアナログなおもちゃを用意している部分ですね。最近は物心ついてからタブレットしか触ったことのない子供も多いと聞きます。アナログなおもちゃの良さを知ってほしい。
―日本玩具協会との連携はどのような形で進めているのでしょうか。
弓野:前述の自由が丘もそうですが、我々が手がけている地域の事例などは日本玩具協会さんだけではなかなか動けないことが多いので、比較的小回りの効く我々が地域との連携部分で窓口となり協会やメーカーとつなぐ、という形で役割分担しております。
またアソボーフェスタは、地域の玩具店ネットワークが主体で、メーカーにはおもちゃを協賛していただくのですが、イベント後には来場した子供の意見を玩具店から吸い上げ、それらの生の声を情報整理して各協賛メーカーへフィードバックする事もしております。我々は橋渡し役となってエンドユーザーとメーカーをつなぎ、より子供が楽しめる商品開発の一旦を担っているといえます。
―そういった活動の根幹にあるのはどのような想いなのでしょうか。
弓野:玩具業界に貢献することが目的の一つですが、根底にある動機は、子供たちがもっとおもちゃで遊び、そして健やかに育ってもらいたいということ。おもちゃで子供たちを笑顔にしたいという願いです。外で遊ぶ機会が減り、インターネットやゲームが普及し、おもちゃを買うにしてもインターネット経由という現在だからこそ、リアルなおもちゃを手に取って遊ぶことの大切さを訴えていきたい。
いかに世の中の学習方法やエンターテイメントが多様化しているとはいえ、赤ちゃんの頃から小学生くらいまでは、手に取って遊ぶアナログのおもちゃを使って、成長に必要なで五感を養ってほしいですね。
東日本大震災の復興支援が発端
―東日本大震災への支援活動がこういった活動の契機になったとお伺いしております。
弓野:「東北おもちゃ博」「ふくしまキッズ博」への協賛、参加について、我々は主催者ではないものの、企画提案し、関係各所へ協力要請し立ち上げたイベントです。実は以前からこうしたイベントの重要性を訴えてきました。その根底には2011年の東日本大震災への支援活動がありました。震災被害に遭った子供たちのために、おもちゃを寄付したり、また現地でおもちゃショーを実施したのです。
私が日本玩具協会を通して玩具業界を筆頭に支援を募り、賛同いただけた大学の施設を借り、大学生たちに手伝ってもらいながら、仙台・福島で子供たちのためのイベントを実施することができました。当初は我々や玩具関連メーカーが主体となって実施していましたが、復興が進むにつれて、現地の大学や自治体が主体となって運営されるようになりました。これら東北でのイベントは、コロナ禍による一時的な中止はあったものの、現在も継続しています。
―大学生との連携はいかがでしたか。
弓野:大学生は子供たちとの感性が近いといえばいいのでしょうか。我々(主催者側の大人たち)よりも子供との接し方がうまいと感じました。また、特に教育やスポーツを学んでいる大学生だと、子供に遊びやスポーツを教えることは、大学生にとっても勉強になるようでした。
子供たちを災害から助ける『こども・笑顔創出プロジェクト』
―支援活動も拡大されているとお伺いしました。
弓野:2013年のクリスマスにはさらなる復興支援として、被災地の子供たちにクリスマスプレゼントを贈りたいというアメリカンスクールと協力して、「こども商品券」を活用した支援活動を行ないました。これはその後、2017年に一般社団法人こども・笑顔創出プロジェクトという別法人となって現在も継続しています。東日本大震災後のみならず、国内の地震や大型台風などの自然災害についても関係各社と協力し、被災地のこども達におもちゃを通じて笑顔をお届けししております。
「こども・笑顔創出プロジェクト」の活動で実際に支援現場に頻繁に駆けつけた中嶋さんにお伺いしました。
―こども・笑顔創出プロジェクトの内容について教えてください。
営業部 中嶋水香さん:関係各所や一般の方にも寄付を募って、それを『こども商品券』へと変えて被災地の子供たちにお届けします。こうした支援をする際は、現地にいる子供たちの年齢や性別を考慮する必要がなく、しかも物流コストもかからない『こども商品券』が便利なツールとして役立ちました。
現物ではない商品券なので「好きなおもちゃが買える!」と子供たちも大変喜んでいました。そういった現場での子供たちのリアクションが、『おもちゃ博』やアソボーフェスタ』といった“実物のおもちゃで遊んで楽しんでもらう”イベント活動の理由の一つにもなっています。また今後は自然災害だけでなく、養護施設などへの支援も含めて、包括的な活動をしたいと考えています。
また普段会社で働いていると、実際に子供と触れ合う機会は限られていますが、現地に行って子供がおもちゃで楽しんで、笑顔になっている様子を見るとやりがいを感じますね。
ご両親からお礼のお手紙やメールをいただくこともあります。
「震災で精神的に参っていたときに唯一の救いになりました。
子供たちの笑顔を久しぶりに見た気がしました。
嫌なことばかりの震災被害のなかで、これだけは一生忘れないいい思い出になりました。」
このような言葉をいただきました。私たちにとっても励みになります。
『東京おもちゃショー』を、世界に通じる『世界こども博』へ
―改めて弓野代表にお伺いします。今後の子供向けの取組についてどのような展望をお持ちでしょうか。
弓野:現在、我々には更なる目標があります。それは、日本玩具協会が主催となって50年近く続けられている「東京おもちゃショー」をより大きなものにしていくことです。2000年代後半からは「東京おもちゃショー」に、自動車メーカーや住宅メーカー、食品メーカーなどの異業種をマッチングさせた「キッズライフゾーン」が誕生しました。
弓野:おもちゃで遊ぶというのは子供の生活の一部なので、住宅や自動車、食品などとも密接に関わりあっています。今後はその幅をもっと拡げて、スポーツとか文化活動とかを織り交ぜた一大ベントとして発展できればと思っています。玩具業界各社とこどもスマイルムーブメントに参画されている各企業、学校関係者の方々と協力して、将来的には「東京おもちゃショー」を「世界こども博」に成長させることが出来れば素晴らしいと思います。
そして日本だけでなく世界の子供たちに来ていただくのです。体験してくださった諸外国の方々は、日本と日本のおもちゃのことを、もっと好きになっていただける。そんな子供たちがやがて世界の未来を担うのだから、結果として日本の発展にも貢献すると思います。
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