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東京都

  • 子供の成長応援
  • 子供を大切にする気運醸成

掲載日:2022年3月1日

東京家政学院大学 児童学科

地域の子供たちへ“思い出があふれる場所”を提供する「森のようちえん」

“地域に根ざした活動”という理念のもとスタートした「森のようちえん」。東京家政学院大学の専門性を生かした地域貢献活動の一つとして、また保育者や教員を目指す学生たちにとって自然体験活動指導の場の一つとして2014年に始まった取組です。キャンパス内にある森をフィールドとして、探検やクラフトなど、四季折々の自然遊びを行うことで、子供が豊かな心を育むだけでなく、学生にとっての学びともなる取組です。

自然からの学びを通じて子供と学生の心を豊かにする

都心にも雪が舞った翌日の2022年2月。所々に雪が残る東京家政学院大学町田キャンパスには、寒さに負けぬ子供たちの元気な声が響いていました。

参加対象は、町田、八王子、相模原など大学近隣地域の4歳〜小学3年生。「森のようちえん」は企画から運営までのすべてを学生が主体となって進めており、本年度7回目の開催となったこの日は20名ほどの子供たちが参加していました。リピーターも多く、大学のホームページに案内募集が掲載されるとあっという間に枠が埋まるほどの人気ぶりです。

イベントの説明風景

受付を済ませ、保護者から学生へと託された子供たちは、年齢ごとにグループ分けされ、それぞれのグループに担当学生が付きます。担当学生は、早速、ふーちゃん、ゆきちゃんなど、子供たちが覚えやすく呼びやすい名前で自己紹介し、今日の流れを説明します。今日は森に入って“自然と触れ合い学ぶ”ゲームが予定されています。

説明が終わりキャンパス内の森に進むと、そこは一面の銀世界。子供たちはワクワクを抑えきれず、一斉に雪合戦が始まりました。

積もった雪を手に取って遊ぶ子供たち

子供たちがケガをしないように、滑りやすい急斜面に行かないように、学生は1人で1〜2名の子供に目を配りながらさりげなく注意を払います。子供たちは、年上の子が年下の子に優しく声掛けしてあげたり、年下の子が年上の子にちょっと甘えてみたり、互いに名前を呼び合いながら分け隔てなく遊んでいました。

学生が主体となって“自然と触れ合い学ぶ”ゲームを企画

プログラムの中心は学生たちが主体となって考えた、自然が学べる数種類のゲーム。子供が自然をより身近に感じられるような内容のものを選び、対象年齢に合わせて学生がアレンジしたものです。

ゲーム「わたしの木」
ルール
① 出題者を1人選び、他のメンバーは回答者となる。
② 出題者は木を1本選び、回答者はその木をタオルで目隠ししたまま触る
③ 元の場所に戻り、回答者は目隠しを外す
④ ②で触った木がどの木なのかを探し当てる

対象の木まで目隠しの状態で誘導される子供たち
木を抱きしめながら匂いを嗅ぐ子供

回答者になった子供たちは、目隠ししたまま出題者が選んだ木を抱きしめて「ボコッとしてる」「ツルツル、細長い」「スイカみたいな匂いがする」などと口にしながら、視覚以外の感覚で幹や枝や葉っぱの特徴を捉えていきます。
その後、目隠しを取った回答者の子供たちは出題された木を探し当てるため、周りの木を次々に触り、また匂いを嗅ぎながら正解の木を探していきます。視覚だけでなく感覚全てを使って自然を感じることの大切さを学んでほしい、という想いで学生が選んだゲームです。

ゲーム「木の葉カルタ」
ルール
① 拾い集めた木の葉の名前と形を覚える
② 木の葉を地面に並べる
③ 指された子供が指定された木の葉の名前を当てる

山道で子供たちに説明しながら採取していた、ホオノキ、ヒノキ、スギ、アオキ、ツバキ、ミヤコザサなどの木の葉や、細長い形のコナラ、栗の形に似たクヌギのどんぐりを使ったこのゲーム。子供に、遊び感覚で自然を学んでほしい、という学生の工夫が盛り込まれたゲームです。 「こっちがホオノキ!」「どっちも一緒だよ!!」と選んだ木の葉について、回答者だけでなくみんなでワイワイと当てあいっこしながら学んでいきます。

木の葉を触りながら正解は何か考える子供たち

子供たちの行動や反応を尊重し、楽しそうに遊んでいる時や夢中で取り組んでいる時には無理に工程を先に進めないよう配慮を心掛けています。そのため準備していたゲーム3つのうち2つしか行えませんでしたが、予定の2時間が終了。笑顔にあふれた子供たちが保護者の元に駆け寄り楽しそうに活動内容を報告する姿が印象的でした。

参加した子供たちは自然とのふれあい体験に大満足

大友祐太くん(7歳)とお父様

元気に走り回っていた男の子の親子に今日の感想を聞いてみました。

「楽しかった!木を抱っこしたし、雪もさわれたよ!」大友祐太くん(7歳)
「自然の中で体験しながら遊べるのが面白い。『森の声が聞こえた!木の実見たよ!』と笑顔で教えてくれました」優しい微笑みで感想を述べてくれたお父様。

露木春晴くん(5歳)とお父様

年長さんの男の子の親子にも今日の感想を伺いました。

「雪が冷たかった!葉っぱもたくさん見つけた!」と露木春晴くん(5歳)
「学生さんも楽しそうに接してくれるからこそ、子供にもその楽しさが伝わると思います。参加してよかったです」と春晴くんを抱きしめながら語ってくれました。

成長の実感も!地域に根付く「森のようちえん」の取組

学生にもすっかり慣れた様子の子供たち

保護者の方からもコメントを頂きました。

東京家政学院大学が子育て支援活動として取り組んでいる「ぽかぽかひろば」から参加された男の子のお母様より
「いつも到着すると一目散に学生のお姉さんの元に駆け寄っていきます。お姉さんと一緒に走ったり、遊んだり、普段見られないような明るい表情を見せてくれています」とお話いただきました。

また別のお母様からは
「めいっ子が参加したのがきっかけで参加するようになりました。夏のお泊まりキャンプも参加していますが、森ならではの体験や遊びを通じて、木や葉っぱの名前をどんどん覚えて教えてくれます。いつのまにか親よりも子供の方が自然について詳しくなっています」と子供が成長していく姿について感慨深そうにお話されていたのが印象的でした。

目線を合わせ、子供一人ひとりの気持ちに寄り添っていきたい

歌城真子さん(左)、奥嶋菜月さん(中央)、大下夏乃さん(右)

3年生の大下夏乃さんに、子供の行動で印象的だったことを質問してみました。

「“わたしの木”というゲームに参加した子供が“スイカの匂いがする!”というので驚きました。そう言われてみると、たしかにスイカのような匂いがします。子供ならではの柔軟な感覚や視点には毎回驚かされますし、次回の企画発案にも子供たちから学んだ点を活かしていきたいですね」

また、引率を担当するにあたって心がけていることはなんですか。

「元気いっぱいの男の子や、恥ずかしがり屋な女の子、子供一人一人の特徴や性格も違うのでその子にあった声の掛け方をするなど工夫しています。どんな事に興味があり、どんな遊びが好きなのかを知ることのできる実践の場になっています」

同じく3年生の奥嶋菜月さんにも聞いてみました。

「木の葉かるたの時に大きな種類の葉っぱを教えてあげたら、自分で工夫してお面を作ったりして自主的に遊んでいるのを見て、子供の発想や工夫って面白いなと感じました」

同じく3年生の歌城真子さんには、引率を担当するにあたって心がけていることを質問しました。

「自由な時間と、計画的に進行する時間のバランスを考えながら行動するように努めました。将来の夢は、幼稚園の先生として子供一人ひとりをしっかり見て、その子に合った関わり方ができるようになりたいです」

藤島華乃さん(左)、網代優紀乃さん(右)

企画運営をしている2年生にもお話を伺いました。この日の主任役は、小学校の先生を目指しているというふーちゃんこと藤島華乃さん。引率を担当するにあたって心がけていることはなんですか、と聞いてみたところ、

「今回初めて主任を務めましたが、チームで集中して取り組んでもらうことを意識して、合間合間に大きな声で合図を出すなど、メリハリをつけました」

子供の目線の高さに合わせて屈んだり、優しく手を繋ぐ姿が印象的でした。

明るくわかりやすく丁寧な言葉で子供たちと接していた2年生、ゆきちゃんこと網代優紀乃さん。子供の行動で印象的だったことはなんですか。

「自分が子供の頃に比べて携帯やSNSが普及していて、子供の方が知識が豊富。私たちでもついていけないぐらいなので逆に教えてもらったりと、対等にコミュニケーションが取れ、距離を縮められたのはよかったです。今回初めて幼児グループを担当し、今まで担当していた小学生とは受け取り方、伝え方がまた違ったので、関心や興味を伸ばせるようにしたいです」

次回に活かすため、イベント終了後はレポート作成

活動記録をつづる様子

学生たちはイベント終了後、参加してくれた子供たちの活動への取組方、お友達との関わり方、個性などを活動記録としてつづり、次回開催イベントをより向上させるため反省点や気づき、手応えなどをフィードバックし合います。

学生たちの活動記録

身近にある自然、身近にいる人と触れ合う“学びの機会”を作っていきたい

東京家政学院大学 児童学科 佐藤冬果助教

「森のようちえん」を主催する、佐藤助教からお話を伺いました。

「今年度7回目の森のようちえん。回を重ねるごとに学生の頼りがいが増しています。主任を務める学生のリード方法、子供との関わり方など、また安全面においてもヒヤッとすることが少なくなりました。ちょっと気持ちが乗らない子供へのアプローチの仕方としても、“まず自分が経験して一緒にやってみようと声掛けする”など、とても安心感のある1日でした」

「現代社会において、身近にあるキャンパスで険しい山道を歩いたり、いろんな種類の樹木と触れ合ったり、日々の生活の中に自然遊びが根付くのは、子供にとっても学生にとっても、1つのメリットと感じています。また子供たちが家族やお友達だけではなく、大学生と関わることでコミュニケーションの部分でも成長しているのでは、と感じています」

「また、参加した子供たちの要望などもイベントの発展にとても役立っています。例えば『お姉さんたちと遊びたい』や『森の中を体験したい』といった大まかな要望の場合、企画を詰め込むのではなく、ある程度子供たちが自由に振る舞えるような環境を提供するほうがのびのびと動いてくれて良いですね。回を重ねて分かってくることも多いです」

「今後の取組としては、活動の様子を映像に収め、子供のちょっとした発言を取り上げて、何故そう思ったのかというような研究が出来れば、今後の取組に活かせると考えています」

キャンパスにある森と教育者・保育者を目指す学生という二つのリソースを掛け合わせた「森のようちえん」。学生たちの主導で、地元の子供たちを対象に火おこしやスラックライン(ウェビングと呼ばれる細いベルト状のラインの上でバランスを楽しむスポーツ)、ハンモックなどの体験や自然物を使ったクラフトなどを、年間を通じて継続的に活動を展開しています。子供たちにとっては、生活圏内の自然と触れ合う体験の場であり、同じ地域に住む異なる年齢の子供や地元の大学生との交流の場となる取組です。また保護者にとっては、普段の生活ではあまり接点を持つことができない子育て・教育に知見のある教員・学生さんと接する機会となり、何気ない会話をすることができます。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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