掲載日:2024年3月29日
東京ガス株式会社
当事者の不安解消で、育業取得率向上へ! 未来に向けた社会貢献を
日本最大の都市ガス会社として知られる東京ガス株式会社。都市ガスや電気などのエネルギーに関する事業のほか、子供向けの取組として『がすてなーに ガスの科学館』の運営を行うなど幅広く事業を展開する一方で、育業の推進にも力を入れています。 今回は、育業の推進や子供向けの取組について、同社 人事部 角坂(かくさか) さん、がすてなーに ガスの科学館館長 花田さん、また、グループ会社である東京ガスネットワーク株式会社から人事総務部 浅井さんの3名にお話を伺いました。
参画後に育業取得率アップ 安心して働き、子育てができる環境づくりを
―こどもスマイルムーブメントに参画されたきっかけを教えてください。
東京ガス株式会社 人事部人事戦略グループ挑戦と多様性推進チーム 角坂さん(以下、角坂): ちょうど育業取得率の向上に力を入れているタイミングで、こどもスマイルムーブメントについて知りました。行動指針の一つ『社会全体で「こどもを大切にする」気運を醸成し、安心して働き、子育てができる環境づくりに取り組む』に非常に共感しました。弊社としても、この指針と同じ姿勢で、仕事と育児を両立しやすい環境づくりをしていきたいという思いがありましたので、参画を決めました。
―参画してから変化はありましたか?
角坂:はい。育業取得率アップに繋がっています。元々、弊社では男性の育業取得率が低く、2018年ではわずか2%でしたが、2023年(1月時点)には84%まで伸ばすことができました。 取得率向上のためにさまざまな取組をしてきましたが、仕事と育児の両立を応援する弊社の姿勢だけでなく、パートナーと協力して子育てすることの大切さや育業をする意義についても情報発信してきましたので、その辺りも社員に浸透してきていると思っています。
―こどもスマイルムーブメントに期待することを教えてください。
角坂:こどもスマイルムーブメントの動画や、参画企業・団体のレポート記事は、他企業・団体の活動内容や施策がわかりやすく掲載されているため、弊社の取組を考える際にも参照させていただいています。
また、イベント情報も、弊社社員を含め世の中の子育て世代に役立つ貴重な情報源になっていると思います。これからもこのような情報がたくさん発信され、企業・団体や子育て世代に届くことで、社会全体として子供を大切にする気運がさらに醸成されていくことを期待しています。
育業取得率100%を目指して、不安や負担を取り除く制度が充実
―現在実施されている取組のうち、まずは育業推進について詳しく教えてください。
角坂:弊社では、”法の規定を上回る制度”を整備しています。例えば子供が3歳になるまで育業できたり、産前産後休暇を有給で取得できたり と、 仕事と育児を両立するための制度が充実していると思っております。
また、2023年11月から、新しく『3本柱の施策』をスタートしました。これは、社員の声から浮き彫りになった「育業するにあたっての不安」を解消するための制度です。
―『3本柱』の具体的な内容を教えていただけますか?
角坂:3本柱の1つ目は、「子供が産まれるとそれまで以上にお金がかかるにも関わらず、育業によって収入が減ってしまう」という不安を解消するための施策です。 育業する社員に応援金を支給すること、育業取得による賞与の減額を免除することとしました。2つ目は、「育業によってキャリアアップに支障が出てしまう」という不安を解消するため、「育業しても昇格対象になる」ということを規定しました。
3つ目は、育業取得者の周りで働く社員のための仕組みです。人事評価の際、育業を推進したり、育業中の社員の欠員を支えたりすると、評価の対象になることを社内に発信しています。これにより、育業取得者の「周りのメンバーに負担をかけてしまう」「人数が減る分負荷が増えるのに、それが評価されないのが申し訳ない」といった不安や、取得しづらさの解消にもつながっていると思います。
そのほかにも、社内向けに『男性のための育業 準備セミナー』を開催し、実際に育業を経験した社員によるパネルディスカッションを行ったり、育業するための事務手続きのサポートを充実させたりなど、様々な施策を行っております。
―とても手厚い制度・仕組みが整っているように感じましたが、今後の展望はありますか?
角坂:はい。社員の8割以上を男性が占める当社では、「男性社員の働き方を多様化させることが、すべての社員の働きやすさや組織の変革につながる」と考え、男性の育業取得率を100%にすることを目指しています。2020年度にはわずか8%であった男性育業を100%にするというのは非常にチャレンジングな目標です。実現に向けて、新たな制度整備や情報発信など様々な取組を考え、より一層力を入れていきたいと思っています。 また、社内向けにこういった取組を通じて、仕事と育児を両立しやすい働き方を社会全体に広め、より良い未来を築いていくことにも貢献したいと思っています。
楽しく学び、体験する活動を通じてエネルギーや未来の在り方について考えるきっかけを作る
子供向けに行っている取組の大きなものとして、『がすてなーに ガスの科学館』の運営と、グループ企業である東京ガスネットワークによる『キッザニア東京』での職業体験の提供があります。この2点についても詳しくお伺いしました。―『がすてなーに ガスの科学館』とはどのような施設ですか?
がすてなーに ガスの科学館館長 花田さん(以下、花田):『ガスの科学館』は、1986年に東京ガス株式会社の創立100周年事業の一環として設立されました。科学と暮らしの視点からエネルギーについて学ぶ機会を提供するとともに、弊社の事業内容や取組をお伝えすることを目的としています。2006年には、『がすてなーに ガスの科学館』という名称で移転オープンしました。2019年のリニューアルでは、エネルギーに留まらず、共生社会の実現やSDGs、地球温暖化、高齢化社会などの社会課題についても楽しく学べる展示内容に一新しました。
―『がすてなーに ガスの科学館』の特色やアピールポイントを教えてください。
花田:特徴としては、大きく3つあります。 1つ目は、体験しながら考え、楽しみながら学ぶ施設ということです。目で見るだけでなく、実際に触れ、体験することによって、より能動的に、エネルギーや地球環境などを考えるきっかけを作っています。具体的には、ポンプを使って都市ガスを届ける仕組みを学んだり、ハンドルを回して発電したりなど、様々な体験ができます。
2つ目は、参加型プログラムです。クイズ大会やサイエンスショー、自分でテーマを選んで調べる活動など、自ら進んで参加してもらうことによって、理解を深めたり、面白さを実感したりしてもらうことができます。
3つ目は、コミュニケーターを配置していることです。コミュニケーターとは、体験型展示物やプログラムを通して、子供たちの中にある疑問や発見、興味・関心を引き出し、理解を深めるお手伝いをするスタッフのことです。感じたことや気づいたことを話す中で、未来に向けて自分たちがどう行動したら良いかを一緒に考えます。
私たちは、ガスの科学館に来て学んでもらうことで、子供たちが社会課題を自分の事として考えてくれるようになることを目指しています。
―来館した子供たちや保護者からはどのような反響がありますか?
花田:体験型・参加型のプログラムをたくさん用意しておりますので、子供たちは楽しそうにしています。また保護者からは、「普段生活する中ではあまり意識していないエネルギーのことや社会課題について知り、学ぶことができて良かった」というお声をよくいただきます。子供たちはもちろん、大人の方でも新しい学びや発見ができる展示内容になっておりますので、一緒に学び、考えるきっかけを作れると良いなと思っています。
―次に、『キッザニア東京』での職業体験について教えてください。
東京ガスネットワーク株式会社 人事総務部総務広報・渉外グループ主任 浅井さん(以下、浅井):東京ガスネットワーク株式会社では、楽しみながら社会の仕組みを学ぶことができる施設『キッザニア東京』に「エネルギー会社」というパビリオンを出展し、2種類の職業体験(アクティビティ)を提供しています。
1つ目は、車に乗って現場に出動し、ガスのネットワークを完成させる「ガス工事」の仕事、2つ目は、検針計を使って街で使われているガスの使用状況を調査する「エネルギー調査」の仕事です。これらのアクティビティを通じて、達成感やチームワーク力を育むことはもちろん、普段の生活ではあまり意識することなく使っているガスの重要性を学び、エネルギーをより身近に感じてもらいたいと考えています。興味を持ってくれた子供たちの中から、将来ガスの仕事に就くことを選ぶ子供が増えることも期待しています。
―アクティビティ中の子供たちはどのような様子ですか?
浅井:ガス工事の仕事では、専用車両に乗ってガスの配管工事に行きます。車に乗ることや工具を使って新しい配管に交換することを楽しんでもらえているようです。救急車でも消防車でもないガス会社に専用の車両の存在によって、ガス会社が街の安全やエネルギーを守っていることを知ってもらえる機会になっていると思います。
エネルギー調査の仕事では、スタッフから「家や会社など、街の中のいろいろな場所に検針計が付いているよ」とお話しすると、「帰ったら探してみる!」という声がたくさん返ってきます。また、普段ガスの存在をあまり意識しない子供たちに、ガスのにおいが出るシートをお配りしております。それを一生懸命に嗅ぐ様子から、ガスを身近に感じるきっかけになっていると感じています。
―それぞれの取組について、今後の展望を教えてください。
花田:『がすてなーに ガスの科学館』では、脱炭素社会の実現に向け、2024年3月から新しく水素とCO2からできる都市ガスの原料「e-メタン」を作る仕組みをタブレットのゲームで学べる展示を始めました。このような社会課題に向けた取組や技術開発を通じて、子供たちが自らの将来のあり方 について考えるきっかけを増やしていきたいと考えています。2024年2月には累計来館数400万人を達成しました。これからも新しい展示やイベント企画も展開させていきたいです。
浅井:『キッザニア東京』での職業体験でも、より多くの子供たちに体験してもらうことで、子供たちの学びを深め、ガスを身近に感じてもらいたいと思っています。
子供たちの明るい未来に貢献したい
―他企業・団体とのコラボレーションのご意向がありましたら教えてください。
角坂:育業推進や仕事と育児の両立をしやすい職場環境づくりについて、他企業・団体様の視点やアイデアを、弊社の取組にも取り入れていきたいと考えています。もし協働できそうなことがありましたらぜひお声がけください。
花田:『がすてなーに ガスの科学館』では、ガス・電気といったエネルギーを初め、未来の暮らし・社会にまつわる様々な領域の展示・企画を行っております。他分野と組み合わせることで、新しく面白い内容を子供たちに届けることができると思いますので、協力して取り組めそうなことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
―最後に、子供たちへのメッセージをお願いいたします。
角坂:私たちは、子供たちがすくすくと成長できる明るい未来の実現に向け、育業推進はもちろん、復職してからも活躍できる職場づくりのために尽力しています。子供たちが将来に期待を持てるような社会づくりの一助になれば嬉しいです。
花田:『がすてなーに ガスの科学館』に来ていただくと、たくさんの発見があるとともに、社会課題について考えるきっかけにもなります。ぜひ休日のお出かけ先や、夏休みの自由研究の機会などに、ご家族やお友達と気軽に遊びに来ていただき、気づきや学びを持ち帰ってもらえたらと思います。
浅井:『キッザニア東京』でのアクティビティとして体験できるガス工事やエネルギー調査は、普段から数多く行われている仕事です。こういった仕事によって街が支えられていることを知ってほしいですし、ガスを身近に感じてもらいたいです。実際にやってみるときっと楽しい体験になると思いますので、ぜひ遊びに来てください。
―ありがとうございました!
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