掲載日:2025年12月18日
将来宇宙輸送システム株式会社
宇宙との距離が近くなった2日間
将来宇宙輸送システム株式会社は、人や荷物を宇宙に運ぶロケットや未来の宇宙旅行サービスを開発している企業です。2040年に1,000回以上繰り返し宇宙へ飛び立つことができる世界初の再使用型ロケット「ASCA 3」の実用化を目指しており、現在はその最初のバージョンとなる「ASCA 1.0」の飛行実証を2025年内に行うべく開発を進めています。
そんな壮大な夢を描く会社で、この夏、中高生向けの職業体験プログラムが開かれました。舞台は日本橋にある本社。社員の方々と一緒に「未来の宇宙旅行ってどんなものだろう?」と考える2日間は、まるで自分が宇宙に一歩近づいたようなワクワクにあふれていました。
【職業体験のスケジュール】
●1日目
①将来宇宙輸送システムの挑戦について学ぶ
②配信するメールニュースを考える
●2日目
考えたメールニュースを提案
4,000名以上の読者に届ける「行ってみたくなる宇宙旅行」
1日目
体験初日のプログラムは、将来宇宙輸送システムがどんな夢に挑戦しているのかを知ることから始まりました。民間企業としてロケットを開発していること、何度も飛び立てる「再使用型ロケット」に挑んでいること、そして世界中で進んでいる「宇宙ホテル」の計画──。まるで未来の物語のような話に、参加した学生たちは目を輝かせながら耳を傾けていました。
将来宇宙輸送システムでは、2023年から宇宙旅行の先行予約を受け付けており、すでに4,000名以上が申し込んでいます。そして予約者には、ロケット開発の進み具合や最新トピックを定期的に「宇宙旅行レター(メールニュース)」として発信しています。今回の職業体験プログラムでは、そのメールニュースの作成にチャレンジしました。参加者が考えた記事が実際に配信される、まさに実践的なワークショップです。作業を始める前に、まずは「ニュース作成のポイント」をいくつか教えてもらい、その後はグループに分かれてディスカッション。話し合いを重ねるなかで、配信するテーマは「中高生が考えた宇宙旅行」に決まりました。
「宇宙に行ったら何をしたい?」「どんなアクティビティを楽しみたい?」──正解のない問いに、参加者は中高生ならではの柔軟な発想で次々とアイデアを出していきます。印象的だったのは、どんな意見でも誰も否定しなかったこと。「それ面白いね!」「それならこうしたらもっと良さそう」と、互いを尊重し合う雰囲気のなかで、1日目のプログラムは幕を閉じました。
2日目
2日目は、1日目に出たアイデアをまとめて記事に仕上げ、最後に将来宇宙輸送システムの畑田社長へプレゼンするのがゴールです。参加者たちは3チームに分かれ、メールニュースの原稿を書いたり、読者の目を引くタイトルを考えたり、掲載するビジュアルをつくったりと、実際の仕事さながらの作業に挑みました。夢中で取り組んでいるうちに、あっという間に発表の時間を迎えます。
最初のチームのテーマは「私たちを宇宙に連れてって」。ターゲットは、中学生の子どもを持つ40~50代の読者です。3泊4日の宇宙旅行プランとして、小型ロケットで宇宙を駆け抜ける「宇宙ドライブ」、ペットと一緒に楽しむ「宇宙ドッグラン」、旅行といえば欠かせない「宇宙温泉」、さらに無重力を活かした新スポーツまで登場。聞いているだけで行ってみたくなるアクティビティが並びました。
2チーム目のテーマは「前代未聞、Z世代が考えた宇宙でしかできない遊び」。無重力ダーツや、自作の遊泳機を使ったレースなど、宇宙ならではの遊びをスポーツに進化させたユニークな提案に畑田社長も思わず頷きます。
3チーム目のテーマは「実験と食」。宇宙空間を利用した科学実験のほか、旅行の醍醐味であるグルメにも注目しました。無重力で浮かぶ調味料を使って味わう「宇宙バイキング」は、思わず笑顔がこぼれるアイデアです。
すべてのプレゼンが終わったあとには、ビジネス部の森實さんと矢本さん、そして畑田社長からフィードバックが送られました。真剣に耳を傾ける参加者たちの姿が印象的で、2日間の職業体験は大きな達成感とともに幕を閉じました。
将来宇宙輸送システムの職業体験に参加した中高生の声
職業体験終了後に、参加した中高生2人に感想をお伺いしました。
─今回の2日間の体験で、どんなことが楽しかったですか?
Aさん:最初は宇宙旅行ってすごく遠い話に感じていました。実際に1,000億円くらいかけて行ったと聞いたこともあって、自分には無理だろうなと。でも、ロケットを再利用すれば価格を下げられると知って、「それなら自分もいつか行けるかもしれない」と思えて面白かったです。
Bさん:私は宇宙のことは本で読んだことしかなかったのですが、もともと未知の世界に興味がありました。少人数でのディスカッションも好きなので、すごく楽しい2日間でした。
─メールマガジンづくりに挑戦してみて、難しかったことや面白かったことは?
Aさん:宇宙ならではのこと、地球ではできないことを考えるのは難しかったです。でも逆に、非日常のことをみんなと自由に話し合うのはとても楽しかったです。
Bさん:「よく考えたら無理かも」ということでも言い合えたのが面白かったです。自分にない発想を聞けて、「そういう考え方もあるんだ」と気づけたのも良かったです。
─宇宙に対するイメージは変わりましたか?
Aさん:前は「未知で恐ろしい」という印象のほうが強かったです。でも今回参加して、「未知だからこそ楽しいことを考えられる」と思えるようになりました。少し憧れを持つようになりましたね。
Bさん:宇宙のイメージというより、自分の将来のイメージが変わりました。宇宙に直接関わらなくても、その一端に関わるだけでやりがいを感じられるかもしれない。そんな仕事もいいなと思うようになりました。
─今回の体験を通じて学んだことや、今後に活かしたいことはありますか?
Aさん:新しいことに挑戦するときは、とりあえずやってみることが大事だと学びました。まず考えて出してみることで、新しい発想が広がると思います。
Bさん:実際の仕事に近い体験をさせてもらえて、自分のアイデアが役立ったのかなと思えたのが嬉しかったです。達成感もありました。
─この職業体験はどんな人におすすめしたいですか?
Aさん:宇宙が好きな人はもちろん、新しいことにどんどん挑戦してみたいと思う前向きな人におすすめです。
Bさん:実際の仕事に近い体験ができるので、「自分のアイデアを形にしてみたい」という人は楽しめると思います。
「宇宙を身近にする挑戦」~将来宇宙輸送システム株式会社~
日々、私たちは宇宙輸送システムの開発を進めていますが、どうしても技術者目線に偏ってしまいがちです。しかし、将来的に宇宙旅行を利用するのは、まさに今の中高生世代。彼らの声を開発やサービスにどう反映するかが課題でした。そのため今回の職業体験プログラムは、まさに絶好の機会だったんです。
プログラムのテーマに「メールマガジン作成」を選んだのは、私たちが運営する「スペースレター」が背景にあります。10代から60代まで幅広い方に登録いただき、高い開封率に加え、多くの読者から感想や質問をいただいています。そこで、社員だけでなく中高生にも作成を体験してもらうことで、新しい視点を届けられるのではないかと考えました。
実際のプレゼンでは、「ペットを連れて宇宙に行きたい」「無重力でスポーツを楽しみたい」「宇宙でしかできない実験や食事体験をしてみたい」など、日常の経験と宇宙体験を結びつけた自由なアイデアが次々と飛び出しました。特に「宇宙ならではのスポーツ」は、地上とはまったく違う体験として具体化できる可能性を強く感じました。
宇宙開発というと「科学好きの限られた人だけが関わるもの」というイメージが強いかもしれません。しかしこれからは、宇宙に関わる仕事が多様化し、理系だけでなく文系やクリエイティブな分野にも広がっていくはずです。たとえば、宇宙を題材にした小説を書く人、番組を作る人、あるいは宇宙から帰還した人をサポートする仕事など、可能性は無限にあります。
私たちが伝えたいのは、宇宙は特別な誰かのものではなく、新しい職業や産業を生み出すフィールドであるということです。まだ誰も答えを持たない世界だからこそ、自分で新しい仕事やサービスを創り出す楽しさがあります。中高生の皆さんにも、先入観を捨て、自ら新しい挑戦を作っていく当事者になってほしいと願っています。
記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。
