掲載日:2025年12月18日
東京都中央卸売市場
東京都中央卸売市場
都民の食生活を支える中央卸売市場の知られざる魅力に迫った2日間。
東京都中央卸売市場は都内にある11の市場を運営し、鮮魚をはじめ、青果、精肉、花の流通を担っています。
約1,400万人もの都民の食を支える同市場で、この夏、中高生向けの職業体験プログラムが実施されました。毎日、安全・安心で美味しい食事を食べられる当たり前の日常を守る市場の機能や、そこで働く多様な人々と幅広い仕事に触れられたこの体験は、東京都中央卸売市場の存在意義を改めて感じられる2日間となりました。
【職業体験のスケジュール】
●1日目
①豊洲市場について学ぶ
②施設内を見学
③市場の業務を体験
●2日目
①商業施設(千客万来)を見学
②青果棟を見学
③青果物卸売会社の仕事について学ぶ
④商品の魅力をプレゼン
外からでは分からない、市場の役割と多様な仕事を学ぶプログラム。
1日目最初のプログラムは、私たちの食卓を支える巨大拠点・豊洲市場の役割と仕組みを学ぶことから始まりました。「いつ、どこで獲れるか分からない」という天然魚を、安定的に食卓へ届けることが市場の重要な役割。豊洲市場が誇る世界最大級の施設や機能について、詳しくお話を伺うことができました。さらに施設内を見学し、外気に触れない「閉鎖型施設」として、一年中15~20℃に保たれる徹底した「温度管理」や、トラックを直接つけて荷物を降ろせる「ドックシェルター」など、市場に不可欠な品質・衛生管理システムや仕組みについても学習。自分たちが口にする魚の鮮度と安全がどのように守られているかを知り、中高生たちは真剣な表情で聞き入っていました。参加者からは「想像していたよりも複雑な仕組みで動いていることが分かって、興味が湧きました」との声もあり、多くの学びにつながったようです。
豊洲市場に入荷する水産物貨物の物流を支える「豊洲物流」の中濵さんの案内で、普段は入れない場内の見学もさせてもらいました。テレビで見るマグロのセリ場や多種多様な魚が並ぶ卸売ゾーンを巡り、活魚が泳ぐ水槽では実際に魚に触れて水温の違いを体感!「ターレ」と呼ばれるフォークリフトで荷物が運ばれていく様子に、中高生たちは「初めて見る光景で、すごいと思いました」と目を輝かせていました。見学後の質疑応答では、「市場の裏側を知ることができて楽しかった」という声に加え、「市場からスーパーなどの売り場に魚が届くまでの具体的な流れを知りたい」といった発言もあり、学びが次の探求心へとつながった様子でした。
2日目は、豊洲市場に隣接する賑わい施設「千客万来」の見学からスタートしました。江戸時代の街並みをイメージしたエリアには、市場で仕入れた新鮮な食材を使う飲食店がずらりと並びます。中央卸売市場のPRコーナー「いちばの広場」や天然温泉を楽しめる宿泊施設「万葉倶楽部」まであり、市場と連携した活気やにぎわいを作っています。千客万来を一通り巡ったあとは、青果のセリが行われる青果棟へ移動。ここからは豊洲市場で青果の卸売を担う「東京シティ青果」の関根さんが案内してくれました。全国各地から集まった野菜や果物が並ぶ光景は圧巻。北海道から沖縄まで、さまざまな産地の生産者さんが私たちの食卓を支えていることを実感しました。また、白菜のように冬が旬のイメージが強い野菜でも、全国の産地と協力しながら一年を通して届けられる仕組みがあることを知り、驚きとともに学びが深まりました。
見学のあとは、会議室に戻って青果物卸売会社の仕事についての説明を受け、「バイヤーに商品をプレゼンする」というテーマでワークショップを行いました。スーパーマーケットなどに生産者さんに代わって商品提案するのも、東京シティ青果の仕事。今回はその業務を体験しました。紹介するのはブドウの特徴。シャインマスカット・ナガノパープル・クイーンルージュ3種類の甘さや香り、後味、見た目などを比較して、どれをスーパーに提案するかをチームごとに話し合います。意見を交わしながら共通点を探す姿は真剣そのものでした。
最終的に、どちらのチームも「シャインマスカット」を提案することに決定。「酸味や渋みがなく、甘さだけで構成されているのが魅力です」。「シャキシャキした食感で、つい次の粒に手が伸びてしまいます。緑色が鮮やかで売り場でも目立つと思います。キャッチコピーは“甘さで世界征服”です!」など、短い時間の中で商品の魅力をまとめ、言葉で伝える難しさと面白さを味わいながら、プレゼンは大いに盛り上がりました。セリの現場とはまた違う、市場の仕事の奥深さに触れられた貴重な体験になりました。こうして2日間にわたる職業体験プログラムを笑顔で終えることができたのは、やはり市場が「食を通じて幸せを届ける場所」だからこそ。参加者にとっても、市場の存在意義を改めて感じる時間になったはずです。
東京都中央卸売市場の職業体験に参加した中高生の声
職業体験終了後に、参加した中学生3人に感想をお伺いしました。
この職業体験に参加したきっかけを教えてください。
Aさん:最初は親から「職業体験があるよ」って、リンクが送られてきたんです。もともと豊洲市場が気になっていたので、「これを機に行ってみよう」と思って参加しました。
Bさん:僕も親に勧められて知りました。もともと生き物が好きだったので、「豊洲市場は面白そうだな」と思って。普段はなかなか関わる機会がないので、せっかくだから参加してみました。
2日間の体験で、印象に残ったことを教えてください
Aさん:1日目は市場の中で実際に機械が動いている様子を見たり、自分たちで段ボールのラベルを数えたりしたこと。「やってみると全然違うな」って感じました。2日目はグループで話し合って決める活動が新鮮でした。学校以外で同年代と話すのは初めてで、楽しかったです。
Bさん:1日目は魚の鮮度管理の工夫が印象的でした。海域によって最適な温度が異なり、場内で魚を管理する際も生息地域の温度に合わせている説明は新鮮でした。2日目は野菜も同じように温度管理されていることや、フォークリフトの使い方など、細かい工夫を知れて面白かったです。
Cさん:一番印象に残ったのは2日目のブドウの比較です。豊洲といえば魚のイメージしかなかったので、青果市場があること自体を知らなくて驚きました。
市場には多くの人が関わっていましたが、どう感じましたか?
Aさん:イメージでは10社くらいかなと思っていたけど、実際は何百社もあってびっくりしました。卸売の会社、仲卸の会社、食材を作っている生産者だけじゃなく、包装資材とか周辺の仕事でもたくさんの人が関わっているんだなって知りました。
Bさん:仲卸業者の数がこんなに多いとは思っていませんでした。外から見ているだけじゃ全然分からないので、いい発見になりました。
今回の体験を通して、将来の進路に影響はありそうですか?
Aさん:市場の仕事は知らないことだらけだったので、これからの選択肢のひとつになると思います。
Bさん:私はまだ将来の夢が決まっていないので、全部が選択肢です。市場の仕事もその中に入りました。現場の仕事もいいし、ワークショップで体験した商品提案のような仕事もやってみたいなと思いました。
「安全安心な食を通して、幸せを届ける」~東京中央卸売市場
市場は全国から鮮魚や青果を集め、都民約1,400万人の食生活を支える重要な役割を担っています。魚や野菜の鮮度管理、全国の産地とつながる流通の仕組み、さらには生産者の代わりに商品を提案する業務など、普段はなかなか目にすることのない幅広い仕事が存在します。「市場は幸せを売っている」という言葉があるように、美味しいものを食べて笑顔になる人はいても、怒る人はいません。豊洲市場は“安全・安心”を徹底しながら、美味しさを届けることで、人々の毎日の幸せを支えています。
今回の中高生向け職業体験プログラムに参加したのは、市場としても未来を担う子どもたちに市場の魅力を知ってもらうことは大切な機会であると考え、食に関わる仕事に関心を持ってもらう目的で実施を決定しました。
豊洲市場において、水産物部では東京都水産物卸売業者協会や豊洲物流、青果部では東京シティ青果の皆さまに全面協力いただき、現場のリアルな仕事を体験できる内容となりました。
プログラム構成も、単なる案内にとどまらず、仕分けや鮮度管理の体験、PR活動のワークショップなど、実際の業務に近い形で構成して、参加くださった学生たちは、真剣に取り組む中で、現場で働く方々の熱意や工夫を学ぶことができたと思います。
特に印象的だったのは、魚やブドウなどの食材に直接触れた瞬間、それまで緊張していた子どもたちの表情が一気にほころんだことです。「市場は幸せを売っている」という言葉をまさに体現してくれた瞬間でした。普段は外からでは分からない市場の仕事を体感してもらい、「市場ってこういう場所なんだ」と理解を深めてもらえたことが何よりの成果だと思います。
今後も、現場で働く市場業者の皆さまのご協力をいただきながら、こうした取り組みを続けていきたいと考えています。
主催した企業・団体
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東京都中央卸売市場
- 公式サイト
- https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/
- 住所
- 東京都新宿区西新宿2-8-1
