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東京都

中高生による取材記事

  • 職業体験

掲載日:2025年12月18日

沿線まるごと株式会社

※この記事は中高生リポーターが作成しました。

地元全面協力のホテル運営 奥多摩の魅力を届ける

青梅・奥多摩地域の活性化を目的に、お客様が地域全体をまるごと楽しむことが出来るような、観光事業を行う「沿線まるごと株式会社」(以下、沿線まるごと)。今回は沿線まるごとが取り組む地域活性化やおもてなしに関する職業体験に参加し、取材をした2日間の活動内容について、お届けします。

(文・佐治さん)

【左から、佐治 愛梨さん(高1)、高橋 陽人さん(高2)、沿線まるごと社員の大野さん、小松 結衣さん(高1)】


【プログラム概要】

●1日目
①沿線まるごとホテルの概要・プログラムの内容について説明
②ホテル「Satologu(さとローグ)」の見学
③ホテルの強み・特徴について意見交換し、客層を想像する
●2日目
①お客様のお出迎え体験
②沿線まるごとホテルへの集客方法について提案

1日目
①沿線まるごとホテルの概要・プログラムの内容について説明を受けました

JR青梅線沿線の地域課題の解決と沿線地域の活性化 

1日目はJR青梅線鳩ノ巣駅舎内にある「沿線まるごとラボ」から始まりました。この場所は、元々は駅事務所で現在は「沿線まるごとホテルのフロント」や周辺地域の情報発信、地域事業にイノベーションを起こす拠点です。まず始めに沿線まるごとでディレクターを務める大野さんより会社の成り立ちについて聞きました。JR青梅駅から奥多摩駅間(愛称:東京アドベンチャーライン)で持続性のある事業を生み出し、「人口減少」や「空き家問題」といった地域課題の解決と沿線地域を活性化させることが創業のきっかけになったと、大野さんはいいます。そして沿線地域の人口減少、文化や事業継承の課題をお聞きしました。

【沿線まるごと社員のお話に耳を傾ける様子】


②ホテル「Satologue(さとローグ)」の見学しました

その後、車で「沿線まるごとホテル」の宿泊棟「Satologue(さとローグ)」へ移動し、見学をしました。その途中、車窓から見えた鳩ノ巣駅舎周辺の景色はどこを切り取っても写真映えするような美しい自然が広がっていました。「Satologue」でプロジェクトの初期から連携し、施設のお庭の設計および整備を手掛けた事業者の方にも事業内容を聞いたり、お仕事をしていて大変なことを聞いたりしました。


【開発から現在も施設のお庭を手掛けている方より、普段のお仕事のお話を伺う様子】


「Satologue」では最大で大人8名が泊まることができ、各客室で目の前の自然を楽しみながらゆったり過ごすことができます。また、ベランダからは多摩川のせせらぎが聞こえてきました。室内も木材でできていて、温かみのある内装です。


【説明を聞きながら、「Satologue」内の客室から、外の景色を眺める様子】


③ホテルの強み・特徴について意見交換し、客層を想像しました

「Satologue」から「沿線まるごとラボ」へ戻った後は、個人ワークとグループディスカッションを行いました。テーマは「沿線まるごとホテル」にはどのようなお客様が宿泊するのかについてです。実際に見学して分かったことや、気付いたこと、そして「沿線まるごとホテル」の特徴やコンセプトを付箋に書き出しました。


【各自で付箋に自分の意見を書き出している様子】


まずは個人ワークを行い最後に3人で共通項をまとめます。その行程をふむことで、「沿線まるごとホテル」の特徴やコンセプトについて、積極的にディスカッションすることができました。それぞれ、「都心に住む20~40代のお金に余裕がある夫婦」、「中高年の外国人」、「都心近郊に住む20~30代」などの意見が挙がりました。


【模造紙に付箋を貼りつけながら、共通項をまとめていく】


グループディスカッションを振り返ると、大野さんに説明いただいた内容に沿った意見が多く、しっかりと「沿線まるごと株式会社」のことについて理解を深めることができました。

(文・高橋さん)



2日目
①お客様のお出迎えを体験しました

ホテルの「フロント」・鳩ノ巣駅でお客様への「おもてなし」を実施

2日目は沿線まるごとホテルのフロントであるJR青梅線鳩ノ巣駅の清掃から始まりました。沿線まるごと社員の渡辺さんと一緒にゴミを集めます。すると柱の裏に隠れていたゴミ袋や、タオルやメガネなど、多くのゴミが出てきました。 多くのゴミが捨てられている要因として、奥多摩を訪れた観光客の方がそのまま捨てて行ってしまう事があるそうです。


【JR青梅線鳩ノ巣駅のホームでの清掃中、捨てられたタオルを見つける様子】
【JR青梅線鳩ノ巣駅のホームで集めたゴミ袋を持つ様子】


駅のホームでのゴミ拾い後は、駅舎内の清掃です。雑巾を片手に階段の手すりや、ベンチなどを拭いていきます。駅全体の清掃を終え、お出迎えができる環境を整えた後、渡辺さんと地域住民の方と一緒に「沿線まるごとホテル」のお客様のお出迎えをしました。沿線まるごとでは、鳩ノ巣駅をホテルのフロント、駅から外は全てホテルの敷地という考えのもと、改札前で宿泊するお客様をお迎えします。「Satologue(さとローグ)」と書かれた木のプレートを持ち、渡辺さんと送迎を行う地域住民の方と宿泊客をお出迎え。地域住民の方は地域の情報を織り交ぜながら、お客様に「沿線まるごとホテル」の説明をします。そして送迎車に乗車したお客さまが鳩ノ巣駅を出発するところまで、お見送りを行いました。


【お客様を乗せた車をお見送りする様子】


②沿線まるごとホテルへの集客方法について提案しました

駅舎から「沿線まるごとラボ」に戻ると、1日目のグループワークの答え合わせとして、渡辺さんより宿泊されるお客様の特徴について、教えていただきました。様々な年齢・性別・出身のお客様がいることに、驚きました。 そのあとは、新たなテーマで個人ワークとグループディスカッションが行われました。テーマは、インバウンドのお客様をどのように「沿線まるごとホテル」へ呼び込むかということです。まずは1人1人でアイデアを考え、付箋に書いていきます。


【個人ワークで付箋にアイデアを書いていく】


続いて各自のアイデアをもとに、グループディスカッションをおこないました。グループディスカッションの中で広報に力を入れるためのアイデアとして、各々が「通訳ガイド」、「JAPAN RAIL PASSとの連携」、「パッケージツアーの提案」、「“おもてなし”の様子をSNSで発信」などの意見を提案しました。最後には渡辺さんからも「皆さんから出たアイデアを、今後の方針にぜひ取り入れられたら」とのコメントをいただきました。

(文・佐治さん)



中高生リポーターによるインタビュー取材
~駅がホテルに 町が旅先に JR青梅線で見た新しい地域のカタチとは~

職業体験終了後、中高生リポーターが社員の方に取材をおこないました。

ご協力いただいた方
沿線まるごと株式会社 コーディネータ 渡辺さん



【中高生リポーターたちからの質問に答える、渡辺さん】

―髙橋さん:

 まずは会社の成り立ちについて教えてください。

渡辺さん:
沿線まるごと株式会社は東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)と株式会社さとゆめ(以下、さとゆめ)が一緒にお金を出して作った会社です。このプロジェクトが始まる前に、親会社のさとゆめが過疎化が進んでいる山梨県小菅村で「村まるごとホテル」という取り組みを実施し、古民家ホテル『NIPPONIA 小菅 源流の村』を開業しました。そしてその取り組みにJR東日本が着目し、沿線まるごとホテルプロジェクトが誕生しました。


―小松さん:

 この仕事をしている目的とメリットはなんですか。

渡辺さん:
目的は、沿線をまるごとホテルにすることで地域全体を活性化することです。具体的には、自然豊かな景色や環境をPRすることで、1人でも多くのお客様に興味を持っていただくきっかけを作ります。また沿線地域にある空き家を利用して「Satologue」のように宿泊施設へとリノベーションをします。宿泊施設を増やすことで、より多くのお客様の滞在時間が長くなります。この一連の流れを生み出すことにより、地域でもお店を開く人が増えるなど、お客様をお迎えする環境が整っていくと思います。そして人が増えると地域住民との交流が生まれることも一つのメリットだと思います。


【渡辺さんへ取材をする様子】


―小松さん:

 今はJR青梅線の沿線で取り組まれていますが他地域への展開は考えていますか。

渡辺さん:
今後も数多くの路線で同じような取組を広げていくことが目標です。ありがたいことに、このプロジェクトが始動してからいろいろな全国各地の鉄道会社や地域事業をやっている会社が沿線まるごとへ視察に来てくださっています。反対に、この取り組みを参考にしたいというお声もいただくこともあるので、色々な可能性を探りながら少しずつでも前進できたら良いですね。


―佐治さん:

 鳩ノ巣駅で新しい事業を始める上でのハードルは、ありましたか。

渡辺さん:
始めは周辺地域や地域住民の方々との向き合い方について、慎重に考えました。地域住民の方々との関係性を築けていないにも関わらず、「沿線まるごとホテル」プロジェクトについて説明をしても驚かれてしまいます。まずは「沿線まるごとホテル」プロジェクトの方針について、丁寧かつ何度も説明することに注力しました。方針として、奥多摩の自然や地域にあるものを生かして、新しい価値のある地域づくりをしていきたいということを伝えていくうちに、地域住民の方々よりご理解いただき、日常生活での挨拶や世間話などから、徐々に関係性を築いていくことができたのです。その過程があったからこそ、「沿線まるごとホテル」のスタッフとして私たちが1人1人にお声掛けをして、地域住民の方々からの協力を得る事ができました。


【取材中、真剣にメモを取る様子】

―小松さん:

 中高生に向けて働くとは何か教えていただけますか。

渡辺さん:
今、中高生の皆さんは日々、学校で様々なことを学んでいますよね。時には、「この勉強が将来、役に立つのかな?」と疑問に思うこともあるでしょう。ですが、それは全て自分の武器になります。学生の時は知識を蓄えて、蓄えた知識を実践に活かしていく時が社会人であり、知識の実践=働くことだと思います。今は学びながら自分を成長させていく時期だと思うので、やってみたいと思うことがあったらぜひ、積極的に行動してみてください。


―佐治さん:

 このお仕事はどのような人が向いていると思いますか。

渡辺さん:
人と話すことが好きな人だと思います。お客様だけでなく、地域住民の方々といった様々な人たちとお話する機会が多いので、日々のコミュニケーションの取り方が大切になっています。あとは、粘り強い人でしょうか。弊社の事業は前例がない取り組みでもあるので、何度も施行錯誤を重ねる機会も多いです。諦めずに、挑戦することに前向きな方が良いかなと思います



―お忙しい中、本日は取材させていただきありがとうございました。(小松さん、佐治さん、高橋さん)


【JR青梅線鳩ノ巣駅舎にて。左から渡辺さん・佐治さん・小松さん・高橋さん・地域住民の方】

 ■沿線まるごとの職業体験・取材に参加した 中高生リポーターの声

*五十音順


(小松さん)
今回の職業体験では、実際に働いている方にインタビューすることができました。地域全体をホテルに見立てて運営するという取り組みを初めて知りとても新鮮でした。体験中にターゲットとなる客層を考えたり、実際にホテルの施設を回ったりする中で、地域と密接に関わっていることを実感しました。
今回のように、きちんとした形でインタビューを行うのは初めてだったので、質問内容だけでなく、話す順序まで考えて準備をしました。しかし、実際の場面では、相手の話を聞きながら同時にメモを取るのが難しく、うまく整理できない場面もありました。また、ただ用意した質問を読むだけでなく、会話の流れに合わせて自然に次の質問へつなげることの難しさも感じました。
最近はインターネットで多くの情報が簡単に調べられます。しかし、実際にインタビューをしてみると調べるだけでは分からない生の声を聞けることに大きな価値があると感じました。わからないことをその場で質問したり、興味を持った部分を深掘りしたりできるのは、直接話を聞くからこそできることだと思います。
今後は、この経験を生かして相手の思いをしっかりと聞き取り、自分の言葉で発信できるようにしていきたい です。



(佐治さん)
実際のインタビューはボイスレコーダーで録音した上で手書きでもメモを取りました。最初は同じことをやるのに面倒くささを感じましたが、取材内容を新聞記事にまとめるときに、大まかな内容を音声でつかんでからメモを見て要点を思い出したり、漢字を確認したりと両方の媒体を使うことで効率よく記事をまとめられて感動しました。
質問は前もって考えていたはずなのに、いざ口に出すと表現するのが難しかったり、敬語表現が出てこなかったりと大変でした。なので、普段からインタビューをしているマスコミの方はすごいなと思いました。しかし、相手の方は私の拙い質問にもしっかりと答えてくださり、有り難かったです。逆に、自分がインタビューをしていて思いついた質問をその場で聞けたのはすごく嬉しかったです。



(高橋さん)
今回、実際に働いている方に直接インタビューさせていただいたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。これまで企業について調べる際は、主にインターネットや資料から得られる情報に頼っていましたが、現場で働く方の声を直接聞くことで、数字や文章だけでは伝わらない会社の思いや背景を知ることができました。特に、事業を始めるに至った経緯や、地域の方との関わり方などは、事前の調査では分からなかった点であり、自分自身が地域づくりや「働く」ということを改めて考えるきっかけになりました
インタビューの場では、あらかじめ準備していた質問を伝えることができた一方で、実際に口に出すと表現が難しく、敬語の使い方に戸惑う場面もありました。しかし、相手の方が拙い質問にも丁寧に答えてくださったことで、安心して聞き進めることができました。また、時間の余裕ができたときに思いついた質問をその場で投げかけたところ、想像以上に深いお話を聞けたことも印象に残っています。予定通りに進めることの大切さと同時に、その場で生まれる疑問を大切にすることの面白さも学ぶことができました。
さらに、取材内容を記事にまとめる際には、録音した音声と手書きのメモを併用することで効率的に整理ができました。最初は二重の作業が面倒だと感じていましたが、実際には音声で全体の流れを確認し、メモで要点や表現を振り返ることで、より正確にまとめられることに気づきました。記録方法の工夫一つで記事の完成度が大きく変わることを実感できたのも、大きな学びとなりました。
今回の経験を通じて、インタビューは情報を得るだけでなく、相手の思いを引き出し、自分の考えを広げるきっかけになるものだと感じました。今後さらに多くの人に取材する機会があると思うので、今回の反省点や気づきを生かし、より魅力的で伝わる記事を書けるよう努力していきたいです。

記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。

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