掲載日:2026年10月7日
日本地震再保険株式会社
育業を通じた、“お互い様”で支え合う職場づくり
1966年の地震保険制度の発足とともに設立され、日本で唯一、家計地震保険の再保険を34名で担っている日本地震再保険株式会社。同社では、「お互い様」で支え合う風土によって、誰もが制約を抱えながらも安心して働き続けられる職場づくりを進めています。
今回は、管理・企画部部長代理兼人事総務課長 利根川加代(とねがわ かよ)さん、同課課長代理 江原真紀子(えはら まきこ)さん、同課 鈴木陽子(すずき ようこ)さん、実際に育業を経験された管理・企画部システム課主任 髙橋洸平(たかはし こうへい)さん、業務部業務課主任 片岡弘太(かたおか こうた)さんに、育業の取組や職場づくりについてお話を伺いました。
経営層のトップダウンによって達成した、男性育業取得率100%
―まず、貴社における育業の現状について教えてください。
管理・企画部部長代理兼人事総務課長 利根川加代さん(以下、利根川):女性については、直近約15年間、育業取得率・復帰率ともに100%が続いてきました。そこにここ数年は男性の育業推進にも力を入れ、ようやく形になってきたところです。2023年4月以降は、男性も同様に育業取得率・復帰率ともに100%を達成しています。
―男性100%を一気に進められた背景には、何があったのでしょうか。
利根川:最大の原動力は、経営層のトップダウンです。社長からの「男性にも育業を」という強いメッセージ発信など、経営層からの強い後押しがあったため、育業に関する一連の施策をスピーディかつ強力に推進できました。
管理・企画部人事総務課課長代理 江原真紀子さん(以下、江原):全社会議という、すべての役員、社員が集まり、その年の目標や会社の状況を共有する場で、トップメッセージとして社長から直接伝えてもらうことから始めました。やはり社長ご自身の言葉で直接語られると、社員の心も動きますし、会社としての本気度が強く伝わると思います。
利根川:以前は、男性の育業に対する否定的な空気感が最大の課題でした。経営層からの育業推進に向けた強い意志の発信を契機として、管理職、そして社員全員まで、徹底的に巻き込んでいきました。今では、「子どもが生まれる」と聞いて上司から積極的に育業するように呼びかけるほどで、とても育業しやすい雰囲気になっています。以前とは印象がまったく違いますね。
柔軟な勤務制度がもたらす安心
―その空気を変えるために、どのような取組をされたのですか。
利根川:2021年に社外の講師をお招きし、管理職を集めて「イクボス研修」を実施しました。「制約のない男性社員がひたすら働き、女性が育児というケアワークを担いながら働く——そういう時代ではない。誰もが制約を抱えながら、それを組み合わせて仕事を成り立たせていく時代なのだ」ということ、そして「部下の状況を理解し、日々のコミュニケーションを大切にするように」ということを伝えてもらいました。
―その他の育業を後押しする、具体的な勤務制度について教えてください。
利根川:当社は在宅勤務のほか、時間の面でも柔軟な勤務に対応できるよう制度を整えています。フレックスではないのですが、始業時間を7~10時の間で選択できるタイムシフト、時間単位の有給休暇、さらに勤務を中断できる「中抜け」の制度も導入しています。このため、日中に勤務を離れる必要がある際に、休暇とするのか、「中抜け」を利用して終業時間を変更するのか状況に合わせて選択することができます。これらの制度を育児中の社員のみでなく全社員が活用できる事が相互フォローの体制につながっていると感じています。
管理・企画部人事総務課 鈴木陽子さん(以下、鈴木):こうした制度が使いやすいのは、根っこに「お互い様」の精神があるからだと思います。先ほどご紹介した「中抜け」の制度の使い方として、日中に子どもを病院へ連れて行って、1時間後に業務へ戻る、といったことも、当たり前にできる雰囲気になっています。
利根川:またこのような就業環境を土台に、2023年4月より、出生時育児休業に相当する「28日間」を有給休暇としました。この手厚い経済的支援が収入減への不安を払拭し、ブレイクスルーとなって、育業取得率100%や育業日数の大幅な増加に直結したと感じています。
育業経験者に聞く——「育業を通じた喜び」と「同僚や会社への感謝」
―育業を経験された髙橋さん、片岡さんに伺います。育業にあたって、不安に思ったことはありましたか。
管理・企画部システム課主任 髙橋洸平さん(以下、髙橋):私は3ヶ月半ほど育業しましたが、正直3ヶ月半は個人的には結構長いかなと思っていて、それを言い出すのには不安がありました。ただ、上司に相談する際、上司の方から「どのくらいの期間育業したい?」と先に声をかけてこちらの意思を尊重してくださったので、安心して相談することができました。
業務部業務課主任 片岡弘太さん(以下、片岡):私は1ヶ月育業しましたが、その間の業務を誰かが担うことになるので、そこに対して「大丈夫かな」「申し訳ないな」という気持ちはありました。ですが、この機会を休暇ではなく業務の棚卸の機会とし、上司が率先して引き継ぎの場をセッティングしてくれ、同僚も日常的にすり合わせの時間を作ってくれたことで、最終的には不安が解消し、安心して育業に入ることができました。
利根川:業務の引き継ぎは、直属の上司に主導してもらっています。本人任せにせず、育業したい社員が今どんな業務を抱えているのか、それを誰が引き継ぐのかを、管理職が積極的に関わって確認するため、安心につながっているのだと思います。
―実際に育児をしてみて、イメージと違ったことや大変だったことはありましたか。
片岡:仕事のように段取りが通用せず、あまりにも予想外のことが多くて、想像以上にハードでした。当初は予定通りに進まないことに疲弊することも正直ありました。
髙橋:私も地域の自治体がやっている両親学級に参加して、オムツの替え方や沐浴の仕方を教わっていましたので「ある程度できるかも」と思っていたのですが、実際にはなかなか上手くいかなくて戸惑うことも多かったです。最初の1ヶ月ほどは慣れず、ようやく沐浴に慣れたなという頃には、もう沐浴を卒業する時期になっていました。
片岡:それでも、子育て自体はすごく楽しかったですし、育業中、ずっと子どもに寄り添えたのは、いい思い出になりました。まだ小さい子が笑ったりする——それは仕事とはまた別の嬉しさで、苦労が報われるようで、本当に良かったと思います。
髙橋:最初は、寝て、起きて、また寝て、の繰り返しだったのが、だんだん声を出すようになり、目が合うようになって「こんなに急激に成長するんだ」と、すごく感動しました。そんな些細な変化が嬉しくて、日々の育児を通じて、自分自身も少しずつ親にさせてもらっているんだな、と実感しました。
―育業を通じて、周囲からもらった嬉しい言葉や、感謝していることはありますか。
片岡:一番感謝しているのは、育業しやすい制度・仕組みを整えてくれた会社と、業務を引き継いでくれた同僚です。「おめでとう」「心配せず育業してきて」と、いろいろな言葉をかけてもらいました。プライベートでも、子どもを連れて外に出ると、地域の方から「パパも子育てしてるんだね」と声をかけてもらえました。マンションですれ違った方に「かわいいね」と言ってもらえたりするのも、すごく嬉しかったです。
髙橋:私も同じで、一番感謝したいのは、育業しやすい環境を整えてくれた会社と、実際に業務を引き継いでくれた同僚です。「育業したい」と話したときも、「全然大丈夫だよ」と気軽に言ってもらえて、それが本当にありがたかったです。
育業をきっかけに時間を意識した働き方に
―育業をきっかけに、働き方や仕事への考え方が変わったことはありますか。
片岡:時間を意識した働き方をするようになりました。私は始業7時・終業15時にさせてもらっていますし、休暇も時間単位で取得できるので、よく活用させてもらっています。
髙橋:生活が子どものスケジュール優先になりました。日々タスクの優先順位を決めて必要なものは先に終わらせ、いざというとき自分が動けるようにしておく。復帰直後は、子どもが朝何時に起きるかまちまちだったので、早く起きた日は自分も早く仕事を始め、早く仕事を終えて面倒を見る、というように柔軟な勤務制度を活用していました。
片岡:それに、自分が子どもを育ててみて、他の子育て中の社員の立場もよく分かるようになりました。以前は「そんなに風邪をひくものかな」と思っていたのですが、それが身に染みて分かりました。だから今は、他の方が「子どもが熱を出して」と休むときも、「大変だよね」と快く引き受けられるようになりました。相手に、より共感できるようになったと思います。
「お互い様」の風土でフォローし合えるチームへ
―貴社にとって、育業の推進に必要な要素は何だと思いますか。
江原:育業して終わり、ではないと思っています。復帰した後も子育ては続きますから、それをサポートできる雰囲気を続けていかなければ、と感じています。感覚的な部分まで、さらに浸透していくといいなと思います。
―これから育業を推進していこうという企業へ、そのメリットをどう伝えたいですか。
利根川:チーム全体で、育業する人がいてもフォローし合える——経営層のトップダウンのもと、そういう環境と雰囲気をつくれたことが、大きなメリットだと思います。これをきっかけに、育業だけでなく、介護でも、病気でも、どんな事情であっても、一人ひとりの状況に応じて活躍できる会社にしていければと思っています。
鈴木:「育児は女性が担うもの」という空気がなくなり、性別を問わず会社全体でフォローする事が当たり前になることで、育業だけでなく、様々な面での多様性の受け入れにつながると思います。
江原:「お互い様」の精神、ですね。育業復帰後も育児は続いていきます。「急に在宅にさせてください」ということも言いやすくなりました。お互いにフォローし合うことが、当たり前にできるようになってきたのだと思います。
記事の内容は掲載時点の情報に基づいております。