掲載日:2026年9月30日
“すべての人が心ゆたかに暮らせるように” 支え合いの風土が育む育業
東証プライム上場・学研グループの一員として、訪問看護ステーションを全国に展開する株式会社学研ココファン・ナーシング。看護師による訪問看護に加え、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問リハビリを提供し、地域にお住まいの方から在宅で療養する方まで、24時間365日、住み慣れた場所での暮らしを支えています。ライフステージが変わっても社員が安心して働き続けられる職場づくりの一環として、育業の推進に力を入れています。
今回は、同社取締役 品質管理部長D&I担当役員 小林宏彰(こばやし ひろあき)さん、執行役員 訪問看護事業部長D&I担当 藤井直子(ふじい なおこ)さん、実際に育業を経験された学研ココファン・ナーシング藤沢(訪問看護)理学療法士主任 髙嶋圭(たかしま けい)さんに、育業の取組や育業推進のメリットなどについてお話を伺いました。
「分かりやすい情報提供」で育業を推進
Q. まず、貴社における育業の状況について教えてください。
執行役員 訪問看護事業部長D&I担当 藤井直子さん(以下、藤井):男性・女性ともに育業取得率は100%、平均育業日数は、男性が88日、女性が366日(2026年6月末時点)です。女性の方が長い傾向はありますが、男性も平均で約3ヶ月育業しており、会社としても、生後間もない大切な時期からしっかり子育てに関わっていってほしいと考えております。
Q. 育業を推進する中での工夫を具体的に教えてください。
藤井:制度を用意しているだけで終わらせないよう、「分かりやすい情報提供」を重視して進めています。例えば、当社の育業支援をまとめた「福利厚生ハンドブック」を作成しており、しっかりと目で見て全社員が理解できるように整備しています。各ステーションに保管してありますので、いつでも手に取って見ることができます。また、育業当事者のご自宅宛てにも送付するようにしています。結婚から妊娠・出産・子育て、保育園の入所のことなども含めて、幅広くまとめており、これを初めて受け取ったら、「こういうものがあるんだ」と安心していただけるのではないかと思います。
Q. 他にも、育業経験者から好評の制度やツールがあれば教えてください。
藤井:相談窓口として「ファミリーサポートデスク」を活用していただくようにしています。育業に関して個人の状況に応じた質問をすることができる専門窓口があり、人事部署が運営しています。直属の上司など近しい関係ではなく、良い意味で第三者的な立場であり、「どのようなことでも相談しやすい」「対応が丁寧かつ迅速でありがたい」という声が寄せられています。このように、制度面の充実と情報提供の分かりやすさの両輪で、社員が安心して育業を選択できる環境づくりを進めています。
育業経験者に聞く―現場が回らなくなる不安への上司からのサポート
Q. ここからは、実際に育業された髙嶋さんに伺います。まず、育業をしようと決めた一番の理由を教えてください。
学研ココファン・ナーシング藤沢(訪問看護)理学療法士主任 髙嶋圭さん(以下、髙嶋):我が家が夫婦共働きで、両親の手を借りられない状況だったことが一番の理由です。「どちらかが無理をして回す」のではなく、夫婦ともに育業に専念し、夫婦で育児の土台をつくる時間が必要だと感じました。育業は休みではなく、家族としての生活を整え、子供との関わり方を学び、夫婦で同じスタートラインに立つための期間だと捉えて育業することを決めました。
Q. 育業するにあたって、不安に思ったことはありましたか。
髙嶋:「自分が育業することで、現場が回らなくなるのではないか」という不安がありました。周囲の同僚に負担がかかってしまうのではないか―そう考えると、簡単には決断できませんでした。それでも最終的には、上司に相談し、背中を押してもらう形で育業することができました。自分の中では「迷惑をかけてしまうかもしれない」という気持ちが残っていましたが、状況を正直に伝えたうえで、現場としてどう支え合うかを一緒に考えてもらえたことが大きかったです。
藤井:育業する人がいるステーションは、他ステーションからの応援で一時的に対応します。各ステーションが離れて所在しているため、応援に入る人の通勤時間がプラス1時間、2時間近くになることもあります。そのため、並行して採用も進めていきます。
髙嶋:私自身も以前、埼玉まで育業する人の応援に行ったことがありました。そして私の第一子のときには、今度はその方が応援に来てくれました。第二子のときは、第一子のときのような応援による対応が難しい状況にあり、「どうしましょう」という話になりました。ですが、上司に相談するとすぐに求人の話を出してくれて、採用の面でも迅速に進めてくれたので、安心でした。
気持ちの切り替えで育業を楽しめた
Q. 実際に育業をしてみて、イメージと違ったことや大変だったこと、感じたことなどがあれば教えてください。
髙嶋:正直に言うと、育業は想像以上に大変でしたね。特にきつかったのは夜間の対応で、子供が3時間ごとに起きて授乳が必要になり、妻もかなり疲弊していました。どうしても寝不足が続くので、「この状態で仕事もしていたら、体力的にも精神的にも相当きつかっただろうな」と実感しました。

髙嶋:大変なことがある一方で、途中からは気持ちの切り替えも意識するようになりました。仕事のことを考え続けるよりも、「せっかくの期間だから、育業そのものを楽しもう」と捉え方を変えることで、気持ちが少し楽になった感覚があります。その結果、育児に集中して楽しめましたし、仕事に戻るのも楽しみで、全体的に良い育業になりました。
Q. 育業を通じて、周囲への感謝や、かけてもらった嬉しい言葉などはありますか。
髙嶋:「育業したいです」と言ったら、上司や同僚の皆さんが、「育業しなよ、あとは私たちに任せて」と最初から背中を押してくれて、そのような言葉には本当に救われました。また、職場だけではなく親戚からも、「お父さんも育業できる時代になって良かったね」と心から喜んでもらい、社会の変化を周囲があたたかく受け止めてくれていることが嬉しかったです。育業を通じて、改めて「自分ひとりで成り立っているものは何もない」と実感しましたし、支えてくれた人たちへの感謝の気持ちは、以前よりもずっと大きくなりました。
Q. 育業をきっかけに、仕事に対する考え方が変わったことはありましたか。
髙嶋:実際に育業することで周囲に支えてもらっていたことを強く実感したので、復帰後は、「支えてくれた人たちに恩返しをしたい」と思うようになりました。会社の中で部署や職種を越えた“横のつながり”で支援できる体制や文化も必要だと感じるようになり、チームとして支え合うことの大切さを意識するようになりました。誰もが安心して休めて、復帰後も自然に戻ってこられる。その循環をつくるために、自分も今度は支える側として、周囲に手を差し伸べられる働き方をしていきたいです。

育業は“組織の成長のきっかけ”
Q. 育業推進によって社内でどのような変化があったか教えてください。
藤井:育業することに対して、本当に心から背中を押してくれる、そういう風土が形成されてきているのかな、と思います。また、最初は「まずは1ヶ月育業してみよう」「3ヶ月育業してみよう」だったと思うのですが、その後、第二子になると、今度は6ヶ月になったりと、育業する期間を延ばすことができたのも、会社としてはすごくいいことだと感じています。職場の理解と支援が伴うことで、(育業)当事者の希望に沿った育業につながったと考えています。
取締役 品質管理部長D&I担当役員 小林宏彰さん(以下、小林):また、企業理念が「すべての人が心ゆたかに」というもので、そこにはスタッフも含まれている、ということが社内で理解され、定着している、というところもあると思います。育業から復帰する社員は、周囲への感謝の気持ちをより強く持って戻ってくることが多く、受け入れる側も温かく迎え入れることで、結果としてチームワークの形成・強化につながっています。育業に専念した時間を経て、仕事へのモチベーションが高まり、業務への貢献意欲や会社への帰属意識が以前より強くなる、といった効果も実感しています。
Q. 最後に、まだ育業を推進していない企業に対して、育業推進の最大のメリットは何だとお伝えしたいですか。
藤井:「育業は“負担”ではなく、組織を強くし、将来の規模拡大につなげる“成長のきっかけ”にできること」だと思います。育業を前提に体制を整えることは、業務の回し方や応援体制、採用計画、利用者獲得の考え方を見直す契機になります。当社でも、期間によっては、応援だけでなく採用を進めた結果、利用者獲得にもつながり、最終的に会社の規模拡大という前向きな成果に結びついた面がありました。「育業する人がいるから大変」ではなく、「育業しても回る会社にする」ための取組が、組織の成長につながります。
小林:長期的には人材定着や組織力の強化という形で企業経営にプラスに働くと感じています。人員体制がネックになりやすい業界だからこそ、育業推進は「守り」ではなく「攻め」にもなる取組です。制度を整え、安心して育業できる環境をつくることが、結果として人が集まり、育ち、続き、サービスの質と量の両面を高められる―その点が、育業推進の最も大きなメリットだとお伝えしたいです。
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